2021年

応募直前は精神が不安定になる

 年が明けて2021年。

 1月末日〆切りの江戸川乱歩賞まで時間があった。


 僕は2週間ほどゲーム「討鬼伝」をやって、小説のことを頭から切り離した。


 そして15日になってから推敲を始めた。


 やはり〆切り直前に書き上げるより、時間に余裕があると違う。そう感じた。冷静に物語を見ることができたので、追加すべきセリフやエピソードなどが次々に浮かんできた。


 前後に噛み合っていない場所があったら即座に修正。

 その次は誤字のチェックだ。びっくりしたのは解決パート、探偵がしゃべっているシーン。ここの一部にを打っておいたのだが、そこに脱字があったのである。ありえないミスだった。


 そうして1月も最後の週になった。

 推敲も完了し、あとは応募するだけ。

 だったのだが、僕は不安に襲われていた。


 本当に孤島ミステリで乱歩賞に応募するのか。

 歴代受賞作の中に孤島ものは一つもない。

 対して、メフィスト賞ならばたくさんある。そっちの方がいいのではないか。


 〆切り直前になって、そんな迷いが出てきてしまったのだった。


 とにかくメンタルが安定しない人間なので、母と弟にも相談した。こういう作品で賞の傾向はこんな感じなんだが、どうすべきか。


 家族は僕の作品を読んでいないから、答えを出しにくい相談ではあった。ただ、受賞作にそういうものがあるならメフィスト賞の方がいいのではないか、と家族は言った。


 僕もその気になり、応募は来月に回そう、と本気で考えた。


 しかし、それはそれでもやもやする。

 乱歩の『孤島の鬼』がきっかけで書けたのだから、乱歩賞に出すのではなかったのか。


 毎日真剣に考えた。

 そして、最初の気持ちを大切にしよう、と決意した。

 家族にも話し、戸惑わせてすまんと謝った。


 そういうわけで急いであらすじを仕上げ、江戸川乱歩賞にウェブから原稿を応募した。〆切りの数日前のことである。


 原稿の体裁だが、僕が使っている「一太郎」の書式は規定に入っていないのでPDFに変換した。他にWord形式とテキスト形式があったが、Wordは読み仮名を振ると行数がずれるのをうまく調整できない。テキストは傍点が振れない。なのでPDFが間違いないという判断だ。


 2013年以来の江戸川乱歩賞挑戦。

 出してみたら、この大きなレースに参加することができてよかったじゃないかという気持ちが強くなった。結果はともかく、出した意味はある。選択に後悔はなかった。

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