第63話別行動前編
「それでね、意外とママは不器用でね。一度に色々なことを言われると混乱するの!」
「この間もね、自動車教習所でカッコつけてマニュアル免許証とろうとしてね。あっ。クラッチってわかるかしら?マニュアルは半クラッチにしてから少しづつつないでいくんだけど。略して半クラっていうんだって!」
「坂道発進の練習でね、上り坂の。坂の途中で、一度サイドブレーキをかけて窓開けて、確認して・・・・って色々手順があって。」
「ママいきなりそんなにいろいろ言われて混乱しちゃって、「では半クラにして進んでください」って言われて、サイドブレーキを下げて、「クラクション」を半分押しながら「パーーーー」って音だしながら坂道を後ろに下って行ったのよ。もう私笑っちちゃて・・・・。半クラって「半分クラクションを押す」と勘違いしたのよね。」
ここは「カンパニー」のホーム。
僕たちは新たな仲間のアイーダと共に話をしていた。
・・・・いや、一方的に話をされていた。
アイリスは同じ年だし、自分を守ろうとしたからか、とても仲良くなっていた。
今もアイーダとの話で爆笑している。
・・・いや、面白いけどね。「半クラ」違いの話。
「ところで、アイーダは今後どうするの?僕らはどちらかというと攻略組だし。妖精族じゃ戦闘は厳しいよね。」
「わかっているわ!「カンパニー」に入ったのは仲間はずれが嫌だったからだもん。」
寂しがり屋だな・・・。
「だから今後は「カンパニーアイドル部門」を作るわ!生産職が武器を作ってレベルが上がるように、「歌手」は歌を歌うことでレベルが上がるの。しかも聞いてくれる人が多いほど沢山ね。」
歌手の人の救済措置だろう。
「ママにも負けない歌手になるの私は。」
「「「「「ママに?」」」」」」
「そうよ。「モモリン・モンモー」っていうんだけど知っているかしら?」
僕らは開いた口がふさがらなかった。
「モモリン・モンモー」と言ったら世界的スターだ。
彼女はその一人娘らしい・・・・。
「そ、そんな話絶対他の人にしちゃだめよ!!」
「そ、そうだよ。絶対危ない人達が来るわ!!」
「ん。大物すぎてびっくりした。」
「ほんとだよー!突然の告白は、心臓に悪いよー!」
「あら、やっぱり知ってたわね。ふふっ。ママはすごい人だものね。」
いや、すごすぎるだろ。
世界一の大企業の社長の娘たちが驚いているんだ。それほどに大物ということだ。
あのきれいな歌声は母親譲り何だろう。
「大丈夫よ。あなたたちにしか言わないわ。だって前にそれが周りに知られて大変なことがあったもの・・・。」
アイーダはつらそうな顔をする。これに関しては想像できる。
実際に千沙や香織さんはひどい目にあったことがある。誘拐だってされかけた。おじさんにこっそり教えてもらったが、その後も何度か誘拐しようとした奴がいたがSPによって阻止されていると。
だから僕はできるだけ彼女たちに時間を使い、警護のまねごとをしているわけだ。
「私たちは誓って言わないわ。」
「ん。当然。」
二人の言葉に僕らもうなずく。
ユイと姉さんも二人の周りに起きたことは当然知っているからだ。
僕らの真剣な表情に安心したのか、アイーダは笑顔に戻る。
「ありがとう。そういえば歌手になるためには服が必要よね。いくらくらいかかるかしら?」
アイーダは今だ初期装備。
「仲間になった記念に僕らがプレゼントしてあげるよ。」
「ほんとに!?ありがとう!!うれしいわ!」
僕らはメニューを開く。
ーーーーーーーーーーーーー
・隠れ上手なクモさん、討伐報酬。
頑丈なクモの糸×20
モブクモ君の骨×2
モブクモ君の爪×2
モブクモ君の牙×2
モブクモ君の魔石
・初討伐報酬
隠れ上手なネックレス
クモ糸の杖
・MVP報酬
モブクモ君の赤い魔石
・ラストアタック報酬
簡易転移石
ーーーーーーーー
頑丈なクモの糸ーー伸縮性に優れた糸。燃えやすい。
隠れ上手なネックレスーー存在感が薄くなる。
クモの糸の杖ーー魔力を変換しクモの糸を出す不思議な杖。
ーーーーーーーー
そう言えば・・・・。
ーーーーーーー
緑の宝石ーーーきれいな宝石
叫びの杖ーーー魔力を込めると声が大きくなる
金の塊ーーー金の塊
ーーーーーーーー
宝石はオーク戦の報酬で、叫びの杖は男爵のクエスト、金の塊は今回の坑道で採掘したものだ。
今回の鉱石は金の塊以外はすべてMr.とレヴィに売っていたので、かなりの金額になった。
「ねぇ。クモの糸で作る服って着れる?」
「モブクモ君の糸ね?大丈夫よ。みんなが持ってきたものなら何でも喜んで着るわ。」
ええ子や。
最初はめんどくさいと思っていたが慣れて仲良くなるとええ子になる。
「ね、ねぇ。その金に宝石をつけてネックレスにできないかしら・・・?」
「できるんじゃないか?一度レヴィとテイラーを呼んで聞いてみようか?」
結果としてできるとのこと。
ただレヴィにはネックレスを作るセンスがないらしく、テイラーは当然ダメ。
Mr.赤いふんどし達もだめだそうだ。
そこでレヴィが知り合いの装飾屋に頼んでくれるみたいだ。
服はテイラーに頼むことにした。
これでようやく当初の予定がこなせる・・・。
今日は金曜日。
つまりイベントまで残り3日。
イベントは日曜日なのでなので実質二日が準備期間になる。
僕らはスキルアップと武器防具のメンテナンス、アイテムの買い物に余った時間は家具などの買い物に当てようとしていた。(そこまでできるかな?)
家具に関してはメイド達が必要最低限の物は買いそろえてきてくれる。
初めの10万Gでは足りず、結構な出費になってしまったが。
とにかく今日明日は珍しく別行動となる。
アイリスはアイーダと遊ぶらしく、クリスとエリーゼは買い出しとギルドでサブ職を習得。僕とエリーゼはクエストとギルドとは別の場所で、新しいサブ職を習得しに行く。
僕とエリーゼは王都の教会に向かう。
教会が今回のクエストを受ける場所だ。
教会は大きく、とても神秘的だった。
ヨーロッパにあるような雰囲気がある。
・・・とにかく天井が高い。こういうところにいると自分がちっぽけに感じるのは僕だけだろうか・・・。
クエストの為、僕らは講堂の入り口付近にある銀の半円のボールに1万G入れる。
一人1万Gだ。
・・・・・あってんだろうなこれ・・・・。
これはレヴィが調べてきてくれたクエストだ。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
何も起こらない。
おかしいなと思い、何となく移動しようと思ったとき・・・。
「こんにちは。お布施をこんなに頂きありがとうございます。」
と、知的な白髭がよく似合う神官さんがやってきた。
「初めまして。私は王国神官長のノアでございます。ここにはどういった御用で?」
「ん。初めまして。私はエリーゼ。こっちはウィル。」
「せっかく王都に来たのでお参りを。それとここで「エンチャント」の魔法を習えるとお聞きしたんですが」
「なるほど。わかりました。こんなにお布施をいただいたのです。特別にお教えしましょう。」
僕らの目的は「エンチャントの魔法だ。エンチャントはブーストとは違い武器に魔法をかける。
さらに魔法使いの初級魔法さえ覚えれば「炎の剣」「氷の剣」などにすることができる。
もちろんMPが切れたら元に戻るが・・・。
なぜエリーゼだけでなく僕も覚えるかというと、ブーストに回復魔法のサポートが忙しいので、前線で僕がエンチャント魔法を皆にかけることにした。
エンチャントは光魔法に当たる。まず僕は光魔法を覚えなければならない。
このクエストは「お布施を1万G入れる」「神官にお祈りに来た、エンチャントを学びに来た」と伝える事で発生する。
知らなければできないクエストだ。
エリーゼはすでに光魔法を覚えているが一緒にお祈りする。
「ウィルよ、よくぞ参った。お主に光魔法を授けりょう・・。あっっ!!」
頭の中に噛み噛み女神の声が聞こえる。
「こんにちわフィリア様。エンチャント魔法は一緒にもらえないのですか?」
頭の中で問いかけてみる。
「えっっ?あ、あぁ本来はクエスト後に授ける話になっていたがお主らならいいぞ?」
ええんかい。
「ありがとうございます。エリーゼもよろしいので?」
「あぁ。よいぞ。何度も来られるとめんどくさいしの。今いしょがしいしにょ。あっっ。」
意外とてきとうだな。
「わ、わかりました。ありがとうございます。」
「ん。次来るときはケーキを持ってくれるとうれしいかりゃの。あっっ。」
さて。終わった終わった。こんなにあっさり行くなんて。
隣を見るとエリーゼがまだ祈っていた。
こうしてみるとまつげ長いよなぁ。
ステンドグラスから漏れる光を浴びいて本当に聖女みたいだ・・・。
なぜかドキドキする。
エリーゼから目が離せなくなる。
「ん。終わったよ?どうしたの?」
「い。いや。何でもないよ。」
僕は慌てて振り向く。するとノアが驚いた顔をしていた。
「こ、こんなに早く終わるなんて・・・。あなた方は女神さまに愛されているのですね・・・。」
「本来は別の頼みごとをしてから教える予定でしたがあなたたちには必要ないみたいですね・・・・。」
ノアは懐から何かを取り出す。
「これは神官幹部のみが持つ神官長の指輪です。あなたたちなら信頼し、お渡しすることができます。」
神官長の指輪。光魔法の効力を大幅UP!
「「ありがとうございます」」
「良い良い。いいものを見させてもらった。女神のご加護があらんことを・・・。」
「ほう!美しい女子がいるではないか。」
ノアが去ろうとしたとき、どっぷりと太った神官服の男が現れる。
「これブクブク。この人たちは流れ人だ。」
「ちっ。なんだそうでしたか。それでは失礼・・・。」
それだけ言うとブクブクは去っていった・・・。
というかブクブクって・・・。
「あの・・・・・。」
「よいか二人とも。この世に白なんてものはない。グレーか、黒に近いグレー、黒の三種類があるだけだ。しっかりと人を見る目を養いなさい。旅を続けるならね。でなければおうちに帰り、世間から目をつむることだ。・・・・それでは改めて女神のご加護を・・・。」
先ほどとは違い、真剣な目つきのノアはしっかりとブクブクをとらえ、意味深なことを言うとそのまま去ってしまった・・・。
僕らは黙って外に出る。
外は雲一つないいい天気だった。
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