第12話 未知の世界


 俺が案内されたのは、遺跡近くの森にある小さなログハウスだった。

 たまたまなのか、意図的にか、小屋は大小の木々に囲まれ、周囲から見えない場所に建っていた。


 恐らく二部屋しかないその小屋の一室に招かれた俺は、木を輪切りにしただけのシンプルな椅子に座り、銀仮面が小さなコンロのようなものに火を点け、お湯を沸かすのを見ていた。

 その道具は、冒険者たちが野外で利用する、『火の魔道具』と似ていたが、火力の調整をするつまみや、風防が着いていないところが違っていた。

 

 俺は彼らが着ている服装や、使う道具から、ここがどの世界か割りだそうとしていたが、それには、まだ情報が不足していた。

 

 点ちゃんがいなくなって、なぜ焦っていないかって?

 かつて獣人世界を初めて訪れた時、しばらく点ちゃんと連絡がとれないことがあった。

 その時は自分でも驚くほど落ちこんだが、今回はそうはならなかった。

 なぜなら、うまく説明できないが、まちがいなく自分の中に点ちゃんがいるという感覚があるからだ。


 銀仮面と男の子が部屋からいなくなった隙に、ブランに話しかける。


「ブランちゃん、点ちゃんと話せる?」


「ミィ、ミミミィー」(話せないけど、点ちゃんはいるみたい)


 だよね。ブランもそう感じているのか。

 試しに『セルフポータル』を発動しようとしたが、上手くいかない。

 普通なら、転移できる異世界群が、たなびく布のようなイメージで頭に浮かぶのだが、それが現れない。

 とにかく、点ちゃんが話せるようになるまで、待つしかないな。


 ◇


『(・ω・)ノ ご主人様ー!』 


 ふぁー、あれ?

 いつの間か寝ちゃってたか……って、点ちゃん!

 どうしてたの?!


『(Pω・) ちょっとこの世界への適応に時間が掛かっていました』

   

 そうなの?

 とにかく無事でよかったよ。

 ところで、アリストがあるパンゲア世界に転移するはずが、別の世界に来ちゃったみたいなんだけど、何か分かる?


『(Pω・) 確かに、この世界はパンゲア世界ではありませんね』

 

 や、やっぱり?

 どこか分かる?

 

『(Pω・) 今まで訪れた、どの世界とも違うようです』 


 えええっ!?


『(・ω・)ノ ご主人様、『セルフポータル』を発動してみてください』 


 了解。

 発動したけど、やっぱり世界群のイメージが出てこないなあ。


『(u ω u)つ そこから導きだされるのは……』


 導きだされるのは?


『(・ω・)ノ ここは、パンゲア世界があるポータルズ世界群に、含まれない世界ではないかと』


 えっ!?

 それって、どうなるの?

 

『(・ω・)ノ とりあえず、すぐには元の世界群に帰ることはできません』


 うへぇーっ!

 こりゃ、えらいことになっちゃったな!

 なんとかならない?


『(u ω u)つ そうですね……とりあえず、ポータルを探して転移してみるのがいいかと』 

 なるほど、『セルフポータル』は、行ったことがある世界にしか渡れないけど、普通のポータルなら、未知の世界にも渡れるもんね。

 

『(・ω・)ノ そうです。すでに知っている世界のいずれかに転移できれば成功です』


 うーん、可能性低そうだけど、それに賭けるしかないのか。


『(・ω・) あと、この世界について調べることも大事かと』


 それはそうだね、


 その時、足音がすると、灰色のローブを羽織った銀仮面が部屋に入ってきた。

 

「異世界の若者よ、お前に話がある」


 銀仮面は、やはり性別が分からない、かすれた声でそう言った。


「なんでしょう?」


 切り株の椅子に座った銀仮面は、おもむろに切りだした。


「この世界を破壊してほしい」

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