第3話 イネちゃんと、ハーレム主人公さん
「ほほいのほい」
飛びかかってきた狼さんを横に飛んで回避したイネちゃんは、その勢いでマントのアタッチメントに固定してたP90さんを抜いて狼さんに発射!フルオートだからちゃーんと指切りして余計に弾は使わないように気を使う。
突然な出来事にも残弾を気にすることができるイネちゃんは冷静沈着な女の子!最初に襲ってきた狼さんに止めの一撃を撃ち込みながらも、周囲にいる他の狼さんの数をかーくにん。
「ひのふの……たっくさんだぁ」
これはイネちゃんが3つ以上の数が数えられないわけじゃないのよ、実際狼さんの気配がたっくさんイネちゃんを囲んでいたのだ。
これはまずいかなぁと考えつつ、イネちゃんは背後から襲われることを避けるために近くのお家に背中をピッタリつける。
できればもうちょっと狼さんが襲ってきそうな範囲を狭めたかったけど、それができそうな場所まで移動するのは流石に許してくれなさそうだったので諦める。
だってこの狼さんたち、イネちゃんのことを一定距離を保ちながらたまーに牽制してくるんだもん、狼さん頭良すぎないかなー。
襲撃方向を一方向に限定していれば、イネちゃんの装備なら問題なくさばける数な気はしてるんだけど、それもさせてもらえない気がするの。
「イネちゃんは可愛いから、美味しそうに見えるかもだけど……多分美味しくないよ!」
イネちゃんが叫ぶと狼さんはそんなことお構いなしで数匹が同時に飛びかかってきた。
P90を構えてる右側から正面は、イネちゃんは難なく対処するけど、流石に三方向からの同時攻撃に、左側の対処がP90だと間に合わない!
でーも、そこはお父さんたちから鍛えられたイネちゃん。ここには人間がイネちゃんしか居ないんだしおぱんつ見えても気にしないないで狼さんのお腹をキーック!イネちゃんの体制が少し崩れるけども、左太ももにホルスターを巻いてしまっておいたサイドアーム、ファイブセブンちゃんの出番なのである。
蹴り上げた左足に左手でファイブセブンちゃんを抜くと、蹴り上げた足を下げつつ狼さんに弾をプレゼント、2発を胴体で止めに頭に1発。
ちょっと残酷かな、とも思うけどこれはイネちゃんが狼さんのご飯になるかならないかの戦いなんだから、ごめんなさいと思いながら止めを刺すのだ。
流石に今の同時攻撃をさばかれたことで狼さんが動揺したのか、気配が少し遠くなる。
「それでもー……まーだ多いよねぇ」
イネちゃんを囲むようにしている狼さんは、まだ二桁くらいいそうな感覚。
お手製のグレネードを使うにしても固まってくれなきゃ、お鼻の凄い狼さんのほうが有利なくらいの砂埃が舞ってイネちゃんが美味しく頂かれちゃう可能性が高くなる。
P90の残弾は十分だし、ファイブセブンちゃんも標準マガジンの20発、3発撃ったから残り17発で十二分。もちろん即座にナイフに切り替えられるように、ちょっと大きめのナイフさんは左胸あたりのアタッチメントに保持してる。
イネちゃんとしては、左胸のアタッチメントがこれっぽっちも締め付けられる感覚がないのに少し泣きたい気分にもならなくもないけど、こういう状況だとむしろ抜刀速度が出てありがたいのである。
「さーてさて、どうしたものかなー……」
膠着状態はイネちゃんとしては避けたいのだけど、うっかりグレネードとかもできず、牽制で何もないところを射撃する余裕は……あるにはあるけど飛びかかられた時の反応が遅れちゃうかもしれないからあまりやりたくない。
こーんなピンチな状況でも冷静に判断できるイネちゃんはカッコ可愛いのだが、流石に数分以上神経を使うやりとりはやりたくないかなーと思った時、突然町のある方向の、狼さんの気配を感じていたあたりで爆炎が巻き上がる。
それと同時に砂煙が舞って……あーもうめちゃくちゃだよ!
そう思ったけど狼さんとしても予期していない出来事だったみたいで、慌てて気配が遠くなるのを感じる。
でーも、気配を殺して獲物を狙う肉食の野生動物は多いんだから、イネちゃんはまだ警戒を解かないのだ、これは当然で常識だよ!
「大丈夫か!」
イネちゃんが警戒状態のままでいると、爆炎が立ち上がった方向からなんともイケメーンなオーラを纏った叫び声が聞こえた。
イネちゃんは逆方向を警戒しつつ、声のしたほうに視線を向けると……。
びっくり!女の人を3人も連れたイケメンさんが小走りで近寄ってきた。
でもでもイネちゃんはちょろくないので、ここで素敵!抱いて!なんてならないのだ。
「誰!?」
ここは舐められないためにもイネちゃん、怒気を含んだドキドキな問いで返すとイケメンさんが少し距離を開けて止まる。
だーけど……。
「あなた!助けてもらったのにその態度は一体なんですの!」
「もう少しで狼のランチだったのです!」
「全く、これだから人間族の小娘は……」
イケメンさんのお連れさんによる総バッシング!ひっどいよねー。
まぁ助けてもらったんだろうとはわかるし、イネちゃんとしても結果おーらいで助かったから感謝はするけど。
「ごめん、ギルドの受付でこの村周辺の治安維持の依頼を受けてきたんだ。村に着くと同時に狼の鳴き声と何かの破裂音が聞こえたから……」
このイケメンさんは、下心とか見えにくいけど発言もイケメンさんだった。
丁寧親切に対応されたのなら、イネちゃんも同じように対応する。
イネちゃんは大人なのだ。
「うん、でも爆炎はちょっと危ないかも。狼ならお目目よりもお鼻で……」
そこまで言いかけたイネちゃんは、イケメンさんの後ろで動く残っていた狼さんに気づいた。
もちろん、まだ警戒を解いていないイネちゃんは右手に持ったP90を構えて狼さんを狙撃!イケメンさんを守って助けてもらった恩をすぐさま返すのだった。
でーもでも、すこーし予想はしていたんだけどー……。
「ちょっと貴女!いきなり何をするの!」
「恩をアダで返すつもり!」
「これだから人間の小娘は……」
最後の人、同じセリフしか言えない村人Aさんなのかな?
ただこの罵倒は直ぐに謝罪に代わるのが理解できるので、イネちゃんは落ち着いてP90の残弾を確認。なくなっていたからリロードをするのだ。くーかっこいい!
イケメンさんは後ろを確認してたみたいで、驚いた顔でイネちゃんを見ると。
「君の言った通り、狼が砂煙の中にいたんだね……助けてくれてありがとう」
このイケメンさんは心までイケメンなのでしょうか。
ただ状況判断を正しくできる人の気もしますが、イネちゃんとしてはとりあえず信用するだけの材料にはなるのです。
周囲に狼さんの気配を感じないことを確認してから、P90をマントに、ファイブセブンちゃんを太もものホルスターにしまって警戒を解くと、イケメンさんが自己紹介を始めた。
「僕の名前はヨシュア、ギルドで依頼を受けた冒険者だよ」
イケメンさんはヨシュアさん、イネちゃん覚えた。
「イネちゃんはイネちゃん。よろしくなのですヨシュアさん」
右手で握手を求められたのだからイネちゃんも右手で握手!……すると。
「……私はキャリー、人間族」
「むぅ……私はウルシィ、人狼族だよ」
「この流れ、
となんだか歓迎されない感じに自己紹介された。
しかしなんというかこのヨシュアさん……。
「チート系ハーレム主人公だね!」
(助けてくれてありがとう!)
イネちゃんはヨシュアさん以外にドン引きされたのだった。
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