第81話 王都再訪
王都では、最初に孤児院を訪れた。
前回この街に来た時も、孤児院からだったんだよね。
透明化を施し上空に停めた点ちゃん1号から、全員で地上へ瞬間移動する。
この方法だと王都入り口の門を通らないから、不法滞在という事になるが、その辺は国王陛下がなんとかしてくれるだろう。
孤児院の庭に立った俺は、木窓の隙間から屋内を覗きこんだ。
どうやら、今はお昼寝の時間みたいだね。
子供たちが毛布にくるまって、雑魚寝している。
庭で俺の家族や仲間が騒いでいるので、そのうちの一人が目を覚ましたようだ。
「うるさいなあ!
なんだよ、いったい!」
木窓を大きく開けた少年と俺の目が合う。
「わっ!
お、驚かせるない!
あれ、兄ちゃん?
シロー兄ちゃんか?」
彼は以前おれを孤児院まで案内してくれた少年だった。
「ロキ、久しぶりだな!
みんな元気か?」
ロキの顔が曇る。
「モランが調子良くないんだ。
ばあちゃんは、流行り病じゃないかって言ってる。
だけど、ばあちゃんも調子が悪いんだ」
彼が言う「ばあちゃん」とは、この孤児院の世話をしているリーシャさんのことだろう。
「そうか。
とにかく、俺と仲間を入れてくれるか。
中に治療が得意な人がいるから、その人に診てもらおう」
「ホントかい!
すぐ表戸を開けるから、そっちから入って!」
◇
「「「いただきまーす!」」」
にぎやかな食事が始まった。
聖女舞子の治療により、すっかり元気になった、モランとリーシャばあさんもテーブルに着いている。
遊戯室にテーブルを並べ、子供たちと俺の家族、仲間が一緒にお好み焼きを食べている。
「これこれ、これだよー!
ずっと食べたかったんだ!」
そんなことを言いながら、ロキは両手にお好み焼きを持ち、ピザっぽくかじりついている。
「オコ焼き、やっぱり旨いよねー!」
「本当は、『お好み焼き』」
年長の女の子が上げた声に、なぜか黒騎士が突っこんでいる。
「「おこー!」」
ナルとメルは口の周りをソースで汚しながら、大好物を夢中で食べている。
「翔太君、日本の食べ物って美味しいね!」
「ありがとう、エミリー」
こちらは、なんかほのぼのしてるなあ。
だから、ハーディ卿は翔太を睨まないで。
「にょろにょろ~」
「……にょろ~」
ミミが体をくねらせてるのは、お好み焼きに載せたカツオ節が動くのが面白いらしい。
それにつき合わされるポルは迷惑そうだ。
うちの
だけど、早く食べてくれないかな。
「シロー殿は、こうやって人々を従えていったのか……」
天才軍師は、何か勘違いしてるね。
「やっぱり、焼きたてのオコは美味しいね」
「「ほんと!」」
コルナの言葉に、ルルとコリーダが相づち打っている。
「オコではなく『お好み焼き』」
黒騎士は、お好み焼きになにかこだわりがあるようだ。
「「みゅっ!」」(おいしっ!)
「ぶふぉん!」(うまっ!)
「きゅ~!」(おいし~!)
「「「おいしー!」」」
魔獣組の歓声に孤児院の子供たちの声が重なる。
『(≧▽≦) みんな、すっごく喜んでる!』
やっぱり、お好み焼きにしてよかったね。
孤児たちに引きとめられた俺たちは、夕食にバーベキューを楽しみ、その夜は孤児院に泊った。
この孤児院、お風呂が無かったので、みんなが寝ている間に、土魔術でそれを造っておいた。
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