第64話別行動後編
「おや、二人でデートかい?」
「ん。デート。私たちは夫婦」
「違うだろ。お姉さん、これとこれ頂戴。」
「あら、上手ね坊や。おまけにこれもつけちゃう!!」
今日はは土曜日。
明日のイベントに備えて僕らは食料の買い出しに出ていた。
今日は料理を作り置きし、長期間町から出てても空腹度を満たせるようにするためだ。
「あと何か必要だったっけ?」
「ん。結婚指輪。」
「・・・・大丈夫そうだな。じゃあ帰ろうか。」
「むーーー。いいもん。リアルで買ってもらうから。」
エリーゼは僕の腕に抱き着き一緒に歩く。
僕は今まで感じなかった胸の高鳴りに困惑していた・・・。
「じゃあ始めようか。」
「ん。」
「お願いしますにゃ。」
「カンパニー」ホームのキッチン。
アン達メイドによってキッチンは充実していた。
食材はインペントリに充実している。
できればしばらく作らなくてもいいように作りだめしておきたい。
「まずはだしを取ってしまおう。」
「ん。」
「はいにゃ。にゃ!!??」
「エリーゼ。握るのは包丁だ。アンのしっぽじゃない。」
猫好きのエリーゼは緊張ししっぽがピンと伸びたアンのしっぽを握っていた。
・・・もう一回手洗えよな。菌とかゲームでも怖いからな・・・。
まずは残っていた魚を三枚おろし骨を取り出す。
コラ、アン。しっぽを振るんじゃない。
エリーゼはアンに魚を与えない。
次に香味野菜を切り鍋でじっくり傷め、ちょうどいいところで魚の骨を入れ炒める。
コラ、アン。一本隠しただろ。
エリーゼはアンを庇わないの。
次に白ワインでフランベし、炒った桜エビと鰹節を入れ30分煮込む。
この時沸騰させず、30分を守ることが大事だ。
少量の塩を加える。こうすることで味が引き立つ。
アン、あとでなんかあげるから落ち込むな。
エリーゼはそれ見て喜ぶな。確かにかわいいがかわいそうだぞ。
こうして和風ヒュメ・ド・ポワソン(洋風魚のだし)の完成だ。
同時にウルフの骨、香味野菜をオーブンで焼き赤ワインでフランベ。一緒に煮込む。
トマトやブーケガロニを加えさらに煮込む。調理スキルのおかげで煮込む時間を短縮できるのはありがたい。
アンは興味なさそうにするな。
エリーゼはアンを撫でてる場合か。
お前らいったい何しに来た・・・。
こうしてフォン・ド・ヴォーもどきの完成だ。
んん。うまいな。
フレンチの主役のだしが完成すればあとは簡単だ。
ヒュメで米を炊き、残った魚の身で炒め、バターを加えればピラフの完成。
ヒュメで魚を煮込み、サフランにトマトペーストを加えればブイヤベースの完成。
ヒュメに少し塩を加えるだけでもいい出汁のスープになる。
カニにカニみそ、卵を加えて、生クリームを少したし蒸せば洋風茶碗蒸し。
ヒュメに魚介、パスタを入れて絡ませればペスカトーレパスタ。
無敵の出汁で僕はいろいろ作った。
アンよ・・・。つまみ食いは怒らないから魚だけつまむのはやめなさい。
エリーゼよ・・・。なぜ止めずに撫で続ける。お前の正義はどこにある?
次にフォンドヴォーにしょうゆなどを加え味を調える。
ひき肉を固め焼き、ご飯の上にのせ、野菜を肉の周りに乗せソースをかける。
ロコモコの完成だ。
残ったソースにターメリック、ガラムマサラなどの香辛料などと煮込めばコクの深い洋風カレー。
そこにココナッツペーストを加えれば台風ココナッツカレー。
肉を大切りで焼き、フォンドヴォーと赤ワイン一対一で煮込みかければ肉の赤ワインソース掛けの出来上がり。
次々と肉料理も完成させておく。
おいアン・・・。なぜ寝てる。なぜ魚がなくなっているんだ・・・。
エリーゼ・・。なぜアンを抱いて寝ている。もはや正義はないのか・・・。
おにぎりや焼き鳥など簡単に食べられるものも作る。
次にデザートだ。
生地を焼きホイップクリームにフルーツを詰める。イチゴやオレンジやブドウなどをペースト状にし、少し炒ってカラメル上にいした砂糖に加えれば、クレープのフルーツソース掛け。
アールグレイやハーブティを糖度16%にし氷に当て混ぜればハーブのかおるシャーベット。
16%の糖度のワインにフルーツ各種を入れレモンを絞り入れ冷やせばコンポート。
次々とデザートを完成させていく。
おっ、エリーゼが起きた。お前の正義はデザートにしかないのか・・・。
って味見しかせんのかい。
アンも起きた。
お前も味見だけかい。
もうAOLに正義はないと僕は確信した。
まぁおいしそうにしてるからいいか。
最後にケーキだな。
ってか何人前作ってんだろ。2、300人いけんじゃないか?
カレーだけで100人前はあるからな。何度も作りたくないからいっぺんに作ったし。
インペントリ様様だね。
さてさて、スポンジにホイップクリームイチゴを載せればショートケーキ。
薄力にチョコ、そのあとホイップクリームと泡立てた卵白を3回ずつに分け混ぜ焼けば、ガトーショコラ。ケーキは基礎さえ押さえれば何だって作れる。
タルトに薄力バター砂糖などを混ぜたペーストにフルーツのコンポートなどを載せればフルーツタルト。
他にもクッキー、チョコに粉やパン粉をつけて揚げたもの、マカロンなど様々作った。
おいお前ら。
何故普通に食事して談笑してるんだ?
正気かお前ら?
僕がこんなに頑張っているのに・・・。
何で「えっ、何どうした?失敗でもした?」って心配そうな顔してみてくる?
まず君たちと始めたことが失敗だったよ。
あの頃の皆で楽しく料理を作ろうっていう、僕のわくわくした気持ちを返してくれ。
純粋な僕の気持ちを返してくれ。
何故そんな真っ直ぐな眼差しで見る?
何故そんな純粋な瞳ができる?
何故そんな「ドンマイ」みたいな顔で僕を見る?
僕が悪いのか?
僕が悪かったのか?
そんな瞳で見つめるなよ。
そんな顔で慰めるなよ。
あぁ。女神フィリアよ。
教えておくれ。
何故この二人は黙ってこちらを見つめる?
なぜ何もしゃべらない?
何故?何故?
この空気は何だ?
謝ればいいのか?
あぁ女神様よ。
教えてくれ。
僕はどうしたらいい?
とりあえず二人にケーキを差し出す。
喜んで食べる二人。
良かった。
二人に笑顔が戻った。
これでよかったんだ。
何だ。簡単じゃないか。
答えは目の前にあったんじゃないか。
見ろ!二人は嬉しそうだ。
二人は幸せそうだ。
こんなに簡単だったんだ。
僕は何を焦っていたんだろう。
焦って答えを見つけられずにいた。
焦ったっていいことなんてないのに。
人生だって一緒だ。
焦ったっていいことなんか一つもない。
それを今思い出した。
もしかして爺さんはこれを僕に伝えたかったのかもしれない。
はは!爺さん。
僕は気づいたよ。気づくことができた。
これが伝えたかったんだな?
これを僕に伝えたかったんだな!!
ん?
何だこっちを見て
二人して何なんだ?
まてまて、落ち着け。
今の僕ならきっと答えを導き出せる。
考えろ。
考えるんだ僕。
「ッッって違うわ!!お前らさぼってんじゃねーー!!」
僕の叫びが屋敷に響き渡る・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
何故二人して可哀そうな目で僕を見る?
僕はいったい・・・・・?
あ、そうか!
僕は二人にケーキを持っていく。
二人は嬉しそうにケーキを食べ始める。
何だよ。
何僕は熱くなっていたんだ?
女の子2人相手に。
いったい何してんだ僕は・・・。
「って違うわ!!何語らせてんだよ!!無駄な時間過ごしたわ!!」
僕の叫びが屋敷に響く。
おいおいおい・・・。
何故そんな目で僕を見る。
僕を憐れむんじゃない。
僕はいったいどうしたら・・・。
いや落ち着け僕・・・・・・。
考えるんだ・・・・・。
以下これが夜まで続く・・・。
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