第95話実践訓練その4

「しかし静かな場所だな・・・。」

「ほんと。ここだけ違う場所みたい。」

「でもつっくり出来て良かったよー。」

「ん。猿たち多すぎ。」

「ほんと。しばらく動物園にはいきたくないわ。」


僕らは天龍山脈麓の森にあるきれいな泉に来ていた。

泉の調査の為だ。


泉の周りは静かでとても安らげる場所だった。

リアルだったらマイナスイオンがどうとかで、騒がれそうな場所だ。


「‥‥でもなんか変じゃないか?セーフティーゾーンでもないのに小鳥一匹いないぞ?」

「確かにね。でもそもそもこの森に小鳥なんかいるのかしら。」

「いないね。いたら結構強いモンスターだけだよ。」

「ん。間違いない。」

「しかしアランさんには感謝ね。「空間把握」がなかったら私たち森の入り口でゲームオーバーよ?」


確かに。

「空間把握」は扱いが難しいがうまく使えば戦闘力は大幅に上がる。

そして「念話」スキルも結構使えた。

見えないところにいても声を出さずに連携できるのは大きい。

実際何度も不意打ちに使えた。

相手に声を聴かれる心配がないので不意打ちにはもってこいだった。


「そういえば知ってる?AOLの販売が1週間ごとになったの。」

「えっ、何それ?知らない。」

「お兄ちゃん遅れてるー!!」

「ほんと。公式HPもみなさい。」

「ん。しかも販売が一度に5万台になった。」

「え!?それだとフェラールのギルドが込み合うんじゃない?」

「なんか王都からギルド員が多く出張で行くみたい。」

「ん。プレイヤーのマナーがいいから増やしても大丈夫というマザーAIの判断。」


マザーAIの権限すごいな。

しかし思い切ったな・・・。


そういうことになると今週末には6万5千人がAOLにいることになる。

クランも一気に増えるだろうなぁ・・・。


次のイベントまで約2週間。

その時には10万人を軽く超すことになる。


一大イベントになりそうだ。


クラン勧誘が激しくなりそうだ。

僕らには関係のないことだけれど・・・・。


「お兄ちゃんはクラン勧誘したい?」

僕の心を読んだのかアイリスが聞いてくる。


「んー。僕はいいかな。このままで。このパーティも、今のクランの形も結構気に入ってるし。まぁ気の合う人がいたらできれば入ってほしいけど。できれば男で。」


「えっ?ウィルってば、実はそっち・・・?」


「違うから。そういうのはフランジェシカだけにしてくれ。」


「冗談よ。でも男かぁ。なんだか不安だわ。」

「ん。お姉ちゃん目当てが多そう。」

「そうかしら、私ならエリーゼ狙いで入るけど、むぎゅ。」

「ん、邪魔。」

「ふふっ。いいじゃない。うりうり。」

「でもそうなるとそろそろイベントで、クラン対抗戦とか決闘とかありそうだね。」


確かに。


「そうね。あったらどうする?参加する?」

「もちろん!!参加しないで何が廃ゲーマーだ!!」


自分で言うなアイリス。

お兄ちゃんは心配になるだろ。


「ん。楽しみ。」

「ふふっ。「カンパニー」の名が一気に轟くわね。」


もう轟いている気がするが。

それにしてもみんなこんなに血の気が多かったんだな・・・。


「お兄ちゃんは参加したくないの?」


「僕も参加はしてみたいよ?でもPVPって何か苦手で。人を斬るって感覚が・・・。」


「むふ。ウィル優しい。」

「ふふっほんとね。私たち以外なんか切り伏せちちゃえばいいのに。」


それだと「ダブルナイツ」とか「鋼鉄の騎士団」「悪魔結社」も斬っていしまえって事?


・・・女王様ならやりかねないな・・・・・。


「ん?・・・・・あれなんだ?」


僕は泉の湧き出ているであろう奥の方に何か大きな丸い物体を見つける。


遠目で見てみる。


・のどが渇いたキングバブルスライム  LV80


「「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」」



「・・・帰る?」

「・・・確かに・・・。」

「・・・依頼は「調査」だもんね・・・。」

「・・・ん。さすがに勝てない気が・・・。」

「・・・逃げるも勇気って言うしね・・・。」


今僕らのLVは60手前。


さすがにムリゲーじゃないか・・・?


「というかスライムも見たことないのに、いきなりキングって・・・。」

「しかもスライムって強いんだよ?物理攻撃あんまり効かないし・・・。」

「魔力剣とかならいけるんじゃない?」

「ん。あれって水を飲んでいるのかな?」

「そうみたいね。のどが渇いたって書いてあるし。」


川の水量が下がるほど水を飲むってどういうことだよ・・・。

あのまま見守っていたら、風船みたいに破裂とかして死んでくれないかな・・・?


「あのモンスターがいるからこの辺りはモンスターがいないのかな?」

「縄張りって事?」

「ありえそう。」

「ん。ってことは相当強い?」

「猿たちさえ近寄らないって事はそうなるわね・・・。」


やっぱりムリゲーですやん。

僕ら猿でも結構苦戦してまっせ?

あんなのどないせぇっちゅうねん。



「でもでも平気だよ!!ほら!エリアに入んなきゃ「「「「ばか!!そっちは!」」」」・・・へ?」


アイリスがここは平気だと両手を広げながら泉の方に駆け寄りアピールする。


すると突然辺りが歪む・・・。

なんか泉のところは「空間把握」で変な感じしてたんだよなぁ。

気づいてなかったのはアイリスだけか・・・。



ーーーーーーー

天龍山脈麓の森、ボスエリアに入りました。


エリアボス「のどが渇いたキングバブルスライム」との戦闘を始めます


尚ボスを倒すか、死亡するまでこのフィールドからは出られません

ーーーーーーーーー


はい。

出ました。

恒例のアナウンス。


今回は見たくなかったなぁ・・・。


「あんたはどうして何かやらかすのよ!!」

「ん。いつもアイリス。」

「全く・・・。」


「ご、ごめんなさ~~い!!」


「はぁ、とにかくみんな戦闘準備しよ?」


こうして僕らの無謀な戦いが始まった・・・・。

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