パソコンを買う/ネーム原作ふたたび
コロナウイルスが爆発的に拡大して、ついに緊急事態宣言が発令。それを受けて、4月下旬に冬季休業が開けるはずだった職場は、5月いっぱいまでオープンを延期した。
ちょうどラブコメの連載を始めた頃だった僕は、ある問題に直面していた。
パソコンの動きが死ぬほど重くなったのだ。
徐々に弱りつつあるのは感じていたが、作業に影響が出るほどの遅延が多発し、さすがに買い換えないと駄目だろうと判断した。
三代目はLENOVOだったのだが、二代目のPCデポオリジナルマシン
ゴールデンウィーク、感染におびえながらPCデポに出かけた。これは不要不急の外出ではない。PCが動かなくなったら、せっかく始めたラブコメが書けなくなる。その他、小説の執筆も不能になる。……なんてまた見えない誰かに言い訳しながら。
10万で買えるちょうどいいスペックのPCが見つかり、無事に買い換えは終了した。この文章も四代目のOZZIOで書いている。
しかし、PCを新調しても、新人賞向けの原稿は書けそうになかった。
そのまま5月中旬を過ぎた。
漫画脚本大賞の選考がコロナの影響で送れており、22日の週刊少年マガジンで発表されることになっていた。この時期になんの連絡もないということは落ちたのだろうと察した。
4本、まったく方向性の違う脚本を出して可能性をアピールしたつもりだったが、及ばなかったようだ。
その中の一つ、「花修羅丸伝」には格別の思い入れがあった。小説が書けない間に徹底的に設定を作り込んでいて、1話の遙か先のストーリーまですでに出来上がっていた。未知の侵略者達がどういう理屈で出現したのかまで考えてあった。
この作品をどうにかできないだろうか……と考え、「ネーム原作に起こしてみるか」と不意に思いついた。
2018年にヤングマガジンに持ち込んで以降描いていなかったネーム原作。
やるか!――決まってからは早かった。
コピー用紙を引っ張り出し、勢いで書き始めた。
どこの新人賞に応募するというあてもなかったのだが、一応連載の1話をイメージした。
初稿は三日で書き上げた。母と弟に見せて感想を聞いてみる。弟は戦闘狂の主人公を気に入ってくれたが、母はバトルが多すぎて疲れる、という。
手元にある少年誌の漫画の1話を読み返して気づいた。確かにバランスが悪いかもしれない。
そこで初稿の60ページ分は全ボツにして、第二稿を描いた。
今度はバトルを終盤の一回にまとめ、前半は説明を入れつつもテンポ良く進める。
あらためて見せると、次は母も「いい感じになった」と言ってくれた。
あとはこの原稿をどうするか。
情報を集めて回った末に、ツイッターで週刊少年マガジンの某編集さんにダイレクトメッセージを送った。
「原作者志望なのですが、ネームを読んでいただけませんか?」――と。
コロナで漫画の持ち込みができなくなり、SNSで志望者に対応している編集さんが多かったのだ。
その方は「喜んで!」と返信をくださった。
僕はすぐさま原稿をスキャンして、大容量アップロードができるサイトにデータを載せた。あとは編集さんが回収して読んでくれるわけだ。
「明日の昼過ぎに電話で感想をお伝えします」とDMがあったので、翌日はドキドキしながら待っていた。
しかし……電話はかかってこなかった。
かかってきたのはその次の日の夕方だった。編集さんが忙しいのは知っているけど、そちらが時間を提示してきたのだから、できれば、その……守ってほしかったですね(苦笑)。
さて、その電話だが、いきなり「このネームで何を描きたかったのか?」を問われた。
僕は、「戦国時代と、戦う女の子が描きたかった」と答えた。
編集さんは「うーん」と唸ってから言った。
要約すると、バトルものを描くならネーム原作者にも最低限の画力がほしい。そこに届いていない。現状、作画家さんに負担してもらう部分が多すぎ、それでは漫画原作者の仕事量としては圧倒的に足りない。――ということだった。
内容以前の話であった。
それで電話が終わりそうになったので、僕はその寸前、
「この話、ライトノベルとして書くのはありでしょうか?」
と訊いた。
「それならありですね」とのこと。
電話が切れて、僕のやる気には、実に久しぶりに灯が灯った。
この作品をラノベとして書き、新人賞に送る。
絶対に完成させる。
長らくできていなかった、新作長編を書く。
固く決意した。
その意味で、上半期のターニングポイントとなった1週間であった。
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