この主人公は人の上に立たせるべき
ファンタジア大賞一次落ちを食らった僕は、電撃大賞を目指してプロット作りを開始した。
キャラクター設定はこのまま、世界観もほぼ同じでストーリーをまったく別のものにする。その方向で進めることにした。
だが、何かもどかしい感じがする。
なんだろう、としばらく考えて、この主人公は海賊団のトップに置くべきなのではないか? と思った。
『蒼海の黒刃』では、船長や副船長がいて、主人公はそういったキャラクターの指示に従って行動するシーンが多かった。
せっかく地上の法にとらわれない、自由な海賊なのだ。
どうせなら、主人公ももっと自由にさせた方がいい。そんな気がした。
キャラクター設定を変更した。
思い切って船長を物語から外し、主人公をトップに君臨させる。
『蒼海の黒刃』では、主人公は商船の雑用から海賊に移っている。そのため海賊の掟や街の説明をメインヒロインにさせたわけだが、最初から海賊ならば、煩雑な説明をすべて取っ払うことが可能だ。
するとメインヒロインも主人公を導く立場ではなくなる。
考えた末、このメインヒロインをめぐる物語にしようと決めた。
主人公たちは一風変わった海賊団だ。略奪はするが、無駄な殺しはしない。食料は奪うが、航海に必要な資材は奪わない。そんな掟を持つ主人公たちの船は、一仕事終えたあと、漂流中のボートを発見。そこにはメインヒロインが乗っている。父親が船長をしていた商船が反乱で乗っ取られ、自分は捕まっていた。しかしわずかな隙を突いて逃げてきた。
冒頭はこうしよう。
ヒロインは商船の娘で、語学に堪能。
船を乗っ取り海賊と化した敵集団は、新たな土地へ逃げるためにヒロインの能力を当てにしていた。なので、主人公たちを追ってくる。いったんは逃げ切ったかに思えたが、入った港で不意討ちを受けてヒロインをさらわれてしまう。主人公たちは数日のあいだにヒロインとの親交を深めていて、あんな奴らに渡してはいけないと追跡を開始する。
中盤から終盤まではこの流れで。
壮大な(笑)鬼ごっこの末、やはり奇襲をかけた主人公たちはヒロインを助け出すことに成功する。だが、彼女の父親はもう戻ってこない。誰もが声をかけられずにいると、ヒロインが、海賊船になってしまった父親の船を沈めてほしいとお願いしてくる。こうして過去と決別したヒロインは、主人公たちの仲間になって新たな人生を歩み始める――。
これにてエンド。
難点があるとすれば、舞台が異世界というだけで他のファンタジー要素が一切ないこと。
しかし、電撃大賞にはメディアワークス文庫賞というものがある。メディアワークス文庫からはたまに異世界ファンタジーが出ているし、カテゴリーエラーにはならないだろうと判断して原稿を書き始めた。これも楽観の一つと言えるかもしれない。
一次落ちを引きずったので、本編に着手したのは二月の半ばからである。
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