第12話 バレたのかバレてないのか?

まるでこの日は、奇跡だったのだろうか?と思うほど、今日は充実していた気がする。佐上は、生徒会に来て、堀さんとも再開した。


「ありえないくらい、幸せだ」


そんな情けない言葉は、ポロッと簡単に出た。

家に帰ってきて、ベットでうつ伏せになっている俺は、そんな今日の幸せを思いだし、にやけていた。

そんな事をしていると、扉をノックされ、妹が入ってきた。


「瑞希どうした?」

「お兄ちゃん、いや、偽物!」

「ん?なに言ってんだ?」


偽物?バレた????


「お前は、お兄ちゃんじゃない!お兄ちゃんの皮を被った!クズよ!!!」


妹の言葉は、奇しくも正しかった。

なぜバレたか、俺にはさっぱりわからない。

ただ、一言言わせて頂くと、


「結局は、お前俺の妹だぜ?」

「なに言ってんの?」

「だから、お兄ちゃんだよってこと」

「嘘!偽物よ」


このままだと埒が明かねえ、もう話すか。


「先輩、お待たせしました!」

「なんで?さが、ぐう」

俺が、妹の喋っている最中に、扉から現れ俺の口を塞いできたのは、あのびっちクソ後輩こと、佐上だった。


「誰?」

「先輩の彼女候補です」

「なにそれ?お兄ちゃんは、じゃなかった。この偽物は、単なるゴミクズよ」

「それは言い過ぎだよ、中坊のくせに」

「はあ?」


気の強い二人で戦ったら、この世界が破壊されちゃうよ。

だから、やめよ。


「偽物って証拠がどこにあるの?」

「それは、あるけど」

「なに言えないの?恥ずかしいことなんだ、へぇー」

「うっさい!」


妹がこんなに怯むなんて、この世界の俺は妹とどんな関係で過ごしてたんだ?


「お兄ちゃんって、呼び方すらしてなかった。とか?」


その言葉に瑞希は、驚愕の顔をした。

「なんで、それを?」

「さあ?兄妹同士の恋愛なんて、信じらんないし」

「やめてよ、やめてってば」


兄妹同士?どういう事だ?


「學は、私のものなの!だから」


それは?どう受け止めれば?

俺に対してじゃなく、本物のこの世界の俺に対してなんだよな?この言葉は。


「もういい」

妹は、そう言葉を吐いて、部屋を出て行った。

それを追うかのように佐上も出て行った。

「はあ、よくわかんねぇ」

俺は、そんな情けない言葉を吐いて、ベットの上に座った。



*



なにがなんだかわからないのは、瑞希も一緒だった。

「なんなのよ」

そうしていると、後ろから声がした。さっきの女の声だ。

「あの」


――――――― 無視だ。そうしなきゃ私は、なにかを失う。


「ねえってば」

「なに?」

答えてしまった。

「あのさ、一ついいかな?」

「なんですか?」

その女性は悪魔のような美しくもなにかを壊しそうな笑みで瑞希に言った。


「もう邪魔しないでね」


その言葉は、重かった。

「邪魔しなかったら、本当の彼に会えるから」

「どういう事?」

「貴方にミッションをあげる。そのミッションをクリアしたら」

「したら?」


「貴方を本物のお兄ちゃんのところに連れていってあげる」


瑞希は、警戒の意思を込めて聞く。

「貴方にできるの?」

「うん、できるよ」


「貴方がミッションをクリアすればの話だけど」


「そのミッションは?」

言葉を吐く度、なにかが消えていく気がした。

それは、多分、自分だ。


「小野原學をどん底まで裏切れ、なにがあっても」


それは、さっきまで小野原學にデレていた女の顔ではなかった。

―――― それは、まさに魔女だった。

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