第22話 合流



 パーティ・ポンポコリンと加藤の一行は、二人の竜人に導かれ、青竜族の都に向かった。


 案内役の二人は両方妻帯者だ。未婚の者に任せると、コリーダを巡い血みどろの争いが起きそうなので、村長むらおさが、そう決めたのだ。

 森が途切れ草原に変わったところで、ルンドという名の竜人が前方を指さす。


「あそこが、都だ」


「おお!」


 高い城壁が見える。

 シローがそこにいるかと思うと、ルルの胸は高鳴った。


 門番と何か話すと、ルンドたち二人は、挨拶の後、村へ引きかえしていった。


「こりゃまた、凄い数の迷い人だな」


 門番の大柄な竜人が驚いている。


「ルンドから、話は聞いてる。

 ここを入るとまっ直ぐ行ったところにある、こんな形の門がある建物に行くといい」


「かたじけない」


 リーヴァスが礼を返した時、コルナが声を上げた。


「あっ、その袋は?!」


 門の所には、門番が休息するための小さな机と椅子があるのだが、コルナはその机に載ったものを指さしていた。

 机の上には、紙袋が置いてあり、それには丸いマークがついていた。丸いマークの上から二つの三角形が耳のように飛びだしている。


「なぜ、この印がここに?」


 ルルが思わず声を上げる。自分が尋ねられたと勘違いした門番がそれに答えた。


「ああ、そりゃ『ポンポコ商会』ってところが売ってるクッキーだぜ。

 甘くて凄く旨いんだ」


「こりゃ、ボーの仕業だな」


 加藤が、呆れたように言う。


 その後、ラピと名乗った門番に『ポンポコ商会』までの道を尋ねた一行は、町へと入った。


 ◇


 リーヴァス一行八人は、教えられた道順をたどり、町中を歩いていく。


 青い髪の竜人たちが、足を停め、こちらを見ている。やはり、迷い人が珍しいのだろう。特に、コルナとミミが注目を集めている。道端で遊んでいる子供たちは、遠慮なく彼女たちを指さしたり、耳や尻尾しっぽについて話している。


 やがて、道の両側に商店が増えてきた。商業地区へ入ったようだ。

 

 前方に、ひときわ多くの人が並んでいる店がある。列の最後尾で看板を掲げている者を目にした、ミミが叫び声を上げた。


「ポン太!」


 彼女は、もの凄いスピードで、ポルの所に駆けよった。


「あれ? 

 ミミ、どうしてここにいるの?」


 ポルが、のんびりした声で尋ねる。ミミは、膝の力が抜けそうになった。


「あんたねえ、『どうしてここにいるの?』じゃないわよ!

 ポータルを渡ってきたに決まってるでしょ」


「へー、そう」


 彼が余りにも暢気のんきなので、ミミは本当に膝を着いてしまった。


「あっ、ポルだ!」

「ぽるっぽー!」


 ナルとメルが、さっそくポルの尻尾を狙う。


「助けて、シローさーん!」


 ポルが、悲鳴を上げる。


 並んでいる竜人をかきわけ、シローが姿を現した。


 ◇


 「シロー!」 

 「お兄ちゃん!」 

 「シロー……」


 ルル、コルナ、コリーダが、俺のところに駆けよる。


「よく来たね、みんな。

 ここまで大変だったろう」


 三人は、涙ぐんでいる。


 ドーン、ドーンと、ナルとメルが、俺にぶつかってくる。


「「パーパ!」」


 二人の頭を撫でてやりながら、俺はリーヴァスさんに黙礼した。

 これだけの人数を、しかもナルとメルまで連れ、ここにたどりつくのは、容易ではなかったはずだ。

 リーヴァスさんの後ろから、思いもかけない人物が現れた。


「ボー、無事で何よりだ」


「加藤! 

 お前まで来たのか」


「おいおい、『お前まで』は、ないだろう」


 俺たちは、グッと握手した。


「シロー兄ちゃん、この人たちは?」


 店の方から、イオがやってきた。


「イオ、紹介するよ。

 俺の家族と友人だ」


 この日、ポンポコ商会ドラゴニア支店は、早々に店じまいした。


 ◇


 パーティ・ポンポコリンのメンバーと加藤は、史郎がイオの家に作った地下室へ集まった。


 全員が座っても十分な空間が取ってある。


「リーダーとの再会を祝って乾杯!」


 ミミの音頭で乾杯する。リーヴァスさんは『フェアリスの涙』、他はエルファリアのジュースだ。


「なにっ、これ!? 

 凄く美味しい」


 イオは、ジュースが気に入ったようだ。


「みんな、これを食べてごらん」


 ネアさんが運んできてくれた、焼きたてのクッキーに、目の前で蜂蜜をかける。


「あ、これ、蜂蜜ね?」


 コルナが言う。


「な、なに!? 

 この味! 

 こんな蜂蜜、初めて食べた」


「だろう。

 このくらいある、でっかい蜂が作る蜂蜜なんだよ」


 俺が握りこぶしを作って見せる。


「パーパ、コー姉が、ナルをその蜂から守ってくれたの」


「シロー、コルナは、この子たちを守って蜂に刺されたんですよ」


 ルルが、教えてくれる。


「えっ!? 

 コルナ、大丈夫かい?」


「ええ、聖女様に頂いた、治癒の魔石で治してもらったの」


 俺は、点ちゃんに頼み、コルナを診てもらった。


『↑(Pω・)背中にまだ蜂の針が残ってるから、抜いておくよー』


 点ちゃん、ありがとう。


「ミミちゃんと、コリーダねえも、ケガした」


 メルが報告する。


「二人とも、大丈夫?」


「大丈夫だよ」 

「ええ、もうすっかり」


「帰ったら聖女様と女王陛下には、お礼をせねばなりませんな」


「女王陛下?」


「シロー、聖女様の力が込められた治癒の魔石は、アリストの国宝だそうよ。

 女王様から、お借りしたの」


 加藤、畑山、舞子が力になってくれたのか。


 俺は、友人たちに、心から感謝した。

 

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