第39話 神獣の真実
アリストへ帰ってきて二日後、俺はミミ、ポルそれにコルナを連れて、お城へ来ていた。
リーヴァスさんも一緒だったが、今は別室でレダーマン騎士長と話をしている。おそらくピエロッティの件だろう。
俺たちは、王の間で女王と
女王としての威厳を身につけた、長い黒髪の少女が玉座に座っている。
彼女は、まぶしいほど美しかった。
「面を上げよ」
「はっ」
「で、その方らが、グレイルからの客人か?」
まあ、耳と
「はっ。
こちらが、狐人族コルナ、元獣人族会議議長です。
こちらは、猫人族ミミ、狸人族ポルナレフでございます」
俺が三人を紹介する。
「遥々、よう参られた。
聞けば、聖女救出にも、力添えしてもらったとか。
大儀であったぞ。
この国に滞在中は、
「はっ、ありがたき幸せ」
「おお、そうであった。
お主らに、アリスト城自慢の庭を見せようと思うてな。
女王陛下は立ちあがると、歩きだした。
侍従長と近衛騎士が慌てて後を追う。
俺たち四人も、うながされて
城の中庭に出る。
そこは以前来た時と大きく様変わりしていた。花壇であったところに木が植えてあり、一面が森のようになっている。膨大な人手と費用を使ったに違いない。
畑山さん……何やってんの。
「お主らは、ここで待て」
騎士と侍従長にそう言うと、女王陛下は森の中へと足を踏みいれた。
俺たちも、その後を追った。
森を少し入ったところに、差しわたし二十メートルほどの円形広場があり、まん中には噴水があった。
噴水の所まで来ると、女王陛下の表情がやっと緩んだ。
「ボー、お帰り。
舞子から聞いたけど、大変だったね」
彼女は、やっと友人である畑山さんの顔になった。
「ああ。
でも、仲間が助けてくれたからな」
俺は、コルナ、ミミ、ポルの方を見る。
「え?
なんで女王様と、そんなに気やすく?」
ポルが訊いてくる。
「ああ。
黒髪を見て分かるように、彼女は俺と一緒にこの世界に転移してきた友人なんだ」
「「えっ!」」
ミミも、これには驚いている。しかし、彼らが本当に驚くのは、ここからだった。
森の中から、白い巨大なウサギが躍りでた。
「「「うわっ!!」」」
獣人の三人が驚き、尻もちをつく。
キュゥ~ン
三メートルはあるウサギが畑山さんの横で頭を下げると、彼女はその頭を撫でてやった。
「あんたを獣人世界に見送った後、ウサ子、お城までついて来ちゃってね。
もう、町も城も大騒ぎだったわよ」
畑山さんに撫でられているウサ子は、気持ちよさそうに目を細めている。
「そうそう、帰ってきた舞子にも、なぜか超なついちゃったのよ。
ねー、ウサ子」
俺が後ろを見ると、コルナ、ミミ、ポルの三人が石像のように固まってる。
君たち、何もそこまで驚かなくても。
しかし、次の瞬間、こちらの方が驚かされることになる。
急にミミ、ポル、コルナの三人が、ばばばっと後ろに下がったと思うと平伏してしまったのだ。
「おいおい、今さらかい?」
今さら、女王陛下に敬意を表してどうする。
「「「しししししっ」」」
「ししししし?」
何それ? 何かの呪文か?
「「「神獣様ーっ!!」」」
えっ? どういうこと?
三人は、平伏姿のまま、微動だにしない。
えっと、これ何が起きたの?
◇
石のように固くなった三人を、無理やり立たせて聞いたところによると、ウサ子の姿こそ、かつて獣人に君臨していた、神獣そのものなのだそうだ。
もちろん、生きている獣人で、神獣を実際に見た者はいないから、その姿も言いつたえにすぎないのだが。
畑山さんは、ウサ子が城に来てから、禁書庫でいろいろ調べたそうだ。
すると、二百年くらい前、マウンテンラビットが急に『霧の森』に現れた、という記録が見つかった。
また、マウンテンラビットについて書かれた、古い本も見つかった。そこには、彼らに適した食べ物や適した環境についても、事細かく書かれていたそうだ。
二百年前、ポータルズ世界群を股にかけ活躍した英雄が、書きのこしたものらしい。
間違いない。ウサ子は、神獣だった。
背後に足音がしたので振りかえると、舞子の姿があった。斜め後ろには、影のようにピエロッティが控えている。
「史郎君、お帰り」
舞子は微笑みを浮かべてそう言うと、俺の手を握ってきた。以前より落ちついているな、彼女は。
「私もね、ウサ子ちゃんと話せるようになったんだよ」
ウサ子が、舞子にすり寄る。
本当に、懐いてるな。
舞子は、ウサ子の首を撫でてやっている。
「「せ、聖女様!」」
あー、ミミとポルが、また平伏しちゃったよ。
引きおこすの、もうめんどくさいよ。
そのままにしとこう。
『(*'▽')b さすが、ご主人様』
いや、点ちゃん。そこで「さすが」って言われてもねえ……。
畑山さん、舞子、俺の三人は、久しぶりに会って積もる話をすることができた。まあ、こうなると一人いないのが余計に目立つよね。
次は、加藤の番だ。
俺は、この世界から異世界へ旅だった、親友の顔を思いうかべるのだった。
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