改稿か? いや新作だ!
江戸川乱歩賞に「嗤うケルベロス」を送り、2月を迎えた。
さて次はどうするか。
2月はアガサ・クリスティー賞の〆切りがある。
この時点で星海社FICTIONS新人賞からなんのリアクションもなかったので、落ちたのだと察した。そうなると、応募した「幻影蝶の夏」をクリスティー賞に回そうか、という思考になる。
早速、クリスティー賞の規定である30文字×40行にしてレイアウトを整えた。あらすじは星海社の時のものを流用できる。
ここまでが、2月1日の日中のことである。
その日の夕方。
散歩に出た僕は、不意に女子校を舞台にしたミステリのネタを思いついたのだった。
すぐさまパソコンでプロットを作った。
メインキャラクターのイメージもすんなり掴めた。
……クリスティー賞、これでいくか?
時間的に厳しいが、挑んでみたい。
なぜクリスティー賞にこだわるのかというと、今回から最終選考委員に法月綸太郎さんが入ったことが大きい。法月さんが長編新人賞の選考委員を務めるのは今回が初。以前は短編のミステリーズ!新人賞の選考委員で、わかりやすくも鋭い指摘を連発していた。
重要なのはミステリ部分への言及が多いこと。僕はこれまで、最終選考でミステリ部分に触れられたことがあまりない。それ以前の問題と言われれば何も言えないが、毎回力を込めているところなのでなにかしら言われたい。そういう意味で、法月さんは絶対に触れてくれるだろうと思った。だからクリスティー賞には応募したかった。
その日の夜から僕は執筆に取りかかった。
今回の事件は二つ。
やりたかったのはホワットダニットである。これは「何が起こったのか?」を解明するミステリの一ジャンルだ。
が、これをやると先が見えにくく展開が地味になりやすく、新人賞の応募原稿としては少し弱い。
そこで、まずオーソドックスな殺人事件を起こすことにした。これが第一の事件。これを早々展開させることで物語を引っ張り、物語が中盤を過ぎたところで本来やりたかった第二の事件を起こすという形にした。
今作は百合でもある。
女子校が舞台だから……ではない。アガサ・クリスティー賞を運営している早川書房が百合推しの会社だから……というわけでもない。
探偵役をクールでかっこいい系の女の子にしたら、「主人公(女子)がこの子に惚れないはずがない」と整合性が僕に要請を出してきたのだ。その結果としての百合である(謎理論)
ともあれ11日で原稿が完成した。380枚。推敲して390枚に落ち着いた。
2月は日数が少ない上、月末が土日なので、その前の金曜日までに原稿が編集部に着くようにしたかった。金曜以降に送って東京の郵便局で週明けまで待機状態になる、というのが嫌なのだ。
レターパックを買って原稿を送り出す準備をした。
その間に星海社FICTIONS新人賞の発表があった。
僕の作品は一行でさくっと片づけられており、コメントも正直、納得できなかった。不完全燃焼のモヤモヤ感だけが残り、そのうちミステリ専門の賞にこの原稿を送って反応を聞きたいと思った。それでも一次落ちなら僕の感覚がおかしいということだ。傲慢な態度かもしれないが、どうにも釈然としなかったのだ。
クリスティー賞原稿の推敲時間も限られていた。
なんとか完了して、2月の最終木曜日に原稿を送付。追跡サービスで翌日に到着したことを確認した。
江戸川乱歩賞の原稿は2020年に書いたものだから、これが21年最初に書いた原稿ということになる。
長らく苦しんできた350枚を軽く超えられるようになったのは成長だったが、万全の状態で送れたとは言いがたい。
とはいえ、賞レースは参加しなければ始まらない。ひとまずはよしとしようと思った。
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