scene79*「過去」
ねぇ、学習しよう?
でも、いくら学習したってしきれないのが恋愛ってやつで。
【79:過去 】
また遅刻だ。これで何回目?改札前でそう思いながら腕時計を見る。
何の連絡もなく30分経過。
彼氏とのデートでイライラしながら待つ事、私も一体何回目?
付き合う前もちょっと遅刻癖あったけど、付き合ってからだんだん酷くなってきてるかもしれない。
彼氏のハルキとは付き合って半年くらい。
高校2年のクラス替えで同じクラスになった。
ハルキは顔がかっこよくて、話してもおっとりしてて、私はそんな穏やかな彼のことがすぐに好きになった。
何回か友達を交えて遊んだり2人でも遊んだりして、好きな気持は本物だって確信して告白したらアッサリとOKを貰えた。
私とハルキが彼氏彼女になったことに一番驚いていたのは周りの友人だった。
だってあんまりにも彼と私は正反対のタイプだったからだ。
とくにハルキと同じ中学の友人には心配されてしまったほどに。
その時はどうしてそんなに私を心配してくれるのか分からなかったけれど、まさか遅刻の常習魔だったとは。
私は自分で言うのもなんだけれど、真面目な学級委員長タイプだと思う。
それなのにここまでの遅刻癖に気付いてなかった私は本当に迂闊だ。それだけハルキとのチャンスに浮かれていたに違いない。
考えたらみんなで遊ぶ時もハルキは遅れてやってきた気がすると気にしたのは、既に付き合った後だった。
きっと恋は盲目っていうのは本当の話だと思う。
「リエ、ごめーん!」
またこれだ。
この第一声がして、改札を見るとハルキが駆けてきた。
パーカーもテキトーに着てるし、寝ぐせもそのまんま。
顔はカッコいいのに……ホントに外見と全く違うよなぁ。
「もうっ!」
「アラーム止めてた……」
「知ってる!いつもそうなんだから!」
「えへへへ」
「えへへへじゃない!」
ハルキの遅刻癖はひどい。30分なんてまだ早いほうだ。
ほっとくと1時間も来ない時がある。その原因は……二度寝。
私がコールしてもそっから寝ちゃうんだから参ったもんだ。
「髪の毛ハネたまんまだよ」
「慌ててきたから忘れてた」
「知ってる」
「やばい!ハンカチも忘れた!」
「持ってる。そうだろうと思って余分に持ってきた」
「ありがとーリエ!洗濯して返すね」
「そんなの当たり前でしょ!」
ハルキのテキトー加減にぷりぷりする私。
たった半年間のうち、もう知らない!って何度思ったか。
そう思ってたらハルキが言った。
「ごめんね、リエ。リエがしっかりしてるから、つい甘えちゃうんだよなぁ~」
……許さん。
と、思うのに、そのハルキのセリフにどうしても弱い。
分かってないようで、分かってる。ずるい。
もし未来の私がこの今の私を見たら何て言うのか。
過去の私!目を覚まして!って嘆くかもしれない。
……だけど……今の私はハルキを好きでいることはやめないんだろうな。
だって好きになったほうが負けなんだもん。
しょうがないじゃない。
それでも、私がハルキを好きなんだもん。
私はわざとため息をつくと、しかめっ面にサヨナラして強引にハルキの腕を組んでくっついた。
( もちつ、もたれつ? )
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