第6話 佐上美結の存在

翌日、俺は佐上についていろいろ調べた。

佐上は、当然の如くびっちだった。それに、天才だった。

スポーツ万能、成績優秀、スクールカースト一軍、モテる。

これだけ聞けば、俺ら一般市民はこう思うだろう。


――――――――天才や秀才と。


ここまでは、すげぇとしか思わないが、問題は男遊び&規則破りが激しい事である。出来が良い人間ほど、こういうところに甘い。

ブラックリストに載っているほど、問題児らしく。

問題児大嫌い春沢会長も気に留める、というか呆れるほどの問題児らしい。


「先輩、なんでこんなところに呼び出したんですか?」


そう、俺のような一般市民ですら、こんな軽快に話かけてくる。

俺は、佐上を屋上に呼び出した。

「告白なら断りますけど?」

「おい!びっち!よく聞け」

「びっち?私、処女ですけど」

衝撃の事実!?

まあ、それは置いといて、


「これ以上問題行動をなくせ!そして、生徒会に入れ!」


俺の発言に佐上は、クエスチョンマークを頭に浮かべて、こう言った。

「なんでですか?」

これだから、お調子者びっち天才は、嫌いよ!


「だから!お前にはやるべき事があるから」


俺のその言葉をかき消すように佐上は言った。


「それって、私が決めた事ですか?それとも、勝手にできたものですか?」


その言葉にぞくっとなった。

だって佐上は、本当にわからないという顔をしていたから。

天才でもわからない事は、あるんだ。

俺には、理解ができなかった。


この時、俺はこの佐上美結という存在に疑問を抱いた。


「君には、なにが見えてるんだい?」


佐上美結は、無邪気な笑顔で答える。

「私にとって一番、楽しいこと!」


この笑顔には、悪意も汚れも見えなかった。

ただ、ただ秀才と呼ばれる彼女だからこそ見せられる。計算された笑顔だけが、そこには詰まっていた。


「先輩は、どのぐらい楽しませてくれますか?」


佐上美結、君は、誰なんだ?

佐上美結という存在を、俺は見つめた。


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