第11話

「はい、これで受付は完了しました。お二人共衣装の用意してある教室に案内しますね」

私たちは受付の女の子に連れられ着替えのある教室へと入った。

「レイラさんは何を着るつもりですか?」

「どうせ2人で出るんだから、統一性のある物がいいよね。それこそ執事服とメイド服とか」

「えぇ・・私、もう執事服着たくないんですけど」

執事服は嫌だったが、統一性のある衣装には賛成だった。

「あっ、シロも来てたんだ」

名前を呼ばれ、後ろを振り返るとそこにはアカリがいた。

「アカリちゃんはどうしてここに?」

「どっかの誰かの代役ですよ」

どうやらクラス代表はアカリがやるようだ。

「私は何を着ようかな・・」

(何だかアカリ、いつにも増して真剣だ)

そんなことはつゆ知らずレイラさんは衣装を探していた。

「シロちゃん、これなんてどうかな?」

そう言って見せてきた衣装に、私は難しい顔をした。

「それって・・・」

「ダメかな?私は気に入ったんだけど」

「私、男装したことあっても、これを着こなす自信ないですよ・・」

「違う違う、こっちの衣装をシロちゃんには着てほしい」

「そっ、そんなフリフリした衣装着れないです!」

「でもシロちゃん、本当はこういう衣装も結構好きでしょ。ものは試しやってみよ?」

私はそのままレイラさんに押し切られる形でその衣装に決まった。

(私、それにレイラさんもこんな衣装似合うのかな)


『今年の目玉企画コスプレコンテストの開始を宣言します!』

着替えを済ませ、舞台裏で待っているうちにコンテストが始まったようだ。

『続いては、1年2組のおふたりです!』

どうやらアカリと片桐くんの出番のようだ。

「「キャアアアアア!」」

「「うおおおおおおおおお!!}」

体育館に黄色い歓声と、野太い声が響いた。『男子、片桐くんはドラキュラの衣装。そして女子アカリさんは小悪魔の衣装です』

片桐くんのドラキュラは、その塩顔とマッチして、まさに東洋の人間を彷彿とさせた。

片桐くんに対してアカリは、まさにコスプレのような可愛さがあった。

尻尾や頭に小さく生えた角は、アカリのどこか幼げな容姿とピッタリだった。

「アカリちゃん達、強敵だね」

いつの間にか来ていたレイラさんが言った。

「大丈夫ですよ」

私はどこか不安げなレイラさんを見て、思わず手を握った。

「シロちゃん・・そうだね」

レイラさんは手を強く握り返すと舞台へと歩を進めた。

『続いては飛び入り参加のこの方々です』

私たちは舞台袖に羽織っていたマントを置いた。

「行こうかシロちゃん」

「そうですねレイラさん、いえ旦那様」

ウエディングドレスの私と、タキシード姿のレイラさん。これが私たちの衣装だ。

「何よあれ!?可愛い!可愛すぎるよシロ!」

終始会場の声よりも後ろでシャッター音と共に聞こえるアカリの声が気になって仕方なかった。


コンテスト参加者の控え室、今はもう私たちしかいない教室だ。

「っはああ・・疲れたね」

「そうですね。終わったあとにあんなにもみくちゃにされると思いませんでした」

「シロちゃんの人気を改めて思い知ったよ」

(今回に関して言えば、私よりも圧倒的にレイラさんの人気が凄かったんだよね)

「でも高校に戻ったみたいで楽しかったなー」

「私もレイラさんがこんなに楽しんでくれて良かったです」

「シロちゃんは、楽しかった?」

「とっても」

普段だったら正直に「楽しかった」なんて言わないはずだが、何故だか口に出てしまった。

「高校の一大イベントだからね!」

(それもあるけど、でも私にとっては・・!)

「わ、私は・・・」

その瞬間、外で大きな歓声が上がった。

「あっ、キャンプファイアー」

「・・そうですね。せっかく今日の主役なんですから行きましょう」

「え?何か言いたかったんじゃないの?」

「何でもないです。気にしないでください」

「うーん、まあいいや。早く行こうか」

レイラさんが手を差し伸べてきた。

しかし私はその手を握ると、彼女よりも先にほを歩み出した。

「たまには私がエスコートしたいです」

レイラさんは何を思ったのか黙っていたが、手だけは離さなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る