第3話 「賊に襲われた」

 かれこれあって村に連れてかれた。

 そして取り敢えず服を着させられた。ありがとう。


 村長的な比較的立派な家に招待されて、村長的な老人と会った。

 ので、事情を説明。と言ってもオイラは天使じゃねぇぜってことを弁明。


「な、なんと!? では、何故森があのような状況で、その渦中に裸で立っていたのですか!?」


 ……何でだろうねぇ。


「……き、記憶が……」


 そう、僕は記憶喪失だという嘘に逃げた。我ながら結構厳しい。


「何と……。それでは仕方ありませんね……」


 通じた。

 記憶喪失に国境はないッ。


「では、実は天使様か、その生まれ変わりであるということも有り得る、ということ。このスバル村の長である、ジエン・トリルトンが、村の衆を代表して歓迎の意を表させていただきます」


 逆に悪魔じゃねぇかという発想はないのか?

 とにかく、衣食住を保障してくれるとの事なので、有難くサービスを頂戴する事にした。

 まぁ、大義名分は魔王討伐だしね。それくらいしてもらわないと。


 取り敢えず村長の家の一室を貸してもらい、そこを当分の拠点とする事にした。


 ……さて、一息付いたところで本題だけど。


 ホントに父さん殺しちゃうの?

 何とかその試練から逃れたい。面倒くさいし肉親殺すとか冷静に考えてヤバいし。


 けど、そんな愚行を許すような転生はさせて無いだろうなぁ、あのアホ魔術担当大臣。


 恐らく、父さんの意に反する行いをしようとすれば、ペナルティとか授けるんだろうどうせ!!! 分かってるんだよこっちは!!


 なので、兎も角父さんのいる魔王城までは行くことにした。そこで話をして、仲良く和解といこうじゃないか。


 と、取り敢えずの行動指針を決めたところで、部屋のドアが勢い良く開いた。


 息を切らし、汗を額に浮かべながら部屋の入口に立っていたのは、女の子だった。


 多分歳は僕と同じくらい。

 茶髪をポニーテールでまとめており、パッチリとした二重瞼が特徴だがそんなことは置いといて。


 とにかく可愛い!!!!

 めっちゃ可愛い。普通に超美少女。

 俺というゲームのメインヒロインだなさては。よーし攻略してや


「アナタ、天使ってホント!?」


 嘘だよお前もか。


「あ、いや、僕は記憶を無くしてしまってて、自分が誰かもワカラナインダー」


 自分でくだらない嘘をつくのがキツくなってきて、棒読みになってしまった。


「あ、そうなのね……。ゴメンなさい、早とちりしてしまって……」


 この村の人間は皆物分りが良くて宜しい。集団で結婚詐欺とかに引っかかってない?


「け、けど、記憶喪失ってことは、天使かもしれないのよね!?」


 この流れ前も見たぞ。


「私のおばあちゃんから聞いた話なんだけど、世界が大いなる危機に瀕した時、天使が舞い降りて世界を救うっていう言い伝えがあるらしいの。……私、それがアナタだと思うの。魔王軍という危機を救う存在が、アナタなのよ」


 すんごいアバウトな言い伝え。

 この娘はもしかして父さんが用意した舞台装置か?

 だってこんな僕のタイプの娘が都合の良いこと言ってくる訳ないじゃん……。


 答えに貧して吃っていると、何やら外から叫び声が。


「強盗団よーーッ!!! 強盗団が襲ってきたわーー!!!」


 矢継ぎ早にイベントが起こりすぎでしょう!!!


「そんな、強盗団だなんて……。け、けど、これもアナタが救世主であるための神様の思し召しかもしれないわ!! お願い、天使様、私達を守って!!」


 思い込みが激しいのぉ!?


 引っ張られるように外へ連れてかれると、外は大パニックで、武器を持って戦いに出ようとする男集団もいたが、多分概ね素人だろうし、これはもってかれる。


「皆、落ち着いて!! この人が私達を守ってくれるわ!!」

「え、いや、どうした?」


 流石にサイコすぎる言動に思わず反応してしまった。ヤベぇよこの娘。


 が、そんな僕の困惑を他所に村人達は僕の元にめっちゃ駆け寄ってくる。


「本当ですか!? 天使様、お願いです、私達をお助け下さい!!」

「お願いです、まだお腹には子供がいるんです!」

「この村を滅びさせる訳にはいかないんじゃ!! お願いします、天使様!!」


 おい最後。村長が神頼みってどうなんだ。

 俺が答える余地も無く、矢継ぎ早にまくし立てられ、もうどうにもならない。

 どうやらもう賊が村のすぐ近くまで来てるらしい。


 ……余りに恣意的なものを感じて思わずイライラしてきた。


 そんなにも父さんは僕が逃げると思ってるのか。


「……舐めやがって」


 群がる村人を掻き分け、村の入口へと歩き出す。

 確かに、賊らしき偏差値低そうな方達がもうすぐ入口までたどり着こうとしている。


 ちょっと小走りで入口に向かい、何とか賊よりも先にたどり着くことができた。


「アァ!? なんだテメェ、死にたくないなら今すぐどき


「うるせええええええええええええええおるぁああああ!!」


 セリフを言い終えるのを待たず、今までのイライラを全て込めて思いっ切り賊に向かって回し蹴り。



 賊、約20人、残らず爆発四散。


 ついでに平原の草花も全て風圧でハゲ散らかしていった。

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