報告書に変えて

 新井少年へ


【筆者】谷渡晴人(たにわたりはると)


 報告書に代えて

 

 今回の一連の騒動について、報告書をまとめろとのお達しにつき、筆を取らせていただく次第となった。

 しかし、一介の高校生である私に報告書のまとめ方なんぞがわかるはずもなく、また上手くまとめられる自身もない。よって正式な書類作成は新井少年に任せようと思う。

 なので私は新井少年に向けて、なるべく見たままに一連の出来事をまとめようと思う。また全て内容は私の一方的な解釈によるところが大きいので、特に他人の心情などにおいては、事実との齟齬が有りうるかもしれない。さらに、今回の騒動が私の心情面に与えた影響は大きく、それについてのことも周辺事情として一応の為に書いておくこととする。不用であるならばその部分についての削除をお願いする。

 今回の様な奇怪な出来事と言うものは、私の様な一介の高校生ではそうそうに経験することは無く、専門的知識と言うものも無い。それに対する誤りの修正は新井少年に一任することとする。

 また、私と同じ立場でもあった雪村風花の意見も取り入れるべきとも考えられたが、今から書かれていくであろう、この文章を見て彼女が怒り出しそうであったということ、なによりこれを彼女に見せるのは大変気恥しいということもあり、彼女に対する聴取は新井少年に一任しようと思う。

 以上の点を踏まえて読んでいただきたい。

 どの時期から書き始めるか迷ったのだが、我が家のエアコンが故障した日からが適当であると思う。

 ではあの日の事から始めるとしよう。あれは七月二十日、丁度僕らの学校の終業式の日の事であった――――。

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