第125話サバイバル島、その1
土曜日。
ついにイベント当日だ。
時刻は午前8;45。
あとイベント開始まで15分。
僕らは素早く朝食を済ませ、ダイブイン。
フェラールの広場に来ていた。
そこにはすでに数え切れないほどのプレイヤーがいた。
急遽変更があり、イベント期間中に限りフェラールの街どこにいてもイベント会場の浮遊島に転移できる仕様になった。
僕らは急いで広場を離れ、前に使ったカフェの個室に来ていた。
「ふぅ・・・。人数多すぎ・・・。」
「ほんとだよー。あれが全員浮遊島に行ったら、島落ちちゃうんじゃないの?」
「アイリス。不吉な事言わないでよ。」
「ん。15万人は超えているはず。」
「すごい規模ね・・・。島の全体に行ってみたかったけど思ったより広そうね・・・。」
「そうだね。もしかしたら半分もいけないかも・・・。」
そう思ってもしかたのない事だ。
何せ十数万人が一斉に同じ場所に集まるのだ。
トラブルなんかも起きそうだ・・・。
「そう言えばアイーダは?」
「アイーダは生産組と一緒にいるって。」
「さすがに私たちと一緒じゃついてこれないわよ。」
「ん。私たちはトッププレイヤー。」
「そうね。非戦闘職についてこいっていう方が酷よ。」
そんな世間話をしていると目の前に「5分前」と時間をカウントする文字と、「イベントに参加しますか?YES/NO」という文字が浮かんだ。
僕らは目配せをし、「YES」を押した。
「いよいよか。なんか緊張してきたな。」
「あはは!!アイリスはわくわくしてきたよ。」
「皆の期待に沿うイベントならいいのだけど・・・。」
「ん。おじいちゃんを信じて。」
「そうね。きっと楽しい時間になるわよ。」
その時時間は「0」になり字が浮かぶ。
「イベント参加を確認しました。これよりイベント会場、『サバイバル浮遊島』に転移します。」
その文字と共に僕らの周りの風景が大きく歪んだ・・・。
「・・・すごい・・・。」
「ほんと・・・。」
「あそこにはどうやって行くのかな・・・?」
「・・・ん。ジャンプ?」
「・・・それだと確実に落ちて死に戻りね・・・。
僕らは森の端にいた。
・・・いや、浮遊島の端にいた。
僕たちの目の前には森があり、振り返ると雲海が広がっていた。
そして見上げると僕らのいる島の他に4つの島が見えた。
ここよりも高いところにある4つの島の表面までは見えなかったが恐らくイベント会場なのだろう。
その時また僕らの目の前に文字が浮かぶ・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
皆さんこんにちは。
イベント会場の『サバイバル浮遊島』にようこそいらっしゃいました。
ここでは皆さんに「サバイバルコイン」を集めていただきたいと思います。
プレイヤーの皆様の胸元にはそれぞれ一つづつ「サバイバルコイン」がついている事かと思います。
他のコインの探し方は以下の通りです。
・モンスターを討伐する。(通常モンスターの場合は一定確率でのドロップ。特殊モンスターの場合はそのモンスターのLVに見合った数のコインがドロップされます。)
・他のプレイヤーから奪う。(PK、PVP、方法は皆さまにお任せします。)
・素材の採取。(素材を採取する際、一定確率でドロップ。)
・ダンジョンの攻略。(ステージ内にいくつかのダンジョンが存在します。そのダンジョンの中に沢山のコインが隠してあります。)
以上の4点になります。
尚、同じクラン同士でのコインの譲渡は不可能となっています。
最終的に持っているコインの数によって報酬が異なってきます。
『サバイバル島』は5つの島があります。
「森林の島」「砂漠の島」「真冬の島」「古代文明の島」「ホラーの島」。
島の移動には一人一枚のコインを使用して転移することが出来ます。
LV30以下、またはメインジョブが生産職のプレイヤーのアイテムボックスには「初心者マーク」というアイテムが入っている事かと思います。
この「初心者マーク」をつけている方、もしくは13歳以下のプレイヤーはPK対象外となります。
またPKを行うこともできません。(初心者マークは一時間以内に装着しない場合は消滅します。)
最後に、自身の初めに身に着けているコインはアイテムボックスには入らず、また最後の報酬時に「コイン5枚分」として換算されます。
他人のプレイヤーから奪った場合は3枚分です。
それ以外は1枚のカウントとなります。
説明は以上です。
それでは皆様イベントをお楽しみください。
残り時間、35時間55分。
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「・・・他のプレイヤーから奪ったら3コイン分・・・。」
「・・・そして自分のコインは5コイン分。」
「完全にPKを誘発しているね。」
「ん。だからサバイバル島。」
「でもそれ以外にも楽しみ方は沢山あるみたいね。」
十数万人によるサバイバルバトル・・・。
・・・僕、生きて帰れるかな・・・?
超怖い・・・。
「・・・ふふっ。楽しくなってきたわね。」
「アイリスどんどん狩っちゃうよー!」
「ん。誰も死なせない。」
「ふふっ。早速探索しましょう?」
・・・僕の家族はやる気満々のようだ・・・。
この子たちなんでそんなに血の気が多いの?
どんな教育を受けてきたの・・・?
「じゃあ早速・・・・ッッ。三時の方角8人!」
クリスの気配察知に誰かが引っかかったみたいだ。
クリスは素早く鷹の目を使って
「・・・どうする?」
「「「「もちろん狩る(わ)。」」」」
「・・・なんでみんなそんなに好戦的なの・・・?」
何この子たち怖いよ・・・。
目がギラギラしてる・・・。
「このイベントに参加している以上狩られて当然。」
「そうだよ。覚悟のない奴は帰ればいい!」
「ん。私たちのそばに来たことが運の尽き。」
「ふふっ。全てのプレイヤーをひれ伏せてやりましょう?」
もう誰も彼女たちを止める人はいないようだ・・・。
哀れなり他のプレイヤー・・・。
「・・・向こうもこっちに気づいたわ。」
「んじゃさっそく生贄になってもらおー!!」
「ん。骨の髄までしゃぶってあげる。」
「私たちの力を見せてやりましょう。」
「ソダネー。ガンバロー・・・。」
その時クリスの顔の横に矢が通る。
「ヒャホーー!!最初のコインを見つけたぜ!!」
「おとなしくコインを渡せー!!」
「おとなしく渡してくれたら・・・そのあと殺してやるよ!!」
「おい!!見ろ!!全員美人だぜ!!」
「ヒャホーー!!骨の髄までしゃぶってやろうぜー!!」
「脱がせて素っ裸にしてやるーー!!」
「付き合ってくれーー!!」
「結婚してくれーー!!」
目的変わってるがな。
悪魔結みたいなやつらだな・・・。
・・・というか・・・。
「僕は男だーー!!」
「「「「怒る所そこっ!?」」」」
皆のツッコみを聞く前に僕は駆け出す。
鑑定結果向こうの平均LVは45.
…雑魚だな・・・。
僕が切りかかる前に僕の横を三本の矢が飛んでいく。
が、先頭の騎士の盾にうまく防がれる。
しかし相手は盾の陰に隠れている為こちらが見えていない。
僕はその瞬間「雷神衣威」と魔力脚を使い、思いっきり盾ごと相手を蹴り飛ばす。
「・・・ッッガッ!?」
相手はこちらに気づいていなかった為踏ん張りがきかず、そのまま後ろに5mほど吹き飛ぶ。
「っこいつ速いぞ!!」
「速すぎだろ!?目でやっと追えただけだぞ!!」
「だが一人で来たぞ!袋叩きにするぞ!!」
僕は8人に囲まれる形になる。
「アイスウォール。」
エリザベス達と僕達の間に氷の壁ができる。
・・・これ僕一人でやれってことですか、女王様?
「こいつら馬鹿だ!!こいつ一人孤立させやがった!!」
「仲間割れか!?」
「だがちょうどいい!やっちま・・・ぐふぇ!?」
相手が飛び掛かろうとした瞬間一人の男が沈む。
「!?どうし・・・ぐふぇ!?」
「上だ!!上から氷の雨が降ってくるぞ!」
「退避だ!!」
・・・これ僕も危ない奴なのでは・・・?
・・・ッッて、あぶな!!無差別かよ!?
僕も相手と共にあたふたしていると、氷の陰から矢が飛んできて一人の男の額に刺さる。
「矢だ!!矢に気をつけ・・ガハッ!?」
「アイリスも忘れないでねー!!」
アイリスは矢が飛んできた方と逆の壁の陰の方から現れ一人を真っ二つに斬る。
つまり氷の壁を作りその上からエリザベスのアイスシャワー、横からクリスの矢に、逆からアイリスが突っ込んでくるというのを時間差で行ったわけだ。
僕という犠牲を払って・・・。
たまにこの子たちの愛は嘘なんじゃないかと疑ってしまうよ・・・。
だが、一瞬で3人を倒したわけだ。
これで5人対5人。
同数なら僕らは負けない。
「・・・くそっ!!逃げるぞ!!こいつらには勝てない!!」
「逃がすか!!」
逃げようとする神官服の背後に一気に駆け寄り切りつける。
ここで雷神衣威は解く。
自分にも多少のダメージが入ってしまうからだ。
僕が神官職を倒して振り向くとさらに2人が倒れていた。
これであと2人・・・ッッ!?
「・・・ちっ。外した。皆行くぞ!!」
僕の空間把握に何かが入り反射的にしゃがむ。
すると僕のそばの木に矢が刺さっていた。
僕は声のする方を見ると7人の男がこちらに走っていた。
僕らはさらに、もう1パーティと遭遇したようだ。
・・・いきなり忙しすぎだろ!?
「アイスウォール。」
その時、僕の後ろに氷の壁ができる。
・・・え?僕また囮ですか・・・?
「馬鹿め!!誤射しやがった!!」
「あいつ孤立しやがった!!」
「やっちまえ!!ヒャッハーー!!」
違うんです・・・。
来るんです・・・。
氷の雨が・・・。
僕を犠牲に・・・。
「・・・ほら来たーー!!」
「なんだ!?いきなり・・ぐふぇ!?」
「リーダー!?一体どこから・・・ガハッ!?」
再び乱戦になり先ほどと同じ戦法で僕らは相手を駆逐した。
開始12分の間にあった出来事だった。
僕はその時間だけで、すでに泣きそうだった・・・。
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