第7話 小野原學はたまに頑張る

佐上の発言に動揺してしまった俺は、ただただ、彼女を見つめるしかできない状態だった。


―――――『先輩は、どのぐらい楽しませてくれますか?』


その質問に、俺は答えを出せていない。

ただ、こう言ってしまいたくなった。

「俺は、お前に正しい楽しいを教えてやれる」

俺の目の前にいる彼女は、目を細めて、俺に問う。

「それは、なんですか?」

俺は、それに答える。


「楽しいってのは、騒いだりする以外にもあって、友達と喋ると楽しいみたいに、努力だったり経験がなにか一つものになったりすると、楽しいんだ。だから、俺はお前に、誰かと楽しいと思えて、本物を作りだせる楽しいをお前にやる」


そう俺は、ハッキリと言った。

この言葉は、傍から見たら、単なる戯言かもしれない。でも、俺にとっては、佐上に通じてほしい大切な言葉なのだ。


「もう、一人で作ってるつうの」

そう佐上は小声で呟いた。

その意味を、俺は理解できなかった。




佐上との話はあっさり幕を閉じた。

明日、佐上が生徒会室に来たら成功だ。

そんな事を考えていると、部屋のドアからノック音がした。ドアを開けると、

「瑞希?」

「お兄ちゃん」

「入っていいよ」

「うん」

瑞希は、パジャマらしき服を着ていた。

いつもの300倍可愛いな。

「あのさ、お兄ちゃん」

「なんだ?」

俺が、存在感を出しながら聞くと、


「あの時の答え、まだかな?」


あの時の答え?なんの話だ?

「なんの話?俺と瑞希でなんかあったっけ?」

「わすれたの?」

「すまん、すまん」

「そっか、お兄ちゃんだって、いろいろ…………なんでもないや」

瑞希は、言葉を濁した。

俺と瑞希は、なにかあったのか?






私は、お兄ちゃんの部屋を出て一回深呼吸をした。

なんで忘れちゃったの?

お兄ちゃんだって、『好きだ』って言ってくれたのに、なんで?


「今いるお兄ちゃんって、本物?」


そんな疑問が沸いた。

「本物のお兄ちゃんを返してもらわなきゃ」


――――――あんな偽物、お兄ちゃん《學》じゃないもん。


すべて、暴いてやる。


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