第54話メテオラのパワーレベリング

「きゃぁぁぁっ、コータ様 大変ですわ 足に う、腕がぁー」


俺は、すかさずメテオラの足に取り付いたオークキングの腕を切断、そのまま絡まっている指を、力ずくで外し捨てる。


「はぁ助かりましたの。いつも皆さんは、こんな戦いを繰り広げられていたのですね」

「いつもと云う訳ではありませんよ、パワーレベリング以外では、あまり戦闘はしてないですから」



あれ、そんな事は無かったっけ?


「それにしても、ここは何ですの、こんな数の魔獣が跋扈する場所があるなんて初めて聞きましたわよ」



そう、ここは海洋国家エジンバラ編で、オクトパス討伐の依頼を陛下から受け、皆のレベルアップをする為にやってきた。オルゴナーラ山脈の湖の北の山を1つ越えた沸き場、スポットになっている所に、俺とメテオラで来ていた。


えっ、なんで二人だけなのかって?


話せば長くなるのだが、俺達は王都を出発しアイテールの街(旧オワレス)に到着した。

すると聞き覚えのある声で、


「早くお母さんに、王子様との事を話しに行かなくちゃ!」


あれ、そういえば王都を出る時に、イアンからお別れの挨拶が無いなと思っていたら一緒について来ていた!


どんな落ちだよ、それ!


イアンは、今回のアレフ王子との話を、まだ母親にしてなかった様で、その報告がてら母親を迎えに来たのだとか。


そのイアンの実家の引越しの手伝いに、アルテッザ、ポチ、タマ、ホロウが借り出されており、俺はといえば俺達の中で最弱の、メテオラのパワーレベリングにこの山に来ていたという訳だ。


「もっと少ない方が、良いのでは無いか?」

「そんなヘッピリ腰では、レベルなんてあがらないんだぞ!」


この兄妹はいつもの通りである。


「そんな事を言われましても、私、この歳まで一度も王城から出た事が無かったんですの。急に戦えと言われても怖いのですわぁぁぁぁ」


言っている傍から、オークはやってくる。


俺達の最初の戦闘は、クロが倒したワイバーン。しかも押さえられ身動き出来ない敵にひたすら攻撃をするだけの簡単な作業で、あっけなく達人クラスの強さを手に入れた。


それに比べたら、今回のレベル上げはかなりハードではある。


お茶会の席で、皆で次は何処に行こうか?

と、話していた時の事であるが……。


「当然、私もついて行きますの!」


メテオラのこんな発言から端を発し、改めてステータスを確認。

もうね、幼児と変わらないステータスで、戦闘なんて無理ですから!


タマちゃん?

だってタマちゃんは一度も戦闘に出してないし、常に馬車待機。もしくはクロの監視付きだから問題は無かった。


でも、流石に2名も待機じゃ、何かあった時に護りきれるか分らない。

そんな事から、今回のパワーレベリングへと相成ったのである。


魔獣を、押さえつける代わりに、俺が両足を切断し、転がっている魔獣に、ただ槍を突き刺すだけの簡単な作業の筈が、冒頭に戻る。


槍を突き刺そうと、近づいた時に足を掴まれた様だ。


「槍を突き刺すと、ぐにゅってしますの!ひゃぁぁぁー」


一々、こんな調子であった。


「お前、そんな調子じゃ、一緒に行けないんだぞ!」


確かにそうだよな。

これじゃ、1匹倒している間に周りを魔獣に囲まれてしまう。


「そんな事いわれましても、困りますわぁぁぁ!」


まぁ、それでも確実に、1匹1匹倒しているからその内、強くなれるでしょう。

さて、気になるメテオラの現在のステータスだ。



●名前  メテオラ・アルステッド

・種族  人族

・種別  女

・家族  アーノルド(父)イザベラ(母)アレフ(兄)ローラ(妹)

・職業  アルステッド国 第一王女 コータの第一婦人候補 

・LV  10

・HP  105

・MP  195


・得意技  絶叫 突き

・属性   光 水


・称号  病弱王女 コータの嫁


まだ結婚してないのに、何故か嫁扱いである。


「さぁ、まだ始まったばかりだからどんどんいくよ!」

「少し休みたいですわぁぁぁ」




「なぁヘメラよ、これ、本当に大丈夫なのかのぉ?」

「あんなヘッピリ腰じゃ、時間かかりそうなんだぞ!」

「そうよのぉ」



兄弟揃って、のんびりまったりしていると、急に目の前に突風が吹きバシィ!と空間が割れた音がして、また奴が現れた。



「やぁやぁ、兄妹揃って仲がいいね、まったく羨ましいじゃないか!」

「む、何の用じゃ?」

「お前なんか、お呼びじゃないんだぞ!」

「相変わらずだねぇ、二人とも。僕は、とても楽しくて仕方が無いんだよ。まったく、愉快爽快炭酸水ってのはこの事だね!」

「お前の話は、分り難いんだぞ!」

「まぁまぁ、そう言わないでさ――僕は、今日はとても機嫌がいいんだよ。だって、街の名前がアイテールだよ。人間に真名までばれちゃって、街の名前にされちゃうなんてもうね、爆笑ものだよ――あ゛ぁははははははは、本当に君達は僕を笑い死にさせる為に帰ってきたのかい?」

「兄様を、馬鹿にするのは許せないんだぞ!」



ヘメラが尻尾で攻撃するも、実態が無いのか素通りした。


「ヘメラ、僕に、そんな攻撃当る訳が無いじゃないか。まったく、君達兄妹は楽しいね――あの少年が、人を殺さなければ僕が人間を許すと思っているのかい、僕の失望は深いよぉ。どこまで出来るのか見ものだね――所で、次は西へ向うといいよ。きっと楽しくなるからね!」

「お前の言うことなんか、聞かないんだぞ!」

「西に、何があるのだ」

「さぁね!行ってみれば分るんじゃないかな」

「さて大笑いさせてもらったし、僕は失礼させて頂くよ。じゃまったねぇ!」


創造神は、好き勝手、言いたい放題いって帰っていった。



ちなみに、創造神が来ていた事は、コータもメテオラも気づいてない。何か結界の様なもので、遮られていたようだった。


「西か、創造神の言う通りにするのは、気が進まんのだがのぉ」

「兄様、決めるのはコータなんだぞ!」

「それもそうじゃの」


そこへ、丁度コータとメテオラが戻ってきた。


「なぁクロ、この辺にもっと強そうな魔獣とかいないかな?」

「居ることはいるが、その娘で大丈夫かのぉ?」

「何ですの、今までのは弱い魔獣だったんですの?」



その後も、パワーレベリングは続き――夕方になってようやく、

メテオラの初体験は終了した。

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