第10話 記憶に残る物と残らない物・2
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記憶に残るものと残らない物 2
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「意志がありますね。子供達にこういった物への意識があるから遊んでいるんでしょう。この街のあり方、おじいさんの思いは、そこなんでしょうね。一見、あたり前である生活が失われている中で、その意識を持たせている。この辺りの人達は、皆同じ思いなんですよ。
きっと。」
「そこを汲んで考え、まぁ現実も見ると。」
「逆に子供達が楽しんでくれている事で、あえて止まっていたのかもしれませんよ。流れが。
この子達がいてくれて、良かったんですよ。」
「室のドアの取っ手を見て下さい。」
「取っ手?ですか?」
「まだまだ現役でしょ。人が使っている温もりがある。」
「室の入り口横にも、妙に分厚い板が並んで、縁台か、テーブルにでも使用していたんですかね?」
「私も、先程見たけど、ベニヤ部分は、腐って、剥がれ落ちてるし、使える物では無いねぇ。
もっぱら、好きな酒を取りに来てるのか、子供達が遊んでいるだけだろうが、奥行き
最近は何事もオープンだからねぇ、室に酒あり、処休んでっ、て、来るには構わないって話しなんだから、声を掛けて聞いてみるのもどうかと。」
「室が生きるんじゃないですか。」
「生きてるけどね。欲しがらないわけよ。」
「ただ、置いてかれるのは、いやなんですよね、さっきの子供達、片付け競走でしたよ。」
「そう、室の形式は、まだ理解して無いから。片付けるの早いけど、一人、自分で広げた算数セットで、違う事してる子供がいたじゃない。
見てると面白いよね。
欲しがらないのは、現状に満足しているんだよ。」
「気が付いて無いんじゃないですか?」
「そう。その状態。もし、そのままが続いていると、この建物と同じかって・・・。」
「どこかで、呼ばなきゃ気が付かない。けど、この場で夢中になって遊んでいるのもそのままだから。」
「おじいさんがね、埋っちまうって、良くしてやりたいんだがと話していたのは、今の時代に、ちょっと気付いたのと、自分で理解できる世の中を維持したいんでしょう。きっと。
この建物は、世間から見れば不要の代物。大事にしても、どうでもいいって言われちゃったら、それで、ゴミに変わる。米は必要でしょう。新米だって食べたいと。」
「それ、古手川さんのデザート問題と、何か関係がある話しなんですか?」
「茶見子さん、温故知新も街の統一感が大切なんだよ。この町内はみなさん協力的なんだろうね。
だから、室だけでは無く街全体にね。
まずは500メートルでもいいから。」
「古民家を改装して会社にします?」
「支社の設立かい。茶見子が支社長になるか?」
「木造の民家であれば、まさか会社だとは思わないですからね。」
「アジトにする必要はないが。会社にするには、セキュリティの問題と信頼性が無いでしょう。」
「スタジオセットとして写真館とかどうですか?」
「映画のセットとして、作り込んでおけるなぁ。うちで貸し出すか。」
「本当ですか?古手川さん、住んでていいですか?
私、働きますから。」
「この室は、別だがね。
いやぁ、そう思ったんだよ。
携帯電話にノートパソコン、家電と家が揃えば申し分ないからねぇ。贅沢な事でしょう。個人だったら。」
古手川さんは、室の入り口を遠くからぼんやりと眺め、
「このままで、いいよねぇ。」
と、珍しく、アタックを弱めていた。
アイディアマンのサービス精神は、現状維持という新たな方向へと進んで行く。
「私もこのままで、現状はこのままでもいいと思います。」
「そうでしょ。その方が、昔からこの建物を知ってる近所の人や、あのお爺さん本人も安心するんじゃないかなぁ。
年もとられてるし、修復するより活気づける!!
このまま賑やかに出来れば、時代が戻った気持ちになるじゃない。
修復したいけど、素材感を維持させておかないと、やっぱり昔と違うって、ちょっと諦めが入るでしょ。」
「こうなったらここは古手川さんデスヨ。」
「うん。気になったモノが、凄く大事で、好きすぎちゃうと、使わなくなる人っていますよ。
興味有り過ぎて、取っておく。
お気に入りの店は、あまり教えたく無いっていう独占欲が強いのと、現状が好きだから、変わって欲しく無いと、願っているんじゃないかねぇ。
骨董市でも、店主がね、大事そうに飾って並べてんだよ。
売る気があるのか、無いのかねぇ。
値段だって、訳がわかんない位、高額だったり、言わないよね。もう。
可笑しいでしょ。
売りたく無いんだよ。その店は。
しかし、年期はスゴイよ!
そうやって年をとって古びてくるんだから、慣れなんだよね。
あってあたり前の晩酌セット。
枕が変わって眠れないって騒ぐのは、子供っぽいね。
だからね、そのままでいいと思うよ。迷いもあるしじゃない。
だから、賑やかにね。
さっきの子供達のように、毎度毎度遊びに来てくれればね。」
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