scene85*「束縛」
私の彼氏は、束縛男。
【85:束縛 】
出かける時も何処に誰と行くとか事前報告しないと怒るし、
メールしてれば「誰?」とか聞いてくるし、
連絡つかないとしつこいし、
正直そういうの重いんだよね。
というわけで最近の私のクセはため息だ。
しかもさ!私が同じ事すると怒るし何なの?甘ったれもいいかげんにしろ!!
べったりってホント疲れる。
普通にしてれば他は全然オッケーなんだけどな。それさえなければねぇ……。
「どうした?なんか嫌な事あった?」
「……なんでもない」
その原因は隣で歩くあんただ、あんた。そう言いたいのを堪える。
私の彼氏は普通にしてる時は結構気配り屋で優しいし明るいし、意外と男らしいほうだし、こうして一緒に帰るときも車道側歩いてくれるのだけれど……。
「ねぇ」
「ん?」
「明後日の連休、あたし連絡つかないかも」
そう言うと、ギョッとした顔。きたきた。これだよこれ。さて、次はあれが来るぞ。
「え?なんで?どっかいくのか?誰と??」
きた────!質問攻め!
私が出かける度いつもこうだ。
事後報告なんかにすると、2日くらいヘソ曲げてむくれて話をしない。
本当にそれだけが唯一面倒臭いし、こっちはご機嫌とりに疲れてしまう。
それが愛情の大きさなの!って言われたってこっちとしては釈然としない。
もっと大人になってほしいんだけどなぁと心の中で盛大なため息をついた。
「おばーちゃんちに家族で行くの!ちなみにど田舎で圏外」
「あぁ、そうかぁ」
ホッとした顔に、どっと疲れが出る。私は思い切って言ってみた。
「ねぇ」
「んー?」
「あたしのこと、そんなに信用ならないの?あたしが他の人のとこに行くって思っちゃうの?」
「は?なんでいきなり」
「だってコウちゃん、あたしが出かけるとき、いっつも報告いれないと怒るし、どこか行くって言えば、どこいくの?メールを誰かとしてるときでもすぐに、誰とやってるの?って。そんで私がそうするとなんか嫌な顔するしさ。
あたしだって、あたしの付き合いあるし、事情あるし…。それにあたし、コウちゃん以外とは、メールするほどそんなに男の子と仲良くないよ」
「ちょ、なに怒ってんだよ」
その一言で、 キ レ た 。
「そういうトコ!!!あたしのこと好きだとか言う割には、全っ然あたしのこと考えてくれてないじゃん!もういい!!ばいばい!」
私は勝手にキレて、勝手ついでにもう帰ろうと思って、足早に歩き出した。
そしたらコウちゃんは、追っかけてきて私の肩をグイッと掴んだ。
その力の強さに思わず顔が歪む。
「痛いよ、コウちゃん!」
「ご、ごめんって!」
「なんのゴメンだかわかってるの?あたしが怒ってるからって、只のこの場の空気に対してのゴメンとかだったらマジ怒るよ?」
「何処行くのとかっ、いちいちうるさくてごめん……!!」
コウちゃんの初めての謝罪に、せっかくだからコウちゃんの話を聞いてやろうと思った。
私たちは向き合って、肩を掴むコウちゃんの力は弱くなった。
コウちゃんは気まずそうに、けど申し訳なさそうにモジモジしている。いや、モジモジされても許さないけど。
言いにくそうにしつつも、束縛の理由をぽつりぽつりと話し始めた。
「自分でも、わかってんだけど……ごめん。ホントに。でも、わかってるけど、誰かと仲良くしてるの見ると……なんか嫌なんだよ……」
理由になってるんだかなってないんだか。
そんな風にザックリ言われたってこっちとしてはますます腑に落ちない。
なんか嫌なら疑ってもいいわけ?事情とか考慮するのが大人ってもんでしょうが。
私はイライラを隠せずに言った。
「でも、あたしはあたしの付き合いがあるって言ったし、あたしはコウちゃんだけ好きって言ったし、思ってるけど、人間関係の付き合いはコウちゃんだけじゃないんだよ?それはコウちゃんも一緒でしょ?コウちゃんだって友達と遊んだりするじゃん!なのになんで……あたしばっかり。あたしはね、それが嫌なの」
お互いが対等になりたいから。どっちかが、どっちかのせいで動けないってのは違うよ。
「わかってる……けど俺の知らないマユがいるのが、なんか……マユのこと全部知りたくなっちゃうんだよ。マユ、可愛いから。もし他の奴に……」
「そんなに疑われなくたって、あたしは離れていかないのに。だってあたしはコウちゃんだけしか見てないんだから」
コウちゃんの言葉を遮って続けた。
「それとこれとは、違うでしょ?だからさ、それは安心してよ。お願い。あたしのこと、そんなに信じられない?」
コウちゃんは首を横にふった。私はコウちゃんの手を握る。
本当に叱られた子犬みたいな顔しちゃって……。もう。
「でも、今度からは気をつけてよね。自分がされたら嫌な事って、嫌でしょ?それを、好きだからって無意識にでも強要はだめだよ。だからあたしはコウちゃんには、どこに行くの?とか何日何時に誰と何をしてたの?とかしつこく詮索しないでしょ?わかった?」
そう念押しして言うとコウちゃんは救われたみたいな顔をして
「マユ……ごめん。ずっと嫌な思いさせてて。今度からは本当に気をつける」と情けなさそうに言った。
まぁ、これで分かってくれたなら嬉しい。
こんな顔されちゃ、しょうがない。
何だかんだで彼氏に甘い自分に呆れつつ、私はにっこり笑った。
のだけれど……。
その日からは、 コウちゃんのメールは疑う内容はないものの、四六時中愛を囁くような内容へチェンジしたのです。しかもすんごいマメに。返事しないと拗ねる顔文字付きで。
「あぁもう、わかってないじゃん!!!!」
徐々に気をつけてくれるのかしら??
私の彼氏は束縛男。そしてとんでもなく女々しい。
正直、子供です。おっきいこども。
ほんとに困っちゃう。
それでも離れられない、私のこれからの未来が我ながらだいぶ心配なのであります。
( 惚れてる弱みなのでしょうか? )
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