第53話街の名は……

「さて……コータ殿、此度の戦いご苦労であった。しかも大量の財宝と調味料、帆船の土産付きだ。この功績を讃え、褒美を取らす!何でも言ってみるが良い」

何でもねぇ。

何かあったっけ?

あっ、あれだオワレスって名前が気に入らない!

そんなものしか思い浮かば無いな。

終わった伯爵っぽい名前で、めちゃめちゃ縁起も悪いしね。


「恐れながら、一つだけ御座います。叶いますればオワレスという名前を変えて頂きたく――」

「何、名前が不服と申すか!」

「はっ。オワレスの街の伯爵が、クーデターを企んだのは病床にあった陛下も後で聞き及んでおられる事と存じます」

「うむ、それはアレフより聞いておる」

「王家へ、弓を引いた伯爵の使っていた街の名前は不吉で御座いますれば……街の名前、地方の名前を一新して頂きたく」

「確かに不吉よのぉ。その名は王家が伯爵家であった身分よりオワレスであったが……過去2度、あの街の城主が王家へ弓を引いた事に成る」

「はい、長く使われていた名前の変更は、大変手間が掛かり――実務の方々には御苦労を掛けるかと思われますが……王家の繁栄を磐石なものにする為にも、名前の変更を御一考頂ければと思います」


流石に陛下でも考えざるを得ないか?


「分った。名前はもう決めておるのか?」


何にしよ?宮城?登米?それはないな……。

石の森?ありえん。

う~ん……最近聞いた名前でいいのがあったな!

今日は、クロも居ないしこれにするか!


「陛下、街の名前は……」



俺は、王城から出ると真っ直ぐ迎賓館に向った。

新しい領地への出発が、近づいている為だ。

流石に代官に会わずにじゃ!よろしく!はナイナイ。


それに、イアンともお別れだしね。

え?昨日の筈では?

流石に俺達が出立するのを見送りたいんだってさ!

案外イアンも寂しがりや?

その内というか、アレフが結婚したら王妃になっちゃうかもしれないんだから、そう考えると平社員が一気に社長に成る様なものだな。

すげー玉の輿!


迎賓館に戻ると、今度は皆がフロアに集まっていてお茶会を催していたみたいだ。

本物の王女様がいるから華やかだね!


「コータさんお帰りなさい!」

「コータ様お帰りなさいませ!」

「コータさんおかえりにゃ!」

「コータさんお帰りなさい!」

「コータさんおかえり!」

「コータさんおかえりだに!」

「おうコータ遅かったのぉ!」

「お前、何きょどってるんだ!そんなんで結婚できるのか?」


さて、どの順番でしょう? 

と言うか、キャラ作り失敗してねぇか?これ!

若干2名、めちゃめちゃ分り辛ぇ!


そんな事で、最後の晩餐会を豪勢に行った。

今回の褒美は、名前の他に金貨で5000枚、他にも胡椒を10kg程、貰ってきた。

やっぱりさ、調味料って偉大だと思うわけよ!

あ……この言い回し……あれだ、コインあげて指ではじく電撃ものに出てきた爆弾人形使っていた子。

そんな事はどうでもいい!大先輩の作品だからね!


胡椒があれば、どんな魔物の肉も美味しくなる!

それが一番大事なんだよね!

昔、両親が留守の時に、ただ塩だけかけて食った豚肉は――あんま美味しくなかった。

味が無いと、もっと生臭くて不味い。

それを解消する秘密兵器が胡椒だ!

うんちくたれてすみません。俺14歳でした……。


さて、皆にも満足してもらったし……街の名前を発表します!

え?街に着くまで引っ張るんじゃないのかって?

そっちのがいいかな?でも言います!


「じゃじゃぁーん!俺は陛下にお願いしてオワレスを、永久に終わらせる事にしました!」

「「「「「?」」」」」


あ。皆が、訳分らなくて固まった。ふりーず!


「そうじゃなくてね――オワレスってさ、王家に謀反を起す運命の様な気がして不吉だ!と思ったのね。それで街の名前の変更を陛下にお願いしました!」


ぱちぱち!って俺だけかよ!

何か皆、ぽかぁんとして見ているんだけど……何で?あんま興味無かった?


「何か驚きですね。街の名前が褒美なんて初めて聞きました」

「あ、それ俺が頼んだ褒美だからね!別に陛下が悪い訳じゃないからそこ誤解しない様に――」

「そーですの?ならいいのですが……また父上が無理をさせたのかと思いましたわ」


メテオラ、そんな事言ったら陛下が悲しむよ?そう言ったら……。


「そんな柔で、王なんて務まりませんわ!」


だってさ――。


「それで名前は何にしたんだ?」


まさか、ヘメラが興味を持つとは……。

まさか例の能力で感づいたとか?

それだと怖えぇな!


「街の名前は” アイテール ”です!」


――ブン。


あ……これ最近多くなってきたな。



朝、目が覚めると、皆はもう出立の準備を終えており――後は俺が御者台に座るだけになっていた。

あれ?俺、辺境伯だよね?

何で、御者一人雇ってないの?

皆に聞いたら……フロストが言う事を効かないからだとか。

お前か!フロスト――さん。


あれだよ?大企業の社長がさ、リムジンを自分で運転とかどうなのよ?

俺の場合、街だから町長なのか?

よくわからん!


さて、フロストさん頼むよ!

そう言うと久しぶりだからか、めちゃめちゃ飛ばし出した!

ちょ、絶対わざとだよね!

俺の尻を壊す気ですか!


――そして通常1週間はかかる距離を、1日で到着したのであった。

当然俺の尻は、風呂に入れないくらい腫れていた。

サルじゃねぇ!


旧オワレス王城は現在は改築工事を行っており、塗装も真っ白な漆喰を塗って今後を象徴する純白の城に生まれ変わっていた。

さて街の名前のアイテールだが……散々クロと時間を掛け、漸く納得してもらった。


「兄様の名を使っているんだからな!しょぼいのは駄目なんだぞ!」


だそうで……もう少し改修が必要に成りそうだ。


「おぉ、これは。アイテール辺境伯様。私奴は陛下より依頼されて此処の代官を執り行っております。デメストリーと申します。末永くお願い申し上げます」


何かこういう事、言われると偉くなった気分になるね!


「私が、アイテール辺境伯に陛下より任じられたコータ・ミヤギである。陛下より聞き及んでいるとは思うが……留守にする事が多い故に、この領地の管理をしっかりと頼むぞ!」


俺達は、アイテール城に皆で揃って入って行った。

え?ポチとホロウが壊した門だって?


もうとっくに直っていたよ!

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