第4話 縁は異なもの味なもの(3)

 サザール湖沿いに建つ、マスケドニア王宮に併設された船着き場には、結婚式の用意で忙しいはずの、陛下とヒロねえの姿があった。


「シロー殿!

 よく来てくれた!」


 陛下が両手で俺の手を取る。

 歓迎ぶりが、ちょっと熱いね。


「みんな、来てくれてありがとう!」


 ヒロ姉は、ちょっと見ないうちにずい分綺麗になっている。

 なんだろう、これ? 


「ヒロ姉、おめでとうございます!」


「ありがとう、史郎君」


 いまだに俺の事を子供扱いしている彼女は、頭を撫でてくる。


「とにかく皆さん、まずはお部屋の方へ」


 軍師ショーカの案内で、俺たちはぞろぞろ王宮に入って行く。

 最後尾を歩いている俺に、陛下が話しかける。

 

「ところで、シロー殿。

 あれは何だ?」


 彼が指さしているのは、宙に浮く白銀の大きな箱だ。

 クルーザーは点収納にしまったが、箱は船着き場の上に浮いたままにしてあるからね。


「ああ、あれですか。

 娘たちとポポが乗ってるんですよ」


「おう、そうじゃった。

 ポポという魔獣の部屋も用意してある。

 王宮内に入ってもらってかまわん」


「えっ!?

 いいんですか?」


「うむ。

 聞けば、ナル殿とメル殿は、エルフ国とアリスト国で、魔獣大使に任命されたそうではないか。

 我が国でも、任命の用意をしてある。

 遠慮なく魔獣に乗ってくれ」


 魔獣大使とは、好きな魔獣に好きなだけ乗れるという称号だ。

 これは、ナルとメルが喜ぶな。

 俺が指を鳴らすと、すぐ横にナル、メル、二匹のポポが現れた。


 陛下は一瞬ギョッとした顔をしたが、すぐ平静に戻った。

 

「ナル殿、メル殿、久しぶりだな」


「「王様、こんにちはーっ!」」


「うむうむ、元気でよいな!

 二人とも、好きに魔獣に乗ってくれてかまわぬぞ」


「「わーい!」」


 さっそく二人は、それぞれのポポにまたがっている。

 今回は鞍を出していないから、娘たちは直接ポポの背中に乗っているんだけど、彼女たちはそのスタイルに慣れているから危なげないんだよね。


 ピンクのカバとそれに乗る少女を見て、腰を抜かす衛兵の間を通り、俺たちは王宮へと入った。


 ◇


 王宮では、数人ごとに、それぞれ部屋が割りあてられていた。

 舞子、イリーナ、ミミ、タニアさんで一部屋、ピエロッティ、レダーマン、ポルで一部屋。リーヴァスさんは一人だけで一部屋。二匹のポポのために大部屋が一つ。俺の家族のために二人用小部屋が三つ用意されていた。

 そして、俺には当たり前のように、例の大きな『英雄部屋』があてがわれた。

 ナルとメルは、ポポたちと一緒に寝ると言って聞かなかったので、大部屋になったが、問題は、『英雄部屋』を残りの誰が使うかだった。

 王宮のメイドから、聞かなくていい情報をコルナが聞きだしてしまったのが原因だ。


「お兄ちゃん、この前はルルと一緒にここで寝たんでしょ?」


 豪華すぎる『英雄部屋』のキングサイズベッドを、手でパフパフ叩きながら、コルナがそう言った。

 

「今回は、すでに史郎と式を済ませてある、私が寝るのがいいだろう」


 腕組みをして立つコリーダが、当然のように言う。


「私はここで寝ます」


 ルルがきっぱり言う。


『(・ω・)ノ もう、全員一緒に寝たら?』


 点ちゃんの提案で、結局そうなることになってしまった。

 川の字に寝ると、一人俺の隣に寝られないとかで、結局俺はベッドの端に横になり、残りの三人が、白猫たちを挟んで川の字に寝ることになった。「E]の字みたいな感じだね。

 白猫、黒猫、コリンは、ベッドに上がるなりすぐに寝息を立てはじめた。

 さっきまでの様子とはうってかわり、穏やかに会話する、ルル、コルナ、コリーダがやがてぐっすり眠っても、その並んだ頭の隣で横たわる俺は、朝まで寝つけなかった。

 これって、どうみても安眠妨害だよね。

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