scene80*「片思い」
いい加減、俺んこと好きになってよ。
通学電車で一目惚れをした彼女は、年上の女の子でした。
【80:片思い 】
何とか接点を持って友達ポジションまでたどり着けたのは、彼女を電車で見かけて2ヶ月目のことだった。
そして今はだいぶ親しくなって更に2ヶ月が経った。
本当は友達以上に思って欲しい事、彼女はわかってるんだろうか?というか、あんなに可愛いのに年上なんてありえなくね?
「じゃー映画も見たしゴハン食べよっか」
「あ、俺こないだ良いとこ教えてもらったんだ。そこ行く?」
「うん、行こう行こう!」
親しくなってから2ヶ月毎日メールもするし電話もするし、休みの日は2人で出かけたりして、今日も何回目かのデートだ。(デートと思いたい!)
俺もそういうふうに見てもらえてるって思っていいのかなぁ?告白しても大丈夫かなぁ?って思うんだけど、なーんか俺の事、いつまでたっても年下扱いなんだよね。
ぶっちゃけサヤカさんのほうが、俺より背ぇちっさいし(152センチだって!俺と23センチ差!)顔もすごく童顔で、俺より子供っぽいというか……本当に可愛い。
やることなすこと言う事全部可愛いのに、俺といるときは年上ぶるのが好きみたいだ。
サヤカさんも一緒にスポーツ観戦行ったりとか台場行ったりとか、一緒にいてすごく楽しそうにしてくれてる。
正直、すごく良い雰囲気だなって思う時あるし、これもどう考えても普通に「デート」だと思うし、俺もすごいアピッてるつもりなのに若干「ただの友達」って感じで止まっている気がしてならない。
「リュウタくん?どしたの?なんかさっきから、ボーっとしてない?体調悪いの?」
そう顔を覗き込まれて我に返る。
ゴハン食べてる途中、彼女はパスタのフォークを持ったまま止まっている。
俺はしまったと思って 「ごめん。そういうわけじゃないんだ。」と謝った。
サヤカさんは不思議そうな顔をした。
「……?……大丈夫ならいいんだけど……ゴハン食べたら今日は早めに帰る?」
そんな言葉にすごく焦った。
そんなことは絶対にしたくない!!
「いや、いいっす!!全然ヘーキだから!!」
「え、でも嘘って顔に書いてあるよ」
「えぇっ!!?」
「嘘だよ」
そう言ってサヤカさんは笑った。
うっわぁ~。こういうとこがもうダメ。可愛くて、ダメ。
普段のちょっと困ったように笑う仕草とかホントに好きで、色白な肌とか、華奢な肩とか、形のいい耳とか、女の子らしい手とか、彼女を彩るパーツが全部好き。
本当に一目ぼれってあるんだなぁって思ったくらいに。
俺はパスタをたいらげで、いつもの様に他愛ない事を喋ったりした。
だから、そろそろ好きって言ってもいいんじゃないか。
なんかそう思ったんだ。今日に限って。
「今日もありがと。楽しかった!また遊ぼーね!」
「また誘うから」
「また連絡するね」
「うん」
「ちゃんと勉強すんのよ。高校生!」
俺は笑顔を作ったけどそのうらで胸がちくり、と痛む。
高校生って大学生から見たら、そんなに子供ですか?
高校生と大学生は、釣り合いませんか?
「サヤカさんに心配されなくても!」 って強がって笑うと「生意気だな~」と返された。コロコロと変わる表情に何だか切なくなる。
「ねぇ、サヤカさん」
「なぁに?」
「サヤカさんは、俺の事年下扱いするけど、どうして?」
言うつもり無かったのに、気がついたら口が勝手に動いてた。
自分でもびっくりしたけど、勿論サヤカさんはもっとビックリしたようだった
「リュウタ君、どうしたの?急に」
「俺、本気なんだけど、答えて?」
気まずくなると分かりつつも、追及すると黙りこくってしまった。
俺が真剣なのを感じとって、サヤカさんはちょっと考えてから伏し目がちにして言った。
「……やっぱリュウタくんは高校生だし可愛いし」
「答えになってないよ。年下扱いされるってことは、俺はサヤカさんにとって男じゃないの?」
ばつの悪そうな表情から一転してハッとして彼女は顔をあげた。
サヤカさんが動揺しているのが分かる。それでも俺は気持が収まらなくて、
「…もう気づいてるんでしょ?俺の気持ち。……サヤカさんが、好きなこと」
すかさず言葉を放った。
もう我慢できなかったし、言ってしまいたかった。
……こんな言い方、せっかくここまで上手くやってきたのに嫌われたかな……って思い始めた時にサヤカさんはぽつりと、頼りなさげにつぶやいた。
「……リュウタくんだってあたしのこと子供扱いしてるじゃない」
「え?」
今度は俯いたまんまで、真っ赤な顔になってた。
地面を睨んでいるような、でも泣きそうな顔にも見える。
「私のがお姉さんなのに、背が低いとかでリュウタくんのほうがよっぽど私のことお子様扱いしたがるじゃない!リュウタくん、ずるいよ……そんなこと言うの」
「いやいや!サヤカさんのほうが俺の事子供扱いしてるし!」
「だってそれは私のが年上だし!リュウタくん高校生なのに、あたしが甘えたら……」
なんかヤなんだもん。
そう言って唇を尖らせて、ますます俯いてしまった。
……やばい可愛い。
もしかして、年上だから意地っぱりってだけだった?
年上だから今までもお姉さんぶってたの?
「俺の事、好きなの?」
イチかバチか思わず確信をついてみる。そしたら、その一言で耳まで赤く染まった。
「きらいじゃないよ」
何その返し。
「サヤカさんの意地っぱり」
「あたし可愛くないもん。年上だし」
あぁもうタチが悪いとはこのことじゃねぇの?
「そういうとこが可愛くて、俺は好きなんだけど」
「お姉さんをからかわないで」
「お姉さん、じゃないよ。サヤカさんだもん。年下だとサヤカさんはダメなの?いや?俺は、関係なく好きだよ。好きなら好きで良いと思うんだけど……それだけじゃだめなの?」
「だって……あたしなんか高校生からしたらおばさんだろうし、学校にもっと可愛くて若い子いるでしょ」
「ちょっと待ってよ、おばさんって……!?2個しか違わないじゃん!」
意外な答えに噴き出すと、サヤカさんが本気で怒った顔をした。とうぜん全然怖くない顔だけど。
「違わなく無いの!重要なの!」
「年離れてるのが?」
「だって、取られちゃったらやだもん!」
はずみで出た言葉だったのか思わず口を塞いで驚いた顔してる。
あぁ、だんだん涙目になってる。
年上だの年下だの、もう可愛いんだからいーじゃんって思ってしまう。
これは絶対に惚れた弱み。
それよりも、もしかして俺、自惚れていい?
「誰に?」
「……だって……若い子には勝てないし…」……
「でも、それ決めるの俺なんだけど?」
「わかんないよ。年下のほうが可愛いってなってくるかもしれないよ」
「俺、実はさ、サヤカさんに声かける2ヶ月前からずっと片思いなんだけど」
「えぇっ!?」
知らなかったっしょ?ともう笑うしかなかった。
「4ヶ月もずっとサヤカさんに片思いしてる俺って、切ないと思わない?」
押せ。ここまできたんだから。
「いい加減、俺んこと好きになって 」
暫くの沈黙。
俺の心臓はやけにうるさくて、余裕ぶってるけど本当はすっげー怖かった。
「……ごめんね」
「えっ!!!???」
まさかのごめん宣言。
これは……失恋……?まじで?
俺イケそうな気がするー!って思ってたのに!
どこでミスった!?恥ずかしいぞ俺……!
しかし、違った。
俺が焦ってると、サヤカさんは続けてくれた。
「ごめん。辛い気持ち、させて」
そっちのゴメンなの!?
「……あたし、年上だからって、甘えないようにしてた。それに、付き合ってから高校生の女の子に取られちゃうかもって思うようになるのも嫌だった」
「でも、それはあたしがリュウタくんを好きだから思うんだよね。だけど、リュウタ君がそう言ってくれて……安心した」
「あたしも、好きです。ほんとはリュウタくんが好き。ずっと今まで不安にさせて……ごめんね……?」
そう言って、上目づかいで恥ずかしそうに、本当に申し訳なさそうにした表情がたまらなく可愛く見えて(というか今までで一番可愛い!!!) 俺は華奢で小柄な年上の彼女を思いっきり抱きしめてしまった。
駅前だし人いるしって思ったけど、それが一瞬にして吹き飛んだ。
それよりも今この瞬間が夢じゃないのを確かめたくなってしまったから。
「もう、俺の前では意地とか張んないでください」
「努力します」
さりげなく、俺の背中に回してきた腕がいとおしくてしょうがなかった。
ギャラリーがちらほらと集まっていたことに、我に返った俺たちがますます赤面したのはもうちょっと後のこと。
「実は、リュウタ君が声かけてくれた時から、ちょっと好みだった。へへっ……」
帰り際にそう言ってまた照れた彼女が本当に可愛くて、我慢できずにキスしてしまったのは言うまでも無い。
( リュウタくんの悩みと、サヤカさんの悩み )
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます