第2話 妹的生活の始まり

「―――ちゃん、おきて」

腹部に異様な重さが、これは誰かの体重だろう。

「お兄ちゃん、起きて」

少しずつ鮮明に言葉を理解していく。

「う?んん、って誰!」

腹部の人物を確認すると、そこには茶髪で真ん丸の目で小顔な可愛い少女が乗っていた。

「お兄ちゃん、なに言ってんの?瑞希だよ、瑞希みずき

「瑞希?って、えっと」

「夢でも見てるの?」

その瑞希と名乗る少女は俺の事を『お兄ちゃん』と呼んでいた。

「お前、妹か?」

「お前って、そうに決まってるでしょ!今日エイプリルフールでしたっけ?」

本当に神様は叶えてくれたんだ。

「降りてくれ」

「あ、ごめん」

俺には妹がいなかったはずだ。だから、これは神の力。

「もう朝食できてるよ、それにもうパパもママも仕事行った」

「へ?」

そこは変わらず、共働きですか。

「今日って何日?」

「今日?七月五日」

「あ!」

その日は居眠りして数学教師に怒鳴られた日だ。

時間が元に戻って朝からやり直すってところか。

「はやくして」

「ああ、顔洗ってから行くから先行っといて」

家の内装も部屋の風景もほぼ変わっていない、ただ、妹の部屋が存在していた。

「夢、じゃないよな」

頬を抓る。

「ぐ、うぅ、ぎいいい、うぐぐぐ」

普通に痛い。

顔を洗って歯を磨き、リビングに向かうと、妹がいる。

「なあ、瑞希?って何歳だっけ」

「なんでそんな疑問形なの、まあ、14歳だよ、今年15」

「じゃあ、中三?」

「うん」

不自然過ぎるとわかっているが、わからない事しか存在しない、今の俺には。

「隣の家って」

「凛ちゃん家でしょ」

「俺の学校って」

「桜ヶ丘学園高等部」

全部正解だ。そして変わっていない。

「よし、よし、よーーーーーし!!!!!」

「どうしたのそのテンション」

「妹がいるからに決まってんじゃん!」

兄妹、それは俺が小さい頃から今までずーっと欲しかった存在。

それが今、目の前で息をして歩いて喋ってる。

「幸せだ!ありがとう!」

神様!

「なにに感謝してるの?」

「内緒だ!」

「スープ冷めるよ」

「わかってる!」

「うるさい」

「……ごめん」

こうして、俺の妹的生活が始まろうとしていた。

「うめぇ」

「なんなの」

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