第35話王都南街道前編


「それで。どっちに向かう?」

「とりあえず王都パラードね。」

「ん。賛成。」

「そうね。ストーリークエスト進めておきたいしね。」

「さんせー!おーさまに会いに行こう!!」


前にも言ったがクロス町から王都パラードかボーズ街、どちらかに行くことになる。

ここで、それぞれ他の人とのの人生が大きく違ってくる。


レヴィ達とパーティを組んだ次の日。

僕らは装備も食料も準備できている。

ポーション類もフェラールの街を出る前にしっかり買っておいた。


クロス町は特にみるとこもなさそうなので、王都へ出発する。

因みにギルドに寄ったため4人のランクもDに上がっていた。


そこでクエストを二つ受けておく。

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・クエスト【王都のギルドに手紙を届けよう】


クロス町に集まった王都行きの手紙を定期的に王都に届けている。

今回は君の番だ!!」


・報酬

5000G


・期限

残り72:00


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・クエスト【ブラックウルフの退治】


クロス町から王都へ向かう道中をウルフの群れが塞いでいる。

その親玉であるブラックウルフを倒せば群れがいなくなるだろう。


報酬

20000G

簡易転移ポータル(パーティメンバー全員分)

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初めのクエストはついでだ。


ブラックウルフが今回のメインであり、エリアボスだろう。


クエストは初めに受けても後に受けても問題はない。

ギルドカードには倒したモンスターの数と種類が記載されているらしくそれをギルドで確認できるシステムだ。


魔法科学すごすぎる。

これは古代大魔道時代のものらしく、今も詳しい仕組みはわかっていないとのこと。


そんなのがあるということは車や飛行機のようなものもあるのでは、と調べたプレイヤーの情報によると自動魔道4輪、飛空艇の確認はされている。


しかし今はある理由によりあまり使われていないのと、使われているのは料金が高すぎて庶民には乗ることができないそうだ。


この世界は知れば知るほど胸が高鳴っていく。

童心に帰ったみたいだ。


4輪があるということは2輪もあるのだろう。

いつかはのってみたいものだ。


「お兄ちゃんニヤニヤしてどうしたの?」

「やーちゃん怖いわよ。」

「弥生たまってるの?抜いてあげようか?」

「あらそれならわたしもやりたい」


ハラスメント警告出てしまえ。


「違うよ。今日学校で聞いた魔道二輪のこと考えていてね。乗ってみたいなって。」


「ああー確かに乗ってみたいかも。そしたら後ろに乗せてね?」

「それ私も!!でもこの国にはないんでしょ?」

「違った。残念。でも先に馬だと思う。」

「そうね。どこにあるかわからないものよりも現実的に馬が欲しいわ。徒歩じゃ時間がかかりすぎるわ。」


「確かにね。学校がある日はほとんど移動で終わってしまうからね」

「そうだねー。でも馬さん高いよねー。」

アイリスの耳としっぽが垂れ下がる。

暇なときアイリスのしっぽを見ていると楽しい。感情によってよく動く。本人に聞くと自分じゃわからないらしい。ちなみにエルフの耳も動く。うれしければ上下にピコピコ動き落ち込むと垂れ下がる。

エリーゼとエリザベスは表情で感情がわかりずらいためこの機能は助かる。


因みに馬はフェラールの街で子供で15万Gもした。大人はいなかったが聞いたところ25万Gからだそうだ。金塊3つ分。移動が徒歩のこの世界では馬は貴重なものなのだろう。



「待って。この先の草むらに誰かいるわ。」

クリスからの忠告。今はクリスがこの中で一番遠目と気配察知が高い。狩人だからだろう。

距離は50mほど。草むらの中に7.8人くらいだそうだ。

気配を殺していることから待ち伏せだろう。あとは盗賊かPKかだ。

・・・・・・まあどっちでもいいか。


僕らは持ち物の確認をするふりをしながら立ち止まり話す。

「どうする?」

「ギリギリまで様子みよう」

「そうねこちらから仕掛けてPKにになってもつまらないし」

「ん。」

「なら攻撃の合図はクリスかウィルで」


エリザベスの言葉で作戦が決まる。

僕らは何食わぬ顔で歩く。


ガサガサっと音がし3人の男が出てくる。


「はーろー、こんにちは」

それは同じ意味だ。

「ちょっとケンちゃんからお願いがあんだけどいいかなぁ?」

よくないわボケ。

「あーれーケンちゃんこいつら美人ぞろいじゃん!!マジラッキーじゃね?」

典型的な悪者だ。こんな奴らでよかったと思う。

言葉巧みに惑わされたら高1の僕には太刀打ちできない。

「あらっ?この人たちフェラールの街でギルマスにぶっ飛ばされた人たちじゃない?」

「そうね。でも4にんじゃなかったかしら?」


「ちっ。なあまず俺らの話聞けや」

「そーそー。とりあえず武器と防具こっちに渡してくんないかなー。なぁケンちゃん」

「もちろん下着もね!!ねぇケンちゃん?」


こいつらの目的はわかった。草むらから弓を構えている奴が見える。というか丸見えだ。かわいそうに。


クリスとアイコンタクトをする。

「ねぇ。ケンちゃんのことそんなに好きなら、ケンちゃんの下着もらって頭からかぶっておきなよ。」


エリーゼの言葉に僕たちは笑い、ケンちゃんたちは顔お真っ赤にする。


「おいっっ!!やれっっ!!」


弓が僕の顔目掛け飛んでくる。

僕は笑っていて頭を下げたため、弓矢をよけられた。


「は、は、反撃よ!」

クリスも負けじと叫ぶが笑っていてうまく言えていない。


草むらから男たちが出てくるが8人全員がレッドプレイヤーだった。



観察で出てくる名前は緑がNPC、青がプレイヤー、赤がレッドプレイヤーつまり過去に犯罪を犯したプレイヤーとなる。


こんな序盤で犯罪者ってなにしたんだよケンちゃん・・・・。


僕らも武器を構える。男たちはほとんどが初心者装備でLv15前後だった。


男たちが出てきたことで僕らは正気に戻る。

クリスの素早いトリプルアローが弓矢君に刺さり後ろに転げる。

そこを僕がすかさず距離を詰め剛力で刺す。

「や、やめ、ぎゃ・・・・」

という声とともに消えていく。


あまり気分がいいものじゃないな。


一瞬止まってしまった僕にケンちゃんズが飛び込んでくる。

「すきあり!!」

笑顔で飛び込んでくる3人に驚いて後ろに下がる僕は運よく初撃をかわす。

「お兄ちゃん!!」

3人の後ろに来ていたアイリスが後ろから3人に剛力と魔法剣で切り一撃で倒す。

笑顔のアイリスと目が合い、アイリスの右側に火の玉が当たりアイリスは吹き飛ぶ。


時間がゆっくりに感じた。

目の前で妹が飛んでいく。

その表情に笑顔はなかった。

HPはまだ半分以上残っている。

しかし僕にはそんなことはどうでもよかった。

頭の中にはさっきまで笑顔でいた妹が目の前で吹き飛ばされた衝撃で真っ白になっていた。



僕の後ろからとびかかっている奴にクリスの矢が飛び、道を挟んだ反対側にいた2人にエリザベスのファイヤーボールが当たる。


僕にエリーゼがスピードブーストが当たる。


僕はアイリスに当てた魔法の元を見ると男が二ヤリと笑っていた。




プチッ


「テメェうちの妹に何してんだコラァァァァ!!!!!」



そのあとは正直覚えていない。気がついたら剣を草むらに向けアイリスが腰に抱き着いていた。


敵の姿はなく僕のHPはのこり2割。

皆が心配そうにこちらに近寄ってくる。

下を向くとアイリスが涙目でこちらを見ている。

しっぽと耳がペタンと垂れていた。


僕は無意識に笑顔を作りアイリスの頭を撫でる。



・・・・・・こうして僕は初めてのPVPを経験した

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