第10話出発
朝を向かえ天候も良かったので、
山を降りて街に向かう事になった。
ずっとクロの頭に乗って旅をするのもいいが――。
あまり大勢の人に竜の姿が目撃されるのはやはり、
問題があるらしい。
中型サイズの竜の姿に変化すると、
4人の娘たちが一瞬息を呑むのが伝わってきた。
前もって話してあったからこの程度で済んでいるが……。
所見で出くわしたら――。
完全に死を連想し、世界の終わりすら想像するかもしれない。
「クロ様、素敵です!」
そう言っているのは――。
脳筋の狼の獣人のホロウで、髪は腰まであるロングで色は黄金色。
耳の毛先と尻尾の毛先だけ真っ白で……。
とても綺麗な深紅の瞳で奥二重の美人さんだ!
背の高さは俺と変わらない155cm位。
スラリとした細身の体躯に、控えめに出る所が出ている。
昔、父さんが見ていたアニメで一人称で自分を、わっちと呼んでいた狼の少女の様なイメージだ。
ボケーっと口を大きく開けて眺めているのは、犬獣人のポチだ。
ポチは真っ白な肩までのショートヘアで、耳も尻尾も真っ白だ。
美白肌の少し丸顔で、瞳の色は肌とは対照的な漆黒で二重――。
とても可愛い少女で身長145cm。
現代日本で飼われている犬で例えればスピッツに似ているが……。
女性の象徴はかなり大きいメロンでも入っているのだろうか?
メロンでも入っているのだろうか?
大切な事なので2度言いました。
獣人は耳と尻尾があるだけで顔に毛は生えて居ない。
仲良くなれたら是非ともモフりたい!
「こんなに大きな竜は伝説の中でしか聞いたことはありませんよ!」
そう言っているのは、博識な商会の娘でアルテッザ。
髪の色は茶髪でポニーテールにしているが――。
それでも肩まで届いている為、コータの予想では多分ロング。
小顔だが目が大きい二重で、琥珀色の為にアニメ顔か!
――と呼んでしまいそうになる。
体躯は細身。出る所は……言わぬが花。
身長は俺より少し高い位で恐らく160位だろうか。
口を強く引き結んでぶるぶる震えているのは――。
魔法師のイアン。
髪の毛がマニッシュショートの栗毛色で小動物を彷彿させる小顔。
目は小さめで、瞳の色は綺麗な翡翠色。
ほっそりとした体躯で身長がアルテッザと同じ位の160cm。
可愛いアニメ声が印象的で……。
女性の象徴はポチ程では無いが、それなりに大きい。
普通に見た感じドジっ子キャラに見える。
クロのサイズが大きくなればなるほど――。その身から放出する魔素量も大きくなり、魔法師などの素養があるものにはその強さが分かる様になるという。
だからイアンにはクロの格が理解出来るんだね。
これで大型の本来のサイズになったらどうなるんだろう。
――放送禁止になりそうだ。
このままクロがこのサイズでこの山で暮らしていたら……。
ピクシードラゴンが確実に生まれる事だろう。
「さてそろそろ旅立とうではないか!」
クロが気を利かせて、翼を階段代わりに俺達をその背に誘う。
5人だとこの方が、クロが楽なんだとか……。
軽い助走の後一気に上空に向けて羽ばたく。
3日過ごした湖と洞窟が一気に小さくなっていく――。
ここでも歓喜の声をあげているのは、ホロウとアルテッザだ。
ポチはジッと、小さくなっていく湖を見ている。
そんなに湖の魚が美味しかったんだろうか……。
イアンは、高い所が怖いのか目が涙目になっている。
クロの背中は魔法によって――。
風圧や気圧による気温低下の影響を受けない。
間違いなく高所恐怖症なんだろう。
雲の上に出ると先程まで見えた山や湖の景色は雲海に変わる。
ポチも最初はずっと下を眺めていたが――。
雲海に飽きたのかこちらに視線を投げかける。
「凄かっただに!大きな山が一気に小さくなって行っただに」
興奮しながら――それぞれ思った事を、言い合っていた。
クロ、何処までこのサイズで飛ぶの?
最初はアルテッザの商会のある街だよね?
「そうじゃが?」
こんな雲海の上に出たら、街の場所分からないんじゃ?
「む……」
娘達に良い所を見せ様と、意気揚々と調子に乗って高度を上げたらしい。
意外とお茶目なのか!
クロは俺達を乗せたまま、サイズを小サイズに変化させた。
一気に高度を下げる――。
女の子達は、きゃぁきゃぁ言って盛り上がっているが――。
イアンは……どうやら気を失ったらしい。
高度を下げると湖が西に見える。
今度はちゃんとトーマズの街に向かっている様だ。
「早いですね、もう商隊が襲われた辺りまで来ましたよ」
「アルテッザの商隊はこの辺で盗賊に襲われたんだ?」
「ええ、そのはず筈です。目の前に3本の大木が見えるでしょ?ちょうどあの大木の辺りは丘になっていて、盗賊がそこに隠れていて道の前後から挟み撃ちに……」
「一度、降りてみようか?」
「いえ、平気です。きっと、もう何も残っていませんから。誘拐されてから1月は経過しているんで、何か目ぼしい物があっても拾われていますし――護衛の皆さんや商隊の仲間で、お亡くなりになった人の亡骸も既に埋葬されているか、最悪はアンデットになってしまっていますから……」
寂しそうに、そう言っているアルテッザだが……。
気丈に振舞っているだけにも見える。
「ちょっと降りてみようか?!」
「うむ、承知した」
もしかしたら何か、遺品でも見つかるかも知れないしね!
3本の大木の根元近くに降り立ち――。
俺達は5人で道の周囲を隈なく捜索したが……。
アルテッザの言っていた様に、
馬車の燃えた残骸らしきものは残されていたが――。
遺品らしきもの、亡骸は一切無かった。
やっぱり何もありませんでしたね。
――と、言うアルテッザに申し訳なさを感じながら昼食の準備をする為。
焚き火用の落ち葉を集めていると……。
落ち葉の下から光るものが見えた。
手に取り良く見ると円形の金で作られたペンダントで裏には紋章が――。
この紋章、どこかで……。
あっ洞窟で盗賊のお宝を探していた時のアルテッザの商会の紋章だ!
急いでアルテッザを呼ぶ。
「アルテッザ、こんな物が落ちていたんだけど……」
ペンダントを受け取った、アルテッザの瞳からボロボロと涙が溢れ出す。
何か大切なものだったんだろうか?
そう思っていると……。
アルテッザの口からパパ――。と嗚咽交じりの震えた声が微かに聞こえた。
しばらくアルテッザをそっとして置いて――。
皆で焚き火を囲んでいると、
丁度、塩味で味付けした干し肉と野草と小麦の鍋が出来上がったタイミングでアルテッザが俯きながらトボトボと戻ってきた。
「取り乱してしまいすみません――。あのペンダントは父が肌身離さず大切にしていた物で、母と結婚して商会を立ち上げた時に記念として王都の有名な彫金師に作って頂いたものなのです。あれがあそこに在ったという事は ――――父は死んでしまったのですね」
父の最期を見てないので商会まで辿り着けば――。
ひょっとしたら父に会えるかもしれないと、そう思っていたそうだ。
ご遺体を見つけた訳では無いからまだ決まった訳ではないと言うと……。
「このペンダントは父の首にかけられていた物で首を切り落とされでもしない限りは落ちる訳がないんです!」
――と反論された。
そういう事情なら、確かにそうなのかも知れない。
確かにペンダントは切れて無かったのだから……。
湿っぽい空気の中で味気ない鍋を食べた。
「街まで馬車ならここから1週間の距離ですが、クロ様の先程の速度なら半日もすれば着いちゃいますね」
しんみりした空気を払拭しようと、明るくアルテッザが振舞う。
「街までは飛ばぬぞ?」
クロからは前から言われていたが、さすがに街の近くまでは――。
小型サイズでも接近は出来ない。
オウムサイズなら平気だけどね!
もしも見つかってしまったら――。
確実に王都から軍隊や勇者が、派遣されてくるだろう。
「そんな訳でせめて暗くなってからか――。街から馬車で1日位は離れた場所でしかも街道の外れまでだね」
「そうでしたね。洞窟で聞いていたのに、家が近づいて気が逸っていたみたいです」
――と微笑みながら言うアルテッザだったが。
それがやせ我慢であって、気丈に振舞っているだけにしか見えなかった。
でも俺にしてあげられる事なんて無いし……。
無事に送り届けるだけだな。
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