scene7*「癖」
それでパワー満タンになるのなら、いくらでも。
【7:癖 】
俺の彼女は、俺の匂いを嗅ぐのが好きらしい。というかもはや癖なんじゃないかってレベル。
一緒にくっついてると、とにかくスンスン俺の匂いを堪能している。
思春期と言われる年齢の、それも可愛い女子高生がそんな変態じみたことしてるとか、こいつの親は知らないんだろうなぁ……と、ちょっとした優越感に浸る俺も何かオッサンくさいかもしれない。
デートで別れるとき、いつもハグをしてから別れる。
彼女は電車、俺はバス。いつも改札前でやるそれは……まぁ高校生のハグなんてもんは目立ちはしないだろう。(一応隅っこでやっている)
もちろん、今だってそうだ。
どうせ明日も学校で会えるって分かってるのに、デートってなんでこう毎回名残惜しくなるのか。彼女の前じゃ恥ずかしいから絶対に言わないけど。
俺はぎゅっといつものように抱きしめる。すると彼女もオレに体いっぱい押し付けるようにして抱きつく。そしてその時にいつも彼女は俺の胸元の匂いを嗅ぐのだ。
「マミ、それほんと好きな」
「何が?」
きょとんとした顔で見上げる。やっぱり無自覚か。
「匂い嗅ぐやつ」
そう言うと、あはは…とちょっと恥ずかしそうに笑った。その顔、超すき。可愛い。
「いやぁ、なんか癖、なのかも。ヤッちゃんの匂い嗅ぐとね、何か元気でんの。柔軟剤なのかなぁ。とにかくヤッちゃんの匂い嗅ぐと落ち着いてきて寂しくなくなるんだ。……改めて言われると恥ずかしくなってきちゃった。でも癖としては良くないから、やめるようにしなきゃだよね」
「やめなくていいよ」
「え?」
……そこまで言われたら、ハグ以上の事がしたくなってしまう。
「いや、それでマミが元気でんなら、いいよ。いくらでも」
こっちが照れて恥ずかしくて、そう言うのが精いっぱいだった。けれどマミはそんな俺の気持ちに気付かないで、またしてもとびきりの笑顔を向けてこう言った。
「じゃあ、これからも堪能させていただきます」
「どうぞ」
今度から、ハグの時間がもっと長くなりそうだ。
( 帰ってきて家の柔軟剤をすぐに確認した俺なのであった。 )
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