第47話 子竜の活躍(2)


 獣人世界は、南部山岳地帯。

 深い渓谷に掛かった吊り橋を切られ、コルナたちは谷底に向け落ちかかった。

 それを救ったのが、ミミだ。


 覚醒で手に入れた、『軽業師』という職業の能力、信じられないほどの身軽さで、落ちていくコルナとポルをロープにくくりつけることに成功した。

 ただ、とっさの事だから、きちんと結わえられたわけではない。

 三人とも、手の力、足の力を使い、ロープにしがみつく必要があった。


「こ、これ、どうなるのー!?」


 ミミが、悲鳴のような声を上げる。


「ミミ、君だけなら上まで登れるんじゃない?」


 ポルは、落ちついたものだ。


「確かに私だけなら登れるけど……今度落ちたら、二人は助からないわよ」


 崖にぶら下がった形になっている吊り橋の残骸が、いつまでも彼らの体重に耐えられるとは思えない。 

 

「ミミ、とにかく、あなただけでも登って、どこかに結びつけたロープを降ろしてくれる?」


 コルナも、落ちついたものだ。

 ところが、その時、彼らが掴まっているロープが、ガクンと下がった。


「きゃっ」

「わっ」


 コルナが見上げると、ロープの一本が重さに耐えかね切れていた。

 これは、時間との競争になりそうだ。


「ミミ、急いで!

 ロープは、きっと長くもたないわ」


「はい、分かりまーっ!?」


 ブツン


 とうとう、三人を支えていたロープが全て切れてしまった。

 三人とも、落下の恐怖から目を閉じる。

 しかし、三人が感じたのは、下降でなく上昇だった。


「な、なにっ!?」


 コルナが目を開けると、背中を何かにつかまれているのが分かった。

 顔を上げると、そこにはドラゴンがいた。

 彼女が母親役をした真竜三体の内、一番小さな子だ。

 横を見ると、それより少し大きな真竜が、ポルとミミをそれぞれ両前足で掴んでいる。 

 

 三人は二体の真竜により、あっという間に崖の上に降ろされた。


「こ、怖かった~……」


 ミミが腰を抜かしている。


「ありがとう。

 助かったよ」


 ポルが真竜の頭を撫でる。


「あなたたち、ありがとう。

 でも、どうやってここまで来たのかしら」


 コルナの声に答えるように、二匹の子竜がその姿を変えた。

 一匹は熊、一匹はウサギのぬいぐるみだ。


「きゃーっ!

 かわゆいっ!」


 たった今まで腰が抜けていたミミが、ぬいぐるみに飛びつこうとする。

 二匹はさっとそれをかわすと、コルナの胸に飛びこんだ。 


「マンマ!」

「マーマ!」


「助けてくれて、ありがとう!

 ママ、あなたたちに会えて嬉しいわ!」


「「むー!」」


 コルナの胸に顔を埋め、二匹のぬいぐるみは、耳と尻尾しっぽをクルクル動かし、母に会えた喜びを精一杯表すのだった。

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