ポータルズ ～ 最弱魔法を育てよう ～

第２８話 点ちゃん先生 -- 点魔法の可能性 --

　俺は相変わらずギルドで毎日依頼をこなし、六日に一度の休日には、ナルとメルの相手をしたり、ルルと買い物をしたりして過ごしていた。

　時間を見つけては、点魔法の検証をしている。

　今日も一人で河原に来ていた。

　様々な形の板を作る練習をする。適当な三角形を作り、それを四角形、五角形、六角形と、変化させていく。

　頂点の数が増えれば増えるほど形を作るのが難しくなるため、今は八角形のあたりが限界だ。なぜだか、円や球を作るのは簡単だ。

「そろそろやってみるか」

　今日は、球以外の立体にも挑戦してみる。面の数が一番少ないのは四面体だが、見慣れた六面体から始めてみる。

　最初にティッシュペーパーの箱をイメージしてみる。

　まず点を六つ用意する。

　点、点、点……。

　次に、それぞれを長方形の面に仕上げる。

　みょんぴーん、みょんぴーん……。

　拡張時間は五分に設定する。

　六つの面を合わせてと……。

　あれ？　うまくいかないな。

　長方形の大きさが微妙に異なるので、端のところに隙間ができたり、余ったりしちゃうんだね。

　う～ん、しょうがないか。困ったときの点ちゃん頼み。

　点ちゃ『(＾▽＾)/　はいはーい！』

　早っ！　答えるの早っ！　さては、待ってたね？

　点ちゃん、うまく箱が作れないんだけど、なんかヒントない？

『(・ω・)　そうですね。

　 組みあわせるのではなく、最初から完成した形で考えてはどうでしょう』

　それだと、立体ではなく平面になるんじゃない？

『＠ｄ(u ω u)　頭の中で完成した形のイメージを、くるっと回しておけばいいんですよ。

　前後左右と斜めから見ておけば、立体ができるはずです』

　なるほど、やってみるか。

　みょんみょん、くるくる、しゃきーん

　一発で成功！

　いや～、点ちゃん先生と呼ばせてもらいます。

『ｑ(｀^´)ｐ　苦しゅうない、そう呼ぶのを許そう』

　急に偉そうになったな。まあ、いいけど。

　あ、そうだ、点ちゃん先生。

『(｀^´)　うむ、なんじゃ、生徒シロー』

　今日は、このノリが終わりそうにないな。

　箱の中って、何か詰まってるの？

『(｀^´)　いや、空いておるぞ』

　ということは……もしかして。

　何かを中に入れることもできる？

『(｀^´)　当然じゃ』

　ふむふむ。じゃ、やってみるか。

　練習用の丸石の近くに点を設定して……。

　丸石を含むような、ティッシュの箱型の立体をイメージと。

　できた！　移動させてみよう。

　あれ？

　すり抜けちゃった。

　先生、これって、すり抜けないようにできませんか。

『(｀^´)　簡単じゃ、すり抜けないことをイメージに込めるだけでよい』

　じゃ、再チャレンジ。

　お！　今度は成功した。箱と一緒に石も動いてる。

　おいおい、ちょっと待てよ。これって……。

　一旦、箱を消し、ちょっとした工夫を試してみる。

　拡張時間設定を十秒にして再び箱に石を入れる。

　９、８、７、６、５、４、３、２、１……。　

　キュドーン！！

　ば、爆発した。

　ヒー、飛び散った石でえらいことになった。

　服が穴だらけだ。

　物理攻撃無効なかったら死んでたな。

　先生、なぜこのようなことに？

『(｀^´)　箱が点に戻るとき、素材の強度が耐えられなくなったのじゃよ、ウォホン！』

　偉そうだなあ。

　あーあ、点にしても大丈夫ならマジックバッグみたいに使えると思ったんだけどな。そんなにうまくいく訳はないか。

『(｀^´)　できるぞよ』

　え？！　できるの？　

『(｀^´)　簡単じゃ。 点の中に空間があるとイメージしさえすればよい』

　イメージって万能だな。

　じゃ、試してみるか。

　別の石を選んで……箱に入れる。設定時間は、五秒でいいや。

　４、３、２、１　

　キュン

　シ～ン　

　おお、成功！

　ええと、これって中のものを取りだすには、どうすればいいの？

『(｀^´)つ　点を元の箱にする、透過性をイメージ、箱を動かす、の順で大丈夫なはずじゃ』

　どれどれ、元に戻して、すり抜けるイメージで、えいっと。

　おっ！　成功、成功。

　しかし、これ、使いこなせるまでは、大事なものを入れない方がいいね。

　あと、人の近くではやらないほうがいいな。

　爆発の可能があるから。

『ｄ(｀^´)　気をつけて使うのじゃ』

　はい、先生ありがとうございました。で、この小芝居もういいかい？

　マジックバッグもどきを手に入れた喜びに、俺は点ちゃんの攻撃魔法としての可能性に気づけないでいた。