2011年

最初はみんな一次落ちだよね(震え声)

 2011年になった。

 僕は年明けから落ち着かなかった。


 昨年八月に応募したファンタジア大賞の一次通過者が、一月発売の『ドラゴンマガジン』に掲載されるからだ。


 毎日そわそわして、ネタ出しもうまく進んでいなかった。


 倒れて以降、非常に神経質になっていたので余計気になってしまうのだった。


 そして、ついに発売日がやってきた。


 ちょうど母親が仕事のない日で、乗せてってやると言ってくれた。


 書店に入った僕は、とりあえず『ドラゴンマガジン』だけ確保してすぐ車に戻った。


 パラパラとページをめくっていく。


 すると、結果発表のページが現れた。


 僕は目をこらして自分の名前を探した。


 気のせいだろうか? どこにもないように見えるのだが……。


 何度も繰り返し確認した。けれど、結果は当然ながら同じだった。


「ない……」


 僕の名前は載っていなかった。


 一次で落ちたのだ。


 隣の母親に「駄目だった……」と伝えると、「まだ一回目だし、最初はみんなそんなもんじゃないの?」と励ましてくれた。


 そうか。一回目だもんな。いきなりうまくいくわけないよな。


 ――と思って諦めがつけば楽なのだが、そうはいかない。


 心のどこかでは、まあ通るだろうと楽観している自分がいた。それがどんなに甘っちょろい考えだったか、これ以上ない形で叩きつけられたのだ。


 悔しいし、情けなかった。


 キャラクターたちには特に思い入れがあった。挫折から再起し、ようやく書けた作品なのだ。彼らの話をこれで終わりにしてしまうのは耐えられなかった。


 ――書き直しちゃ駄目なのかな。


 ふと、そんなことを思った。

 僕はもう一度、あのキャラクターたちを動かしたかった。


 ちょっといじるのではなく、同じキャラクターを使ってまったく別の話を書こう。そしてそれを電撃大賞に送ろう。


 次作の執筆はこんな経緯で始まった。

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