第94話実践訓練その5

「「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」」」


「何もしてこないね・・・。」

「そうだな・・・・・・。」


それはもう、大きなスライムさんは水に当たりプルプルしたまま動きません。

顔がどこにあるのかわからないため、感情を読み取ることもできません。

戦わないなら、お家に帰ってもいいですか?

お水飲むのは止めませんから・・・。


「ねぇウィル。考えてること念話で皆に聞こえてるわよ・・・?」

「ん。今帰ろうとしてる。」


まぁ、それは恥ずかしい。

食べるならアホなアイリスだけにしてください・・・。

馬鹿な妹ですけどきっとおいしいですから・・・・。

あ、僕はおいしくないですよ?

お肉なんかパサパサなチキンみったいでっせ?

さ、食欲なくなったでしょ?

お家に帰してください・・・。


「だからごめんなさいって!!」

「あなたわざとやってるでしょ・・・。」



そんな感じで現実逃避していると突然スライムの一部がはじけてこちらに飛んでくる。


「なんだ?飲みすぎか?」

「いや、別にあれは飲みすぎて大きいわけじゃないでしょ?」


スライムの破片は地面に着地し、小さいスライムが出来上がった。


・子分スライム  LV45


・・・・子分強すぎません・・・・?

しかも10匹もいますやん・・・。


「見て?親分スライムを!」


そんな名前だったか?


僕はキングスライムを見る。


・のどが渇いたキングバブルスライム  LV78


「LVが下がってる・・・?」

「分裂したからじゃないかしら?」

「ん。でも見て?」


・のどが渇いたキングバブルスライム  LV79


「また戻ってきてる・・・。」

「もしかして水を飲んだらもとにもどっていくのかしら・・・?」


・・・なんか僕、いやな予感がします・・・・。


「アイリス、クリス、それに私は子分スライムを!!ウィルは親分を!!エリーゼは皆のサポートを!!ウィル!!頼んだわよ!?」


はい出ました。

リーダーのぶん投げ作戦。

困った時のぶん投げですわ。

いっつも僕はずれくじですやん。


「ウィル!早くいかないとつぶすわよ?」

「はい!!すぐ行きます!!」


何を?とは聞かない。

それがルールだ。

エリザベスの命令に従うのは世の理だ。

自然の摂理なのだから・・・。


僕はエリーゼにブーストをかけてもらった後、俊足で駆け出す。

近くの木に登り、木の枝を飛び、次の枝へ・・・。

こうして泉の反対側。

浅い水の所に着地する。


親分との距離は20m。

さて、やりますか・・・・。


「ん・・・?なん・・・だと・・・?」


そこには親分の顔があった・・・。

半透明な球体には可愛らしい顔が描かれていた・・・・。

あれ、どうなってんだ?


(ウィル。どうかした?」

エリザベスからの念話。


(顔が、顔があった・・・。めっちゃかわいい。)

(・・・・まじめに戦いなさい。)


ごもっともです。


僕は再び剣を握りなおす。


突然スライムからたくさんの触手が伸びてくる。


「ッッマジかよ!?」


その一つを剣で受け流すがとても固かった。


いくつもの触手を右に左に走り回って躱す。

全てが伸び切ったところを狙って親分目掛けて走り出す。


「ッッッフッッ!!」

魔力剣で斬ってみる。


プルンッという奇妙な感触と共に親分を斬れたがすぐに再生する。


ダメージは多少は入っている。

やはり魔法は効くみたいだ。

だがこのままではMPが先に尽きてしまいいそうだ・・・。


触手が親分に戻ってくるのと同時に僕は距離をとる。

すると再び触手が飛んでくる。

それを左右によけ、剣でさばき、今度は風のエンチャントをし斬り味を上げ、触手を切りつける。


キィィィィィン!!


金属同士がぶつかる音がし、手がしびれる・・・・。


親分固すぎでっせ・・・。

これ一体どんな仕組み何ですか・・・?


今度は後ろから触手が横に振り回されてくる。

「ッックッ!?」

何とか「空間把握」で感知し、剣で受け止めるが吹き飛ばされてしまう。


バシャ、バシャと僕は水を切りながら飛ばされていく。

何とか止まり、自分を鑑定する。

残りHPは4割。

ガードしてこれかぁ・・・。

やっぱりムリゲーだな。

僕はすぐにヒールをかけマナポーションを使う。


杖がなくメインジョブが魔法職ではない僕の回復量は弱い。

何度もかけなければならないのでMP消費が激しい。


遠くで皆が走ってくるのが見える。

子分たちを倒したのだろう。


だがすぐに親分ははじけみんなのところに飛んでいく。


・・・・みんなの助けは期待できないな。


親分のLVは76にまで下がった。

水を飲まれる前に攻めた方がいいな・・・。


僕は再び来る触手をかいくぐり、雷をエンチャントし切りつける。


一瞬親分は感電し動きが止まる。


勝機!!


僕はそのまま何度も乱れ切りで斬りつける。


再び親分は動き出し僕は離れる。


これを2、3度繰り返し、何とかHPバーを一本削ることができた。

皆の努力もあって親分のLVは72.


このままなら行けるかもしれない・・・。


ポポポポポポッ!!


今度は親分が水鉄砲を撃ってくる。

体のあちこちから放たれるそれを、僕はまともに受けてしまい後ろの木に叩きつけられてしまう。


「ッッグハッッ!?」


リアルなら口から血が出ていただろう。

僕の上にはクリティカルの文字が出て、僕のHPは1割になってしまう。

近くに木に目をやると、木が水鉄砲で削られていた・・・。


…訂正しよう・・・。

やはりムリゲーでした。


(お兄ちゃん大丈夫!?)

(悪い。今話しかけないでくれ。油断した瞬間やられそうだ。)


僕は短く話念話を切る。

アイリスには悪いが今は集中させてほしい。


(ごめんね。スライムは中央にある「核」が弱点だから!頑張って!!)


アイリスは短くしゃべり念話を切った。


・・・・いい情報を貰った。

さっきは邪険に扱ってごめんなさい。


僕は剣をしまい回復したのちインペントリからトビウオの尖った骨を取り出し雷をエンチャントする。


そのまま親分に駆け寄り、水鉄砲をよけ、親分の中心に投げる。

親分のど真ん中に刺さっだそれは中心にあった大きな石みたいのにあたり、はじかれる。


が、ダメージは大きかったようだ。

触手が左右に振られ、まるで嫌がっているようだ。


僕はその隙に二、三度繰り返しダメージを与えていく。


親分は怒ったのか触手を振るいながら水鉄砲をを吐いてくる。


何とか転がりながら避けたがこれでは近づけない・・・。


エリザベス達を見たが、まだ苦戦しているようだ。


確かに子分スライムとはいえLVは高い。

それを10匹も相手をするのは結構きついかもしれない。


・・・結局どっちもどっちか・・・・。


親分は体内にある尖った骨を吐き捨て、何度も水鉄砲を吐いてくる。


ここは距離があるので余裕でよけられる。

相当親分はお怒りのようだ・・・。


ゴゴゴゴゴゴッ。


「・・・・・ん?」


僕の後ろから木が水鉄砲により削られて、倒れてくる。


「・・・嘘だろ・・・?」


前や、横に行けば触手と水鉄砲でハチの巣。

後ろは大木に潰されぺちゃんこ。


「・・・くそ!!斜めだ!!」


何とか木からよけつつ親分とも距離を離したまま走る。

そこを狙っていたかのように水鉄砲が飛んでくる。

僕は俊足で走り、紙一重で躱す。


くそ・・・。

このままではほんとにMPがつきる・・・・。


親分は僕とは反対側に体の一部を飛ばす。

また子分スライムだ。


ほんとその体どうなってんだよ・・・。


親分のLVは70まで下がっている。


・・・・ん?

一か八かやってみるか?


何となく頭に浮かんだことをやってみることにした。

まぁやけくそみたいなもんだ。


インペントリからクラーケンのタコすみを取り出し投げつける。

すると親分の一部が真っ黒になっていく。


親分は慌ててそこを切り離す。


・のどが渇いたキングバブルスライム  LV62


キタコレ!!


さっきの尖った骨をわざわざ取り出したから、異物が嫌いなのかと思って投げたら思いのほかいい結果になった!!


ほんとはただのやけくそだったんだけどね。


僕はすぐに親分に近づく。


親分は攻撃してくるが、さっきより攻撃力も攻撃の数も少ない。


僕は水鉄砲を切り落としながら近づき、渾身の一撃で親分を斬る。


するとクリティカルの文字が出て残りHPは1本になる。


さて、もう一踏ん張りだ・・・。

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