3日目午前「本能」
ギャップの中心部に射し込む日光だと思ったそれは、日光ではない、柱のような光に姿を変え、辺り一面を包み込んだ。
少年、少女、そしてオークでさえも怯まざるをえなかった。
徐々に光度は下がる。
そして、それは顕現した。
「オークが...もう一体!?」
少年と少女、二人は絶望した。
ついには少年までもが、地に膝をつけてしまった。
二人の目線の先の、上裸の男は呆けているようだ。
そして男は、こう思う。
どういうことだ?
ついさっきまで俺は、おっさんのオナラを被っていたはずだ。
本当に、別の世界に行ってしまったのだろうか。
そして、目の前にあるこの異様な光景は一体何だろうか。
と。
演劇の様に思えたその光景。
しかし男は、少年と少女の青ざめた顔、そして緑色の巨人に違和感を覚える。
「大丈夫ですか?」
男は少女に近寄ると、少女はさらに怯えた。
「こりゃ参ったな...」
男が困惑し、そしてオークが此方に歩んでくる。
手に持った棍棒、そして見下ろす殺意がこちらを睨む。
男は、咄嗟に危機を覚える。
そして、男の目に文字が浮かび上がる。
-------------------------------------------------
オーク
Lv3
-------------------------------------------------
どういう事だ?
とても日本とは思えない、異様な光景だ。
オーク?よくわからない。
しかし、体が危険を叫んでいる。
このままでは、まずい。
そして、身構える。
理解不能なこの状況下で、本能が疼く。
まるで会社での理不尽さのような、そんなもどかしさを感じた。
鼓動が早くなり、全身から、力が湧き上がるのを感じる。
逃げることも考えた。
―逃げてしまおうか―
しかし、逃げるのは会社だけで十分だ。
―逃げたらこの2人はどうなってしまうのだろう―
弱いものをいじめ、見捨て、その蜜を吸うが如く。
―クソ上司のような人間にはなりたくない―
今までの地獄と、何一つ変わることは無いだろう。
―逃げたら今よりもっと弱くなるだろう―
きっとまた殺されるだろう。
―強くならなければ―
立ち向かわなければ。
―乗り越えなければ―
救わなければ。
―この世界で、俺は生きていく―
この筋肉は、その為にある。
―必ず、この思想は実現する―
そう思えた。
-------------------------------------------------
筋肉痛夫
Lv1
状態 興奮
-------------------------------------------------
地を踏み、あの巨体へと、それは向かう。
一歩、二歩、三歩。
徐々に接近する。
それと同時に、オークは歩むのをやめ、身構える。
見上げる殺意
高鳴る鼓動
拳を握り、左腕の三角筋と二頭筋が緊張する。
そして、また1歩を踏み出すと同時に、硬化した拳を突き出す。
足のつま先から、徐々に内側に捻り、腰、そして肩へと続く。
簡潔にいえば、思い切り殴った。
そして、オークの体の、腹部中部に衝撃が走る。
岩のような感触を覚えた。
そして、指の第3関節あたりにも、衝撃が発生する。
しかし、半裸の男性は怯まず、より強く拳を押し込む。
オークは目を見開き、後方へ倒れる。
暫しの間、それはもがいた後、動きを止めた。
息が荒く、そこから1歩も動かぬ男が気付く頃には、2人の姿はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます