第14話 なんとなくでも

俺がこの世界にいるという事実に、誰か、文句を言っては、くれないか?

俺がこの状況に達したわけを、誰か、述べてくれないか?


「なあ、神庭」


神庭を呼ぶ、いるかいないかなんて確認しない。

「俺、この世界にいて、正しいのか?」


その言葉は、薄っぺらい人間の吐いた言葉で、その言葉は、単なる俺の吐いた言葉でしかない。


「そうだな、正しいなんてないと、我は思うぞ」


正しいなんてない。その一言に対して、俺は、深いため息と共に、そっぽを向いて反抗した。



「神庭は、なにの?正しいかどうか迷ったこと」

「あるに決まってるだろ」


その神庭の半ギレな言葉には、俺への怒りが込めてあった。


「この世界で、我は、迷う事を知ったよ」


その話は、濃いものだった。

「我には、この世界を定める役がある。その役には、多くの代償と、少しの報いがあった。代償は、なにかを失う、報いは、達成感を得る。この違いは、お前にもわかるだろ?失って取り戻すことができていない、我は、何か新しいものを手に入れては、失っていったよ」



その話は濃くて深い、濁れた川のようなものだった。

俺には、理解ができない。その言葉を吐く勇気はなく、ただただ、歯を食いしばって考えた。

これからの事や、俺の存在について。



「なら、神庭、約束してほしい。俺がもし、この世界の主を見つけ出したら」


一旦間を取る。

「出したら?」


それが、俺のなんとなく出した言葉。

「味方になってくれ」



味方、そんな言葉が俺は嫌いだ。でも、今使うべき言葉は、多分これだ。

もっといい言葉があったかもしれない。例えば、信じてくれとか、守ってくれとか、でもそんなのは、いつか口約束という定義でしかなくなる。なら――



―――「俺は、味方を作って、戦う」



俺の二つ目の選択。

ハッキリとした選択なんてできるはずがない。だから、いや、だからこそ、


「俺は、なんとなくでも、本当を見つける」


妹とのハッピーライフもこれで終わりかもな。

そんな終焉もありだ。



そんな事をしていると、屋上の出入り口が開いた。

入ってきたのは、会長だった。


「会長!」

「やっと見つけた。君に頼みがあるんだ」


頼みってなんだ?

ていうか、聞かれてないような?俺と神庭の会話。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る