第60話逃走と獣人の村
色々考えた末に、俺達が出した答えは……。
兎獣人の、親子を連れて逃げ出しました。
そうです。
扉にいくら人を貼り付けても無駄なんです!
だってうちにはクロがいるんだから!
あれ?
そう言えば、何で国王とか、クロとヘメラを認識出来なかったんだろうって?
どうやら光学迷彩で隠れていたみたいよ!
やっぱり普通に、ドラゴンの姿を見せるのは問題あるからね、色々と。
ヘメラも、どんな能力を持っているのか一切不明だしさ――。
今回の事で、この兄妹は光学迷彩が使える事がはっきりしたけどね!
夜になってから、クロが小型に変化して、二人ずつクロに乗り込み、一旦馬車が置かれている厩舎へ避難。
その後、俺が馬車を虚空空間へ収納し、中型になったクロに皆で乗り込んでとんずらしました。
もうね、こんな奴等の相手をするのは御免な訳ですよ。
「それにしても驚きましたわ。兄には聞いていましたがクロ様が、こんな大きくなられるなんて」
「そういえば、メテオラは初めてだったね」
「竜です、おっきい竜です!」
「小竜は稀に山脈で見かけますが、この大きさの竜は伝説でしか聞いた事が無いですよ!」
兎獣人の親子にも、喜んで貰えている様で良かった。
さて、今後どうなる事やら。
でもね、領地に帰る訳じゃないからね!
勿論、このまま旅に出かけますよ!
俺が居なくても、街の運営はデメストリーがやってくれていますから!
優先事項は、兎の親子を安全な場所まで運ばないといけないので、いざ獣人の王国へ!
クロに乗っての移動だから早い、早い!
あっという間に、ブリッシュ王国を抜けブレビ王国へ俺達は入った。
国境は、アルステッド国との国境と違って、一応木の杭が打ち込んであり、柵が張り巡らされていた。
その境界線を越え、深い森の上空を飛ぶと――木で出来た館と思しき建物が集まる集落が見えてきた。
そのまま降り立っても良かったのだが、警戒されかねないので手前で馬車へ乗り換えようと思った所で……肝心な事に気づいた。
道がありません!
というのは正確じゃないか……獣道しかありませんでした。
そんな訳で、皆で半日ほど歩いて、館のある集落にたどり着いた。
「何者だ。おいこっちに応援を頼む人間がきたぞ――っピクシードラゴン!」
上空から見えていて、知ってはいたが、辿り着くと木で出来た砦が築いてあって、櫓の上の門番らしき狐の獣人に誰何された。やっぱり狐もいるんだね!
あれかな?九尾とかもいるのかな?
兎の親子に聞いたら、そんなの聞いた事が無いらしい。
夢破れました。
「私らは、旅の一行です。ブリッシュ王国で捕まって奴隷にされていた兎獣人の親子を保護し、安全なこちらにお連れしたのですが」
嘘は、言ってないよ!
「む、兎に犬に猫に狼。確かに獣人が多いが――兎の親子を保護と言ったな、それではそっちの猫、犬、狼はなんだ?」
「ポチはコータの仲間だに!」
あれ、ペットじゃないの……昇格した?
「タマは、ポチの妹にゃ!」
「私も、コータさんの仲間です」
「そ、それとそのピクシードラゴンはお前のか、いったい何処から来た!」
「はい、アルステッド国から参りました」
「ふむ、彼の国が、ピクシードラゴンを擁していると言うのは本当だったのか。危険は無かろうな?」
「はい。いたって大人しいですよ」
「それなら入れてもいいのか……我等を差別しない国から来たのなら、同行者が獣人でもおかしくは無いな」
「入ってよし!」
何故か今回も、ヘメラはスルーされている。
まぁ、楽だからいいけど。
村長らしき人の邸宅に招かれ、事情を説明すると……。
「この度は、兎の親子を救って頂き有難う御座います。本日はゆるりとお寛ぎくだされ」
そう、羊の獣人にお礼を言われた。
羊が村長って……大丈夫なのか?
獣人って強さで上下関係決るんじゃ?と思ったら、一概にそうとも言えないらしく知恵のあるものが村長になる事も多いらしい。
羊って頭いいの?
何やら広場では、歓迎の儀が執り行われる様で、色んな種族の女性達が集まり料理を作っていた。
中でも驚いたのは、チーズをふんだんに使ったパン。焼きとうもろこし。肉団子だ!
この世界にきて、チーズは王都とイアンの家で食べたが貴重で、量はそんなに多くなかった。
ここの料理に使われているのは大量のチーズだ!
聞けば、ヤギの乳を使って保存用にチーズを各家庭でも、良く作られているらしい。
後で、譲って貰えないか交渉しよう!
とうもろこしも、王都では粉にした物しか置いていなかったが、ここでは普通に焼いて食べるらしく、俺も久しぶりに食べた。
肉団子は、山で取れた猪や、豚の肉を、細かく何度も叩いて作るらしい。
味の方は――豚の骨から取ったスープで煮込んであり、塩味の薄味ながらとても美味しかった。食感がちょっとゴツゴツしているけどそれがまた食べ応えがあって美味しい。
「この、肉団子の食感がたまりません!」
「この料理は初めて食べただに!」
「王城でもこれだけのチーズは中々用意出来ませんよ!」
「おいしいにゃ!」
「肉団子の中の軟骨が、なんともいい食感になっていますね!」
俺が、焼いてあるとうもろこしを取ろうとしたら……。
「これは、ヘメラのだぞ!」
さいですかぁ~。
そんな感じで、みんな各自で楽しんでいるようで何よりだ。
昨日までは、あの獣人蔑視の国にいたから気分的にほっこりする。
やっぱり、獣人は人類の宝だと思うわけよ!
獣人達の興味は、やはり兎の親子では無く、クロに集中していた。
「本物の竜を、こんなに間近で見られるなんて生きていれば不思議な事もあるものね!」
とは、村長の奥方の羊のおばあさんだ。
「他の皆も、触りたがったがクロが体を揺すって嫌々をするので皆、諦めたようだ」
兎の親子も、楽しそうに皆の仲に溶け込んでいた。
これなら、ここで暮らしてもやっていけそうだ。
宴も、たけなわに近づいてきた頃にそれは起こった。
途中から参加してきた狼の獣人が、ホロウを見て姫様!と言ったのだ。
俺はステータスで見て知っていたが、他の皆は、一斉にメテオラを見た。
だが狼獣人の視線は、ホロウに釘付けになっていた。
宴もたけなわって良く宴会で聞くけど、閉めの時に使われるから宴会もおしまいの雰囲気の事だと漠然と思っていたら――宴会が盛り上がっている真っ最中の事なんだってね!しかも、たけなわって漢字が酣。酒に甘いって書いてある事から酒造で酒の発酵が進み良くなって来た状態が語源なんだとか。
ちょっと豆知識でした。(本作には一切関係ありません)
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