第12話 結界と試練
大ババ様の家は村のど真ん中に位置しており、村の外れにあるハルヤの家からは歩いて15分程かかる。
のを走って5分で来た。来るのが遅くて何か面倒くさい事になったらたまったもんじゃ無いからだ。
主にそれを危惧していたのはハルヤだけど。
「大ババ様は何をするか分からないというか、突拍子も無く無茶振りをしてきたりするからな……」
僕はまだ大ババ様のそういう一面を見てない……いや、最初に無茶振りされたわ。
彼方に蹴り飛ばした主の生死を確かめて来いとか、実質帰ってくるなみたいなもんだからね?
大ババ様は村での地位の割にこじんまりとした家に住んでいる。2階も無い、そこら辺にありそうな木造家屋だ。
ドアを開けると鈴の音が鳴る。
が、そんな事よりも僕らをビビらせたのは、目の前の状況。
……大ババ様が玄関のすぐ先で仁王立ちしていた。
え、ずっと待ってたの。……こわ。
「遅い」
開口一番それかよ、更年期障害入ってるんと違う?
「何用ですか?」
ハルヤの問いに、大ババ様は顎で後ろを指す。中に入れってこと?
大ババ様の後について家に上がり、居間へと足を踏み入れる。前回来た時と何も変わりない、こじんまりとしたリビングルームだ。
「1ヶ月じゃな」
唐突に口を開いた大ババ様。話の切り出し下手くそか。
「そーですね」
「お前達に試練を授けようと思う」
脈略が皆無!!!!!!!
「えーと、どういう事です?」
「結界が完成した」
「はぁ」
「前回のような単に魔物避けとしての役割を持つものでなく、今回は物理的に対処する、自動外敵迎撃結界を作った」
仰々しい名称だなぁ。初期微動継続時間かな?
「平たく言うとゴーレムを作った」
最初から平たくしなさいよ。
「……その事と試練とに何の関係があるのですか?」
ハルヤは最もな質問をする。よく聞いた。
「それのテスト代わりに、お前達にはゴーレムと戦ってもらう。そしてゴーレムに勝たなければ村を出ることは許さん」
おいおいおい。
「聞いてた話と違いません?」
「この程度の試練を乗り越えられない様では魔王を殺す事など遠い夢物語じゃ。これもお前を思っての事」
「……あの、何故俺もなんですか?」
「お前もこの1ヶ月でだいぶ成長しただろう。その成果を見せてみろ。それとも倒す自信の無い根性無しか?」
大ババ様はハルヤを無駄に煽る。
「……分かりました。やります」
ハルヤ君負けず嫌いだもんね。ちなみに完全にやり損だからね。
「よし、では1度外に出るぞ。ゴーレムを見せてやろう」
家の裏戸から庭に出ると、ソコには件のゴーレムが2体鎮座していた。
現在は座り込んでいるが、形状的に恐らく二足歩行だろう。顔らしき部分には目の様な赤い石がはめ込まれている。
材質はパッと見……分からない。少なくとも岩ではない。
だが、どこかで見た事あるような……?
「材質は主の亡骸じゃ」
あ〜、なるほどぉ。
だからピンク色してるんですね。
「どれ、エンド。試しにコレを思いっきり蹴ってみろ」
そう言うと大ババ様はゴーレムの元へ歩み寄り、手をかざし何やら詠唱をする。
そうするとゴーレムの目に光が灯り、ガガガと音を立てながらゆっくりと立ち上がった。
……ちょっとカッコイイじゃん。色の癖は強いけど。
「え、本気で蹴っていいんですか?」
爆発四散するか吹っ飛ぶかしない?
「遠慮せず、本気で蹴れ」
何なら衝撃波の余波で大ババ様吹っ飛びません?
そんな事になっても知りませんよーとか思いながら、手加減する気も一切無く。何なら助走して思いっきり飛び蹴りをかました。
むにゅう。
ゴーレムに向けて放ったファイザーキックは、確かに命中した。
が、その柔らかい体にめり込むだけめり込み、何なら足が全部埋もれたが、その体にダメージを与える事は無く、周りに衝撃波も生じなかった。
「え、ヤバ」
思わず率直な感想が出た。語彙力。
「このゴーレムは衝撃を完全に吸収する。打撃は絶対に効かんぞ?」
「では、斬撃は効く、という事ですか?」
「打撃に比べれば通りやすい。が、懐に潜り込めば容赦なく反撃が飛んでくるぞ」
大ババ様が更にゴーレムに詠唱をかけると、今度は目の色が青くなる。
その状態で大ババ様は魔術で岩石を生成し、ゴーレムに向けて高速で発射した。
直径1mはある岩石。僕らが食らったら一溜りもないだろう。
が、ゴーレムはそれが体に到達する前に、腕を動かし岩石を殴り飛ばした。
……その瞬間、岩石は粉々になった。
「……いや、僕らが食らったら死ぬでしょこんなの」
「そこは工夫で何とかするのじゃ。食らわないようにするとか、食らっても大丈夫な様にするとか」
簡単に言いますねぇ……?
「対策期間として1週間やろう。因みに1人1体だからな。協力せずに1人で倒すんじゃぞ」
それだけ言うと、僕らは大ババ様につまみ出された。
そう言えば飯を食べてなかったから、空腹で腹が鳴るが、今やそんな事はどうでも良かった。
2人してお互いを見合わせる。そして数秒の硬直の後、深いため息。
「厄介な事になってきたな……」
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