第46話 元冒険者たち(上)


 カーライルでの「戦闘」が終わり領主館に招かれた俺たちは、領主の部屋でお互いに情報交換をおこなった。 

 舞子、リーヴァスさん、俺が『唄の島』で手に入れた情報は、ブランを介し全員に伝わった。

 ついでに、ブランに協力してもらい、カーライルの領主にもそれを「見せて」おく。

 妖しい儀式で『天女』が赤い玉となり、それを女王が飲もうとする記憶を覗いた領主はまっ青になり、口を利くこともできず震えていた。

 しばらくして正気に返った彼は、やっとのことでこう言った。


「ま、まさか……。

 女帝に関しては以前から悪い噂があったのだが、このようなことまで行われていたとは……」


 そう言った後、彼は再び呆けたようになってしまった。

 椅子に座っていなければ、倒れてただろうね。

 もうちょっとで自分の娘ディーテを「生贄」に捧げるところだったんだから。

 さすがにめちゃくちゃ後悔してるだろうし。


「問題は、すでにこの国に定着している『天女』にまつわる仕組みそのものを、どうやって壊すかですな」


 リーヴァスさんが言うとおり、『天女』だけでなく、それにまつわるいろんな仕組みや組織は、この国に深く根を張っている。

 それをとり除くのは容易ではない。

 

「お兄ちゃん、『学園都市世界』で獣人を開放した時のように、この国の人たちにあれを見せるってできないの?」


「確かに、コルナが言うようなことができればいいんだけどね。

 女王が赤い玉を飲む映像って、子供たちに見せられると思う?」


「ダメ!

 それは絶対にダメよ!

 そうか、あの時の手は使えないのか……」


「記憶を映像にする技術自体、まだ実現できてないんだ。

 点ちゃんが、頑張ってくれてるんだけどね」


『(P ω・) 頑張ってますよー!』


「「「点ちゃん、ありがとう!」」」


 うんうん、みんなが点ちゃんを評価してくれて嬉しいよ。

 でも、その百分の一くらい、俺も評価してね。


「シローが悪い顔になってるわね」


「コ、コリーダ!

 そんなことないよ!」


「シロー、確かに悪い顔になってましたよ」


 ルル……最後の砦まで敵の手に落ちたか。


『(・ω・)ノ ご主人様、「敵」ってだれ?』 

 

「「「シロー!」」」


 点ちゃん、それは言っちゃダメ!


「リーダー、この国には冒険者ギルドってないんですよね」


 ポル、いいタイミングだよ!


「ああ、以前はあったらしいんだけど、この国が鎖国体制をとった頃、解体されたらしいんだ」


「ずいぶん前ですか?」


「そうなるね。

 でも、元冒険者に協力してもらうっていうのは、いい考えかもしれないよ」


「そうですな。

 冒険者を辞めさせられた彼らは、不遇にあるようですから。

 ポルや、よくそこに気づいたね」


「あ、はい」


 リーヴァスさんに褒められたポルが、照れて頬を染めている。

 こうやってみると、昔のままだね、ポルは。


「はい!

 はい!

 国中の元冒険者たちに連絡すればいいと思います!」


 ミミは、なんで手を挙げて発言してるのかな。

 あー、ポルの方を睨んでるから、彼に対抗意識を燃やしてるのか。

 あいかわらずだなあ、彼女も。


「だけど、どうやって冒険者たちに連絡するの?」


 コルナ、ツッコミありがとう。

 そう、いつも適当なこと言っちゃうんだよね、猫娘ミミは。

  

「私に考えがあります。

 シローの力を借りねばなりませんが」


 えっ?

 リーヴァスさん、なにか方法があるの?

 しかし、そうなると、俺、くつろげないんじゃないの?


『へ(u ω u)へ やれやれ、この期におよんで、くつろごうとしてるよ、この人……』

「みみみ」(ダメねえ)


「「「シロー!」」」


 ほら、みんながジト目でこっち見てる!

 点ちゃん、みんなに伝わる念話でそういうこと言うのヤメテよ!

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