第124話イベントまで・・・。その5

金曜日。


「あ~~!早く明日にならねぇかな!?」

「さっきからうるさいな。もう正午すぎたし、もうすぐだろ。」


イベント前日。

学校の昼休み。

とにかくタクがうるさかった。

とにかくタクがうるさかった。

とにかくタクがうるさかった。


今日は一日中携帯でAOLのHPを見ては同じことを繰り返す。

おかげで授業中、何回先生に注意されていたことか・・・。

恐らく授業中、日本で一番うるさかった生徒かもしれない。

廊下に立たされる生徒なんて、昔のTVドラマでしか見たことなかった。

が、タクは廊下に立たされていた。

しかも四限連続。


タクはとにかくうるさかった・・・。


「タクも僕みたいに何も考えてなければ焦る事ないのにねぇ~!」

「それは逆にすごいことなんだぞ?人間常に何か考えてしまうものだからな。」

「何も考えないのは加奈だけよ。普通出来ないわよ。」

「そんなことないよ~。本能のままに生きればいいんだよ!」

「それができるのは逆に贅沢なのかもしれないな・・・。」


加奈の言葉に、タクとユリがつっこむ。


何も考えず本能のまま。

それはある意味贅沢なことだ。

特に悩むこともない。

やりたいことをやる。

人間は考えすぎているのかもしれない・・・。

今の世の中情報過多だからな・・・。


「そうよ・・・。私みたいにBLだけを愛せば救われるわよ?BLビーアンビシャスよ?」

「BLに大志を抱かしても碌な事なさそうだから却下だ。」

「さぁ一緒に!!BLビーアンビシャス!!」

「言わねーよ?なんで話聞いてないんだ?」


ナギは少しはまともなことが言えないのだろうか・・・。


「「カンパニー」は今日何するんだ?」

「何もしないよ?今日はお休みだ。食料は現地調達するつもりだし、生産組が調理器具を持ってきてくれる予定だしね。」

「いいなぁ。少し分けてくれよ。」

「いいけど会えればな?それに生産組には素材を提供してその交換条件に使わせてもらうんだからな?」


フランジェシカ達にBBQセットを渡してあり、イベントの浮遊島に転送してすぐに調理してもらうことになっている。

HPによるとパーティメンバーだけでなく、手をつないで転移した相手とは同じ場所に転移されるらしい。

その他の新しい情報はない。

完全に情報は秘匿されており、自分達で探すしかないようだ。


「しっかしコインを集めるって言ったって、どんな所にあるかくらいヒントくれたっていいのにな。」

「確かにな。だけどサバイバルっていうんだから魔物とか狩ったら落とすんじゃないか?」

「確かにね。でもそれじゃ生産組には不利なんじゃない?」

「そこは・・・。草を引っこ抜いたら根っこについてるとか?」

「あはは!!それいいね!!僕試してみたい!」

「加奈は鑑定能力全く育ってないんだからやめときなさい。」

「何で育ってないんだ?」

「加奈は魔物を鑑定する前に突撃していくからだよ。だから二つ名も「進撃」。何も考えず魔物を見た瞬間突っ込むからな。」


実に加奈らしい・・・。

それでよく生き残れるものだ・・・。


「でもタクとユリの息の合った連携でいつも助けてくれるから僕は生き残ってるんだー!ほんとに以心伝心してんじゃないかと思ってしまうわけだよ僕は。」

「な!心が通じ合っているって・・・。それだったらこんなに苦労しない・・・ごにょごにょ・・・。」

「なにごにょごにょしゃべってるんだよ・・・。聞こえないぞ?」

「うっさい!!あんたのせいでしょ!?」

「理不尽だな!?だけどまぁ息があってるのは認めるよ。ユリとはもう付き合い長いしな。人生で考えたら家族より一緒にいる時間長いんじゃないか?」

「ば・・・ばか!何恥ずかしいこと言ってんのよ・・・。・・・確かにそうかもしれないけど・・・。」


付き合えお前ら・・・。

もういいだろ・・・。

お前らの夫婦漫才はおなかいっぱいなんだよ・・・。


「「ダブルナイツ」は今日何するんだ?」

「俺たちも特に何もしないな。装備が今日やっとメンテナンス終わるからそれを受け取って終わりだ。」

「おいおい。ギリギリに出すなよ。ただでさえ今生産組は忙しいんだから。」

「確かにな。生産系のイベントなんかがあったら生産組も増えるんだろうが・・・。」

「そのうち来るんじゃないか?おじさんも今年の夏はイベント盛りだくさんって言ってたし。」

「マジか!!うぉおお燃えてきたぁあああ!!」

「タクうっさい!」

「あいたっ!?ユリ殴ることないだろ!?」

「あんたがうっさいのが悪いのよ!」


学校生活はいつも通り平和だった・・・。


「「「ただいまー。」」」

「おかえりお兄ちゃん!!・・・と千沙と香織さん。」

「ん。私はおまけ?」

「私もよ。」

「そうだよ!お兄ちゃんがメインなんだから!」

「ん。もうすぐ私の妹になるのに生意気。」

「まだなってないもーん!一番妻にはユイがなるんだから!!」

「ん。お黙りなさい。私がなるって決まってる。」

「ふふっ。二番は私だからね。」


勝手に僕の人生を決めないでくれ・・・。

そんなこんなでとりあえず着替える。


「じゃあ僕はさっそく料理始めるから。」

「わかった!よろしくね!」

「ん。他の家事は私たちに任せて。」

「さて、さっそくやりましょうか。」


事前に決めていたように僕は土日の分まで料理を作り、皆が洗濯などを終わらせる。

そうすることによってイベント中に家の事をしないで、ゲームに集中することが出来るためだ。


週末はカレーとシチューにする。

似たような料理だが仕方がない。

両方時間が経てば経つほどおいしくなってく料理だからだ。


シナモン、グローブ、カルダモン、ビッグカルダモン、ベイリーフ、ブラックペッパーを油の温度が上がる前に入れる。その後玉ねぎがきつね色になるまで炒め、しょうが、にんにくと共に炒める。

後はトマト、唐辛子、適当に野菜を加える。

後は水にターメリック、ガラムマサラ、カイエンペッパー、肉を加えて煮込み塩コショウで味を調えれば完成だ。

明日の昼ご飯はこれでOK。

明後日はこれにココナッツミルクを加えればタイ風カレーになる。

一度で二度おいしいカレーの完成だ。


「お兄ちゃんの部屋はユイが掃除するの!!褒められたいの!!」

「ん。負けない。褒められるのは私。」

「二人ともどうでもいいけど早くしないと夜になってしまうわよ。」


・・・二人の事は香織さんに任せよう・・・。


シチューは小麦粉にバターを加え熱しながらかき混ぜる。

その後、別鍋で温めておいた牛乳を少しづつ加え、一度大きな玉にし、その後少しづつのばしていく。

これでベシャメルソース(ホワイトソース)の完成だ。

ある程度までのびたらあとは一気に牛乳を加えてもよい。

後はカレーで使った野菜や、冷蔵庫の余った野菜、肉を加えていって、塩コショウで完成だ。

これを明日の夕食にし、明後日は残り少ないシチューに生クリームと卵黄をと茹でたパスタを加え、クリームパスタにする。

こちらも二度おいしい料理の完成だ。


後は適当にサラダとコンソメスープを作っておけば豪華な食事になるだろう。


朝ごはんは簡単なバニラエッセンスの効いたフレンチトースト二でもしよう。

一時間半もあれば大体の料理が完成した。


「ただいまー。」

「あ、姉さんおかえり。ごめんね。買い出しお願いしちゃって。」

「いいわよ。その代わりお礼におかえりのキスして?」

「あ、お寿司にしたんだ?いいね。ちょうど食べたかったんだ。」

「ぶ~。最近やーちゃんのシカトスキルが上がってきた気がするわ。」


土日分のご飯を作ったためコンロは鍋でいっぱいだ。

今日は姉さんに出来合いの夕食の買い出しを頼んでいた。


「あーお寿司だ!!ちょうど食べたかったんだ!!」

「ユイ。つまみ食いはダメよ?ちゃんとお掃除してた?」

「ばっちりだぜ!!みて!おうちピカピカでしょ?」

「うん。よくわからないけど頑張ったならいいわ。」

「ぶ~。お兄ちゃん!!お部屋ユイがお掃除しといたよ!!」

「ん。嘘つかない。ユイは弥生のPCでエッチなフォルダ探してた。」

「あ、言わないって約束だったでしょ!?それに千沙も見てたじゃん!!」

「むふ。泣く子も黙る動画がいっぱいあった。」

「嘘をつけ!!僕はノーマルな性癖のはずだ!!というか探すんな!」


・・・僕はノーマルだ。

・・・のはずだ・・・。


「因みに今弥生のデスクトップ画面私のセクシーな写真にしておいたわよ。」

「香織さん何してんだ・・・。それは男同士でやるドッキリだろ。しかも何故香織さん自身の写真なんだ・・・。」

「あら。私の体で気持ちよくなってほしいからよ?」

「ユイ!今すぐ私たちの裸の写真を撮ってデスクトップに張るわよ!!」

「合点招致だぜ!おねえちゃん!!」

「あ、待ちなさい!せっかく結構いい写真撮れたのに!」

「ん。私のヌードの方がいいに決まってる。私も撮る。おねえちゃん撮って?」

「もちろん!何枚でも撮るわ!!私のデスクトップ画面にも張っていい?」

「ん。しょうがない。許可する。」


何やってんだこいつら・・・。

というか何故PCのパスワード変更しても変更してもばれるんだ?

今からまた変更しに行くか・・・。


僕は自分の部屋に行き、変な格好をしている4人を無視しパソコンの電源を入れる・・・。


僕の画面のデスクトップ画面には・・・猫の寝顔の写真が貼ってあった・・・。


「あれー?お兄ちゃん。ちょっとがっかりしてる?」

「ほんとは私たちのエッチな写真期待してた?」

「ん。見たいならいくらでも見るがいい。」

「ふふっ。そんながっかりなら、夜にじっく見せてあげる。」


・・・うるさいなぁ。

・・・正直すごいがっかりしたよ・・・。

はい。期待しましたよ・・・。

してましたよ・・・・。


くそ・・・。

僕は弄ばれただけだったのか・・・。


4人のニヤニヤした顔に腹を立てながら、何も言えない僕がそこにはいた・・・。

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