第12話

「お、おじゃましまーす」

「たっ、ただいま・・」

今日は私の他に、もう一人レイラさんの家に上がり込んだ。

「おかえりなさいシロちゃん、それにアカリちゃんも」

「お久しぶりです」

今日は泊まり込みで私の家で勉強会ということで、アカリにもレイラさんの家に来てもらった。

「それじゃあ私が夕ご飯作るから、2人はテレビでも見てて」

「私も手伝うよ」

「アカリはお願いだから座ってて」

私は思わず大きい声を出してしまった。

「すみません、つい大きい声が」

「別にいいけど、どうしてそこまでお手伝いを拒否するの?」

(レイラさんなら、話してもいいかな)

「その・・説明が難しいんですけど、アカリの料理は危ないんですよ」

「もう!シロったら失礼ね」

「危ない?下手とかじゃなくて?」

「有名な話があって、アカリがカレーを作ると怪我人が出るんですよ」

私も1度一緒に料理をした時に腕に打撲を負った。

「それからアカリと料理する時には、誓約書にサインが必須なんです」

「初めて聞いたよ!?」

「うん、分かったよ・・・私たちはテレビ見てようか」

私は2人を何とか納得させると、料理に戻った。

(それにしても、2人ってどんな話するんだろ・・・)

行儀が悪いと理解しつつも、私は聞き耳をたてた。

「アカリちゃんって何か部活とかやってるの?」

「はい、一応吹奏楽部だったりします」

「カッコイイなー、私中高と帰宅部だったから」

「楽器とか似合いそうですよ。文化祭のドレスも綺麗だったし」

「そんなに褒めても美味しいご飯しかでないぞ」

「出るんだ・・・」

作るのは彼女ではないが。

しばらくすると、テーマが変わったようだ。

「やっぱりアカリちゃん可愛いから、男子にモテるでしょ」

「いえいえ、ほとんどシロに盗られてますから」

「確かにシロちゃんも可愛いけど、アカリちゃんはシロちゃんと違った女子高生らしい可愛さだから」

「まあ確かにシロは美人ですけど、なんというか凹凸が無さ過ぎて男の・」

「お通し出来た」

私は躊躇なくアカリの後頭部に(色んな意味の)お通しを打ち付けた。

「いったあ・・・ちょっと胸のこと弄っただけなのに・・・」

「何がちょっとよ。・・・大体レイラさんもアカリも育ちすぎなよ」

どうやらアカリは聞き漏らさなかったようだ。

「レイラさんは確かに大きいけど、私は平均くらいだよ」

「聞き漏らしてよ!平均くらい私だって何度も調べたわよ!」

「なんか・・・ごめんね?」

「レイラさんまで謝らないで!」


「レイラさんって面白い他人だったねー」

夕食を食べ終わり、私たちは再び私の家に戻った。

「でもやっぱり謎が多い人だよね」

「そうね。私も名前くらいしか知らないからね。名字は分からないし」

「レイラさん、アパレルとかやってるのかな?もしかして社長かも?」

「それは・・・無いとも言えないけど」

身なりもきちんとしていて、私の食事代も出せて困ってる様子も無いけど。

「でも私が帰ると必ず家にいるんだよね」

「気になるなぁ・・そうだ!今電話しようよ」

「えぇ!?ちょっと待ってよ!」

私の静止も聞かずアカリは私のスマホでレイラさんに電話をかけた。

「・・・あっ、もしもしアカリです」

『アカリちゃん?忘れ物でもした?』

「シロが聞きたいことがあるらしくて」

(ここで振らないでよ!)

私が目で訴えるが、アカリは親指を立ててスマホを渡してきた。

「も、もしもし・・・」

『はいはーい、レイラですよ』

「あの・・・レイラさんって仕事は何してるんですか?」

これ以上引き伸ばすのは、私にもレイラさんにも悪いと感じ本題を切り出した。

『私が普段何してるのかが気になるの?』

「だ、だってレイラさんの事私何も知らないじゃないですか!」

『えへへへ~』

「何がおかしいんですか」

『ごめんね。シロちゃんが私の事を知りたがっているのが嬉しくて』

「それは・・・」

『成長したね』

誰かに興味を持てるようになった

その事はレイラさんの一言で分かった。

「・・・そうかもです」

『そうだね。私が普段何をやっているかだけど・・・』

「はい」

『私・・・作家やってるの』

「はい・・・え?」

私は近くで聞いていたアカリと目を合わせた。

『作家やってます』

どうやらレイラさんは只者ではないらしい。

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