第47話 商売繁盛(上)
まだ遊びたいブランとキューを草原に残し、薬屋に帰ってきた俺とルエランは、貯蔵室で薬草を仕分けていた。
「ふう、これで当面は大丈夫です」
ルエランが言うには、薬草により貯蔵の仕方が違うそうだ。
乾燥させるもの、生のまま液体につけるもの、乾燥させてすりつぶすもの、薬草の種類により、処理の仕方は様々だ。
「ルエラン、ここにまとめてるのは、乾燥させるやつかな?」
「ええ、この種類は、水分を飛ばしてから保存します」
点ちゃん、どうかな?
『(・ω・)ノ チョー簡単ですよ』
ああ、点ちゃんがまた変な言葉覚えてるな。「チョー」って誰から聞いたんだろう。
「ルエラン、これ、俺が乾燥させてもいいけど、どうする?」
「えっ!?
そんなことができるんですか?」
「ああ、ちょっと待ってね……はい、終わり」
火魔術と風魔術を組みあわせ、薬草の水分を一気に抜いてみた。
「えええっ!?
い、今ので?
魔術ですか?」
「まあ、そんなところ」
「凄い!
完全に乾燥してる!」
「それと、色んなものを粉にする道具もあるけど、必要かな?」
「えっ!?
でも、さすがにそれは……」
「気兼ねしないで。
タダで泊まらせてもらってる上に、食事までいただいてるんだから」
「本当にいいんですか?」
「ああ、ちょっとまってね」
俺は腰のポーチに手をやるふりをして、点収納からある物を取りだした。
「これは?」
「これは、ミルって言って、何かを粉末にするのに使うんだ」
コーヒーミルに似た道具は、緑茶から抹茶を作るため、点魔法で作ったものだ。
点ちゃんシールドで作ってあり、手動でハンドルを回すようになっている。摩耗しないから、故障もしないだろう。
「ここに目盛りがあるでしょ。
これでどのくらいの大きさまで砕くか調節できるよ」
「うわーっ、凄い!
薬屋にとっては夢のような道具ですよ、これ!」
「どんな固いものでも粉にできるから、安心して使ってね」
「……凄すぎる」
「それから、薬のレシピを教えてくれたら、いくつか改良できる点が見つかるかもしれないよ」
「……シローさん、あなた一体、何者です?」
「いや、鉄ランクの冒険者だけど」
「……素性を隠したい理由があるんですね?
分かりました。
詮索はしません。
とにかくありがとうございます」
ここは、お言葉に甘えておこう。
「じゃ、薬のレシピを教えてくれるかな?
できたら現物を見ながら説明してくれる?」
「分かりました」
点ちゃんには、地球世界を始め、今まで訪れた世界の薬学や薬草に関する知識があるからね。
こうしてレシピの改良に夢中になった俺たちは、ルエランのお母さんからお叱りを受けるまで調合室にこもっていた。
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