俺の家に妹がやって来た

交差篇

第10話 昔の俺

堀葉月という少女は、なぜだか佐上の逆側、単的に言えば、俺の横に来た。

「あの、覚えてないかな？」

「覚えてるもなにも、俺、堀さん？と会った事ないと思うんだけど」

堀さんは、すこし拗ねた顔をして、こう言い放った。

「昔、告白したんだよ？小野原くんに」

へ？俺、告られた事あったっけ？自分のモテた記憶が一ミリも思い出せない。

―――ん？あれ、もしかして、

「堀さんって、あの堀さん？！小学校の時、俺に告白してきた！」

「そう言ったじゃん！」

俺は、佐上を忘れて、堀さんとすこし昔の話で盛り上がった。

「じゃあ、またこっち戻ってきて、同じ高校に通うんだね」

「うん！」

そんな風にしていると、袖を引っ張られた。

「ん？どうした？佐上」

そう佐上に聞くと、

「私もいるんですから、こっちも忘れないでください！先輩」

キュンっとしてしまった。

でも、こいつは単なるびっちの変態のクソ後輩なんだぞ、俺！しっかりしろ！

「あの、さっきから気になってたんだけど、この子は？」

「ああ、えっと」

俺が言おうとした時、佐上が遮るように、

「私は、先輩の彼女候補になる予定の、先輩の〈自主規制〉で、先輩とあんな事やこんな事をしまくった仲です！」

〈自主規制〉の部分は、お好きなように埋めてください。

というか、おい！佐上ーーー

「やめろ！そんなんじゃねぇよ」

「あ、そうなんだ」

堀さんが顔を真っ赤にして俺から顔を逸らす。

佐上を睨みつけると、佐上は、てへぺろ！てな感じの可愛らしいポーズをきめて誤魔化した。

「ふざけんなぁ！！！！！！！」

久しぶりの再会に変な勘違いされるとか、もうこの世界嫌だぁー。

＊

神庭は、今日、ある少女と会っていた。

「神庭さん遅いですよ」

「すまないな、俺にも用事があってな」

「へえー、小野原學、ですか？」

神庭と少女の会話は、深堀もせず進む、単なる問いかけと答えを繰り返しているだけにしか思えないほど、つまらない会話だ。

ただ、この会話から神庭は、読み取る。

「やはり、君も知っているんだね。小野原學という秀才を」

「秀才？あいつが？笑わせるな」

神庭が秀才と言った男は、今絶賛女子とお喋り中でございます。

秀才、それは、最も小野原學という平坦な存在には合わない。

それでも、神庭は続けて言った。

「あの少年に関わった人間は、みんな変わり者ばかりだ」

その代表が佐上美結である。

「どういうこと？」

「君みたいな、氷結したような存在でも知ってるいる人物で、人を寄せ付ける雰囲気を持ったものなんてこの世に存在するか？まるで、物語の主人公だろ」

その言葉に、不思議と少女は笑みをこぼした。

「氷結は余計だわ、それに、この世界が物語のようなものなんだから、そんなの普通でしょ？」

「そうかな？」

神庭は、心でこう呟く。

――――「僕には、この世界が本物に見えるけどね」