第21話個人面談

娘達のステータスを見た感じだと、属性っていうのはどうやら――。

その属性が点いている属性の魔法がより伸びる余地がある?

と解釈している。

 何故って?

だって夕方に暗くなったんで明かりの魔法でも覚えようかな?

――と言ったイアンが何気なくイメージしただけで、

頭の上に明かりが灯ったんだもん。

ステータスには炎、土、風の3大属性が記載されていたのに――。光属性のライトが使えたんだよ。

これはただ単に覚えやすいのが記載されているのか?

それともより強力な効果が現れる魔法が表示されたと思うしか無いよね!


 これから冒険に出るに当り、回復魔法とか使える人は多ければ多い程いいじゃん!

回復系はRPGの基本でしょ!

表示された属性だけしか使えなかった場合は、アルテッザとポチしか回復魔法は使え無い事に……。

だけど今回イアンが光魔法を使えた様に他の2人も回復魔法が使える様になれば、チーム構成に幅が出来る。

まさに組み合わせ自由じゃん!


いやぁやっぱり痛いのとか危険なのとか――。


嫌でしょ?嫌だよね?


 ヘタレだ、何だと言われても現代日本で育った俺には痛いものは敵です。

いや、だからクロさん。そんな視線で睨まないでくださいよ――。

俺Mじゃないんだからさ!


 皆が確実に魔法を覚え始め漸く楽しくなって来た事は嬉しいんだけど……。

一応ステータスを覗いちゃった手前、

ちゃんと話しておかないといけ無い事も出来た訳で……。

あのステータス覗き見事件、から3日経過した昼食の後に一人馬車のなかで二者面談?

実際はクロもいるから3者か?

面談する事にした。


 まず、最初はアルテッザからだ。

急に面談するとか言われ――。

緊張しながら馬車のドアをノックするアルテッザ。


「どーぞお入りください!」


 あーこの面接のようなシチュエーション一度やってみたかったんだよね。

何を言われるのかと緊張気味で少し頬の肉を、引きつりながら室内に入ってくる。

俺の目の前にきた所でかけたまえって言ってやるんだ――。

むふ、と思っていたら後ろからクロにど突かれた。

台無しになっちゃったんで、どうぞ座って!

――とアルテッザを対面のソファーに座らせる。


「なんの話でしょうか?」


 まぁアルテッザの素行は特に問題もないし……。

どちらかといえば常識人でそつが無い。

心当たりはなくて当然だよね!

俺は素直に皆のステータスを、覗いてしまった事を説明し謝る。


「あーそれで最近のコータさんの様子がおかしかったんですか?」


 えっ?そんなにおかしかった?

普通にしているつもりだったんだけど――。

そう言うと……。


 「バレバレじゃないですか!コータさんって普段から女性を見つめたり、殆どし無いじゃないですか?それが最近はよく見つめているというか――。その子の頭の上の辺りを直視していますよね?」


あちゃぁステータスの表示される場所までバレてるじゃん!

女は男の視線に敏感って本で読んだけど……本当だったんだね!


「でも別にコータさんや皆さんにならそのステータスですか?見られても私は構いませんが……」


 OH!ステータスで胸のサイズまで見ちゃっているんですか!

と責められたポチとは大違いだな。

いかん。これでは話が進まない。


「それなら良いのだけど……。実は見えているステータスにその人の家族構成も表示されていたんだよね」

「コータさんはうちの家族に会っているから別に何も問題はないのでは?」

「そうなんだけど……実は……」


オフィーリアさんに赤ちゃんが出来ていて、それが双子で性別は男女だと説明すると――。


「本当ですか!私にも弟と妹が……」


 すごく嬉しそうに、これで商会を継が無くても良くなりそうですね!と。

なんだよ!商会継ぐ気満々じゃなかったのか――。

そう聞くと……。


「商会を継いだら政略結婚だ、会計監査の勉強だ……。他にも商取引だ。勉強漬けの毎日なんですよ?」


 そんなの父を見ていたら大変なのが分かりすぎるでしょうと、朗らかに笑いながら言った。


「これで晴れて自由の身ですね!」


 話はそれだけですか?

教えてくれてありがとう!と、礼まで言われた。

アルテッザは次のポチを呼んできますと言って馬車から出て行った。

これが一人っ子の重圧なのか?

俺も一人っ子だったけどそんなの感じなかったぞ……。


「男と女の違い、また性格の違いもあるしの」


と、肩に乗ったクロが言った。

 解せん。


さて気を取り直して次の方お入りくださいと、扉に向かい声をかける。


「じゃ失礼しますだに!」


そう言って入って来たのはメロンカップのポチだ。


「何でもこの前の胸のサイズが分る魔法の話だとか――」


 なんか嫌らしいものを見る様な視線でそんな事を言ってきた。

もういいから……そこから離れようよ……。

ほんと。その視線痛いから辞めて。

胸にグサグサ刺さるから。


「近いけど全然違うから!」

「胸の話じゃないだに?」

「うん、まったく違う」


 なんかホッとしているし。

美肌美人のポチにそこでホッとされるのも男としてどんなんだろ――。


「じゃ何の話だに?」

「この前見たステータスで分かった事を説明するね。まずわかったのはポチの家族が生きているって事」


きょとーんとしながらこっちを見ている。


「前に村が盗賊に襲われて全滅したって言っていたでしょ?」

「確かに言っただに」

「だからタマちゃんが生きているって知らないんじゃないか?と思って」


思っていたんだけど。

――と話を続ける前にポチから。


「タマが生きているって言うんだに?」

「うん、俺のステータスは家族がみんな死んでいれば天涯孤独って表示された筈なんだ」


実際にホロウの表示はそうなっていた。


「だから確実に、今現在、タマちゃんは生きていると言えるんだよ」


ポチの漆黒二重の瞳からポタポタ涙が零れ落ちる。


「うっぐ。ぐすん、ぐすん……」


泣き止むのを待つか……。


しばらくして漸く話し出した。


 「あの盗賊の襲撃の時に、村で一番小さいタマだけは助けようと村長さんが家の隠し部屋に押し込んだんだに。でも私が捕らえられた時には、村長さんの家は業火で燃え盛っていて。てっきりタマは死んだと――」


 あーまた泣き出しちゃった。

仕方無いけどね。

俺だってあの病院で死体を見た後で――。

実は別人でしたって言われたら号泣する自信あるもん。


「でも実際は生きていたじゃない!良かったね、ポチ」

「う゛ん、よがっだだにぃ」


顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながらよがった。

本当によがったと嗚咽する。


なんか……俺まで泣きたくなってきた。

また少しして今後どうするか確認する。


「それでポチはどうしたい?今はみんなでパワーレベリングしているけど、まだタマちゃんと同じ国内だよね――。タマちゃんを迎えに行きたい?もし迎えに行くなら俺達も付き合うけど」


そう告げると俯き加減だった顔をハッとあげて真っ直ぐ俺に視線を向ける。

決まりだな、答えを聞かなくてもポチの視線を見れば分かったさ。


「もちろん、タマを迎えに行くだに!」


 じゃすぐに出発しよう!

まだ面談をしてない娘が二人いるけど善は急げ――。

これで万が一にもタマちゃんに、何かあったら俺自身が後悔しそうだ。


「じゃポチ、みんなを呼んで来て。すぐ出発するってちゃんと伝えてね!」

「分っただに!」


さっきまでの泣き顔が、嘘の様に晴れやかだ。


皆が何事――。と言いながら戻って来たので、ポチの事情を説明し皆の賛同を得る。

皆、似たような境遇に遭っているから協力的だ。


謎だらけのホロウの事や、イアンの母親の事も気になったけど、優先順位的にまずはタマちゃんの捜索だ!


俺達の乗った馬車は、来た道を戻りだした――。

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