-4-

日が高いにも関わらず薄暗い。

鬱蒼とした森林は歩ける程度の間隔はあった。

だが奥は暗く見通しはよくない。

土壌が広くシュトラムに汚染され、異常発達した森林。

森は見る間に姿を変え、中に入るものにあらゆる存在が牙を剥く。

血の匂いに飢えた獣が集う。

さらに牙を剥くのは獣だけにあらず。

実った果実は齧った者を物言わぬ肉塊とする。

脈動する蔦は絡めた物の生き血を啜る。

人々に役立つ薬草や素材が豊富な一方で、

入り込む者を迷わせ、食い物にせんとする存在。

その森は故に悪意の森と呼ばれていた。

四人は森の中を延々と歩き続ける。

地図によれば中枢まで残り半分といった所だった。

ブロードは地図と目印を交互に確認しつつ進む。

その後をシェリーとフギン、最後尾にアネットが続いていた。

「おっと、薬草だ」

「またなの?」

「これは傷に効くんだ。いくらあっても困らない」

ブロードは時折足を止めては薬草を取っていた。

地図と目印はこれまで多大な犠牲を払ってきた冒険者たちの、

文字通り血と汗と涙の結晶ともいうべき成果である。

これによって命がけだった森の探索の生還率が格段に上がっていた。

だが森の中枢は未だに地図を作れていなかった。

中枢への捜索はこれまで幾度なく行われていたが、

生還率が段違いに低く遅々として進んでいないのが現状である。

まずは地図でわかる範囲で冒険者の捜索を行うことにした。

「おお、これは月光草だ。運がいい」

「ブロード、こっちにミラス草もありますよ」

「マジか、それも取ろう」

「ブロード、このイチゴがおいしそうですよ」

「それはイチゴに似せてある猛毒の実じゃないか!」

「あら、引っかからなかったですね」

成果はブロードの薬草袋の中身が増えたくらいであった。

「あの……ブロード」

シェリーが堪らず声をかけ、慇懃に注意をする。

「もう少し真面目にしてくれない?」

ブロードはアネットの顔を見る。

「一応、ちゃんとやってるつもりだけど」

「薬草ばかり取ってるじゃない」

ブロードは目を逸らして、いやまぁ……と言葉を濁す。

「珍しい薬草は取らないともったいないし、手がかりを探すのにも繋がるし」

「本来の目的から逸脱しすぎよ」

シェリーはじっとブロードを睨む。

アネットに視線を飛ばすが彼女は微笑を浮かべた。

自分で何とかしろということである。

「まぁここまで何もなく進めているんだ。とりあえずいいだろう」

フギンが言うとシェリーも渋々といった感じに黙った。

「それはそうと顔は大丈夫そうだな、ブロード」

「かかりつけの魔女にもらった薬で腫れは引いたんだ、あいつの薬はよく効く」

「それはよかった、腫れた顔を見て罪悪感を覚えずに済むというものだ」

「この仕事が終わったら塗ってもらうといい。のた打ち回るくらい沁みるぞ」

フギンは笑う、お前が俺を顔中が腫れるくらい強くなれたらなっと笑いながら言った。

さらに四人は奥へと進んでいった。

ブロードは地図を確認する。

地図に載っている最後の目印まで後わずかというところだ。

太陽はよく見えないが、日が落ちるまでまだ時間はありそうだ。

「後少しで最後の目印だからそこまでは歩こう」

ブロードはそういって再び歩き出すと視線にあるものが映る。

本来あってはならないもの。

見ないようにしなければならないもの。

地図にも絶対危険地帯としてマークされ、それを避けるように進んできたはずである。

なぜだ、地図にこれは無かったはずだ。

何かの見間違いであることを祈るが、場所は間違っていない。

どうする、冷や汗が噴き出る。

一瞬だけ思考をしてから叫ぶ。

「みんな、息を止めろ!口と鼻を塞げ!今すぐ!!」

ブロードは手で口を塞ぐと地図を凝視する。

「幻惑蝶だ、次の目印まで走る。息継ぎをするな、鱗粉を吸ったら死ぬぞ!」

言うとブロードは方角を確認して走り出した。

突然の事に驚く三人をアネットは目線で急かす。

ブロードの後を追って四人は走り出した。

草木に足を取られながら、懸命に走る。

息をしないよう必死に走る。

足音がするのを聞きながら走るがその余裕も無くなる。

やがて目印が見えてそこで一気に息を吸い込んだ。

がっくりと膝を落として肩で息をする。

少しすると足音が聞こえる。

草木を掻き分けてきたのはシェリーだけだ。

ブロードを見ると口を大きく開けて息を思い切り吸い込む。

「……アネットとフギンは?」

答えは返ってこない。

シェリーは辛うじて首を横に振る。

来た道を見つめるが、闇が帰ってくるだけだ。

だが足音が聞こえてきた。

何かを引きずるような音も混ざっている。

「どいてください!」

アネットはフギンを抱えて現れた。

フギンは力なくアネットに抱えられており、

二人がどいた場所へと寝かされる。

その目は虚ろ、口からは涎を垂らしうわ言と呟く。

手足は力なく動くが、抑えていないと立ち上がろうとする。

「何……これ……」

シェリーの顔が恐怖で引きつる。

「幻惑蝶の鱗粉を吸ったんだ」

幻惑蝶は森の中をあるルートで周回している。

そして鱗粉を吸った動物はどういうわけか幻惑蝶と同じ道を歩き続ける。

飢えも乾きも感じず、ただただ幻惑蝶を追うだけの存在となる。

力尽きて餓死するまで幻惑蝶を追い続けるのだ。

「シェリー!ヒールはできるか!?」

「ダメ、傷を塞ぐことしかできない」

「ならどうすればいい!」

アレスも顔を引きつらせている。

幻惑蝶の鱗粉に効く薬は開発されていない。

生け捕りにすることすら成功していないのだ。

「ブロード、幻惑なら気付け薬が効くんじゃありませんか?」

「そうか、だが効くかな。道具もないし……」

アネットの言葉にブロードは弱気な回答だ。

「ブロード、あなたがやらないと彼はここで死ぬしかないのですよ!」

強い口調でブロードを励ますアネット。

少ししてブロードは覚悟を決める。

「わかった。やれるだけはやろう」

言うと薬草袋から数種類の薬草を取り出す。

「吸った粉は少ないから今なら間に合うはずです」

「これを混ぜれば即席の気付け薬になる」

「口に入れて噛み混ぜてください!」

ブロードの顔が歪む。

意味がわかったシェリーも顔を引きつらせた。

だが生死がかかっている以上、背に腹は変えられない。

ブロードは薬草を口に放り込み咀嚼する。

余りの苦さに涙を溢しながらも、即席の薬を作り上げる。

「抑えててくれ、凄く暴れるぞ」

ブロードは手にした薬を二人に抑えられたフギンの口に押し込む。

水も含ませて、口を閉じ無理やり飲ませる。

「―――――!!」

声にならない悲鳴が上がる。

三人がかりで押さえつけているにも関わらず体が浮き上がる。

「吐くな!飲め!」

ブロードは必死に口を押さえる。

しばらくするとフギンはおとなしくなった。

「大丈夫か?」

少しするとフギンはうっすらと目を開ける。

「水、いりますか?」

シェリーの言葉に頷く。

薬が上手く効いたようだ、ブロードはほっと脱力する。

「よくやりましたね、ブロード」

ブロードは脱力した。

「うう……頭いてぇ……」

フギンの呻きが聞こえる。

本能すら変える幻惑から覚めたのだ、無理もない。

ブロードは一握りの薬草を取り出す。

「こいつが痛み止めになる。よく噛んで飲み込め。

 苦いのは我慢しろ、あと腹が下るから気をつけろ」

フギンは起き上がるとゆっくり薬草を噛み始めた。

「あなた、本当に薬草について詳しいのね」

シェリーから貰った水を飲んでブロードは答えた。

「掛かりつけの魔女に教わったんだ。

 貴重な薬草がわかれば金になるし、緊急時に役立つ」

理屈はわかるが、その場で薬を調合して治療するのは本職の魔女並みの技量と知識が必要だ。

魔女というのは薬草を使わず呪文による破壊を専門にする者も数多く存在する。

冒険者や傭兵と交流の深い魔女はそうした破壊の権化たる魔女が大半なのもあり、

ブロードの知識量は珍しく映った。

「……ブロード」

「大丈夫か?」

「ああ……助かった。感謝する」

「いいさ、これも仕事だ」

「大分よくなったから、もう大丈夫だ」

ブロードはフギンの肩を軽く叩く。

「帰ったらもっと苦くて効く薬を飲ませてもらうといい」

フギンが力無く笑うと、他の三人もつられて笑みを浮かべた。

地図にない中枢へ向けて進む。

地面に目印を埋めつつ、慎重に進んでいく。

長く生えた草を切り開き、方角を確認しながら進む。

飢えた獣を威嚇し追い払う。

少しづつ奥へ、未開の地へと進む。

人間が踏み入る事が少ないため、五人は警戒心を強める。

「ブロード」

アネットの声がする。

ブロードにぎりぎり届く程度に細く、しかしはっきりした声だ。

彼は立ち止まる。

どうしたっとは言わず、耳を澄ませる。

木々のさざめき、小動物の足音、虫の羽音、音を聞き分ける。

これか。

ブロードが感じた音は、草を踏み潰す足音。

音の間隔で歩幅が大きいことがわかる。

大きな獣が歩いてくる。

そしてこちらに向かってきている。

「こっちに来る」

そういってブロードは剣を構えた。

四人も習って武器を取る。

暗がりに赤い目が光る。

悠然と歩み出るは四足歩行の獣。

灰色の体毛、尖った耳、そして伸びた口と並ぶ牙。

見た目は狼、だが普通のそれの二回りは大きい。

シュトラムの影響で怪物となった獣だろう。

狼は顎を鳴らし、こちらを威嚇する。

衝突は避けられない。

五人が覚悟を決め、狼と対峙する。

すると狼は突然、“立ち上がった”。

日本の後ろ足で前かがみに立つと巨人のようであった。

「ワーウルフか!」

狼男とも呼ばれるそれは大きく吼える。

身が縮こまる。

瞬間、ワーウルフが跳躍。

4人が並ぶ列の真ん中に空から強襲してくる。

ブロードたちは突然の跳躍に反応しきれず、その腕に弾かれる。

甲高い悲鳴と同時にワーウルフへ視線を戻す。

「シェリー!!」

フギンが叫ぶ、ワーウルフは尻もちをつくシェリーを頭から食いちぎろうとしていた。

声にならない咆哮を上げたフギンは果敢にもワーウルフに飛び掛かった。

口の間に体を捻じ込み、つっかえ棒のように口を塞いだ。

無茶だ、ブロードは驚きを通り越して冷静な思考が過る。

振り払われるならまだしも、そのまま体ごと噛み砕かれかねない。

一刻も早く助けないと危ない。

だがワーウルフは頭を数度振って外せないと見るや、再び跳躍して森の奥へ疾駆しだした。

足音が急速に遠ざかる。

「くそっ!」

ブロードは両足に意識を集中させ、グリーブから光が漏れ出す。

「アネット!後頼む!」

言うとブロードは地面を蹴り、森の奥へと飛び出した。

獣が草木をなぎ倒す音を頼りに森を走る。

地面が悪いため、走るというよりは前に飛ぶように進んでいた。

ブロードはフギンを呼びかけながらさらに進む。

やがて広く開けた場所に出た。

木々がないため明るくなる。

ワーウルフはこちらを視認すると、フギンを再度揺さぶり乱暴に放り捨てる。

フギンは木に打ち付けられる。

苦しそうに呻いているが、息はありそうだ。

ブロードが一人になったのを好機と見たようだ。

「小癪な」

そう言って同時に、かなり知能が発達しているなと彼は分析する。

ブロードはバスタードソードを両手で握り締める。

ワーウルフは足を止めて、前足をなぎ払う。

後ろに飛びずさるが、背中に木々が迫るため、

ずっとそうするわけにもいかない。

前足にあわせてブロードは踏み込み、剣を合わせる。

「ぐぅ!」

返しの斬撃でワーウルフを後退させたが、腕はビリビリと痺れている。

全開でいくか?

覚悟を決めて、意識を集中しようとすると背後から声がする。

「ブロード!無事!?」

シェリーだ。

「手が足りない!フギンを頼む!」

ブロードは振り向かず叫び、さらに攻撃を剣で受けた。

シェリーは彼の脇を走り抜けて、フギンの元へ駆け寄る。

短い言葉の意図を考える、答えはすぐに出た。

先端に宝石のついたメイスを構え、祈りを捧げる。

「神の御心において奇跡を求む、かの者に癒しを!」

呻くフギンを光が包む。

シュトラムの宝石を介して術者の精神力を変換し傷を癒す技法、

教会では癒しの奇跡と呼ぶ、冒険者の間では専らヒールと言われていた。

ブロードは剣を振るってワーウルフの攻撃を凌ぐ。

しかし防戦一方で何度か体に傷も負っていた。

ワーウルフは明らかに楽しんでいた。

獲物をいたぶり弱らせて最後に追い詰める過程を楽しんでいるのがよくわかった。

だがブロードとしては好都合だった、時間を稼ぐには遊んでてもらうのが一番いい。

ちゃちなプライドをかなぐり捨てて全力で防戦していた。

だが攻撃を受けきれず、地面に転がる。

そこに握り拳を作った前足が振り下ろされる。

「よくやった!」

前足が振り下ろされる直前、ワーウルフの背に刃のついたメイスが直撃する。

ワーウルフは苦痛に呻き、体制を崩す。

その隙にブロードに駆け寄り、体を起こす。

「助かった」

「これで貸し借り無しだぞ」

二人は笑みを浮かべて武器を構える。

フギンが先陣を切り、突撃する。

メイスで前足を受け止め、大きく振られた逆の前足を盾を振り回して弾き返す。

体力を消耗しているはずなのに凄まじい怪力にブロードは関心する。

ブロードはワーウルフの懐に入り込み、バスタードソードを振りぬく。

ワーウルフが後ろに飛びずさり、それをブロードとフギンは追撃する。

いける。

そう確信したブロードが一気に懐へ潜る。

後ろでフギンが構えてる

だがそこにワーウルフはなんと後ろ足で膝蹴りをしてきた。

不意をつかれたブロードが地面を転がる。

さらに大きく腕を振ってフギンを正面から叩きつける。

勢いの乗った一撃を盾で受けるが堪らずフギンは殴り飛ばされた。

体勢の崩れた二人にワーウルフが飛び掛らんとする。

そこに一筋の閃光が走る。

ワーウルフが苦痛に吼えた。

シェリーが光の玉を放ったようだ。

鞘の先の宝玉が青く輝いている。

教会では裁きの奇跡と呼ぶ技法だ。

だが奇跡的にワーウルフを倒せたなんてことはなく、

顔は焼け爛れているが致命傷には至らない。

視線をシェリーへ向けると襲い掛かろうとする。

ブロードは体を起こすと左腕をワーウルフの背に向ける。

二の腕の先がロケットのように分離して飛び出す。

ブロードの義手に仕込んだ“義手射出機構”だ。

ロケットパンチといわれることもある。

腕はワーウルフの後頭部を握り締める。

飛び出した腕はワイヤーで繋がっており、

ワイヤーを巻き取ってブロードも飛び出す。

振り払おうと闇雲に頭を振られるが、

ブロードはワーウルフの後頭部に乗り移る。

右手に握った剣を頭につき立てた。

悪意の森を獣の絶叫が響く。

暴れ狂うワーウルフ。

ブロードは振り落とされ、地面に転がる。

やがてワーウルフはがくりとうな垂れる。

「やった……!」

ブロードが呟き、体を起こす。

だがワーウルフはブロードへ咆哮を上げて襲い掛かる。

浅かったのか、そう思う間もなく牙が眼前に迫る。

シェリーの悲鳴が聞こえる。

フギンが名を叫ぶ声が聞こえる。

―グオオオオ!!

だが牙が届くより前にワーウルフが仰け反る。

「間に合いましたね」

ブロードの背後の木陰からアネットが現れた。

彼女の愛用するボウガンがワーウルフへ向けられている。

グゥオンっと風を切る音と共に矢が飛び出し、

頭に刺さった矢の隣にもう一本が突き刺さった。

さらなる悲鳴を上げるとワーウルフは四足で駆け出す。

木々の間に飛び込み、足音が遠ざかる。

「おせぇよぉ……」

それを見たブロードは地面に体を投げ出し、文句を言う。

「でも間に合ってくれたのは流石だ。サンキュー」

「あなたも、よく頑張りましたね」

二人は笑みを交差させていた。

「皆さん、大丈夫ですか?」

アネットはシェリーたちへ駆け寄る。

「俺は平気だ。癒しの奇跡を受けた。それよりあいつは?」

「彼は傷は多いけど浅いです。少し休めば平気ですよ」

「よかった……あ、私も平気よ」

アネットはフギンに歩み寄ると体を触って傷跡を探す。

「お、おいおいなんだ?」

「……正直に答えてください。ワーウルフに噛まれましたか?」

フギンとシェリーの顔が強張る。

ワーウルフに噛まれた人間は感染することがある。

感染した人間は潜伏期間を経て変貌する。

自意識を失い、体は血肉を求める獣となる。

すなわちワーウルフとなるのだ。

二人の顔が強張ったのは最悪の事態、

フギンがワーウルフとなることが頭を過ったためだ。

「……恐らく噛まれていない。唾液は被ったが鎧を噛み砕く程に力は入れられなかった」

フギンの言葉をシェリーは不安そうに聞く。

「唾液だけでも傷口から感染することはあるぞ」

歩み寄りながらブロードが言ってきた。

「だが潜伏期間は数日あるし、直接噛まれてないなら血清を打てば発症しないはずだ」

「そうですね、噛まれたワーウルフから血清を作るのが一番確実ではありますが」

「最悪は量産されてる血清でも治せる。時間はかかるかもしれんがな」

だから気にすることはないっとブロードは言った。

「そうか」

「だけど大分消耗したなぁ」

ブロードはため息と共に言う。

幻惑蝶、ワーウルフとの戦闘で四人の体力はかなり削られていた。

「そうも言ってられんぞ」

フギンは立ち上がって言う。

彼の目線を追うと木陰から獣が唸りながら歩み寄っている。

血の匂いに引き寄せられたのだろう。

飢えた獣たちに手負いの彼らは恰好の餌食だ。

「とにかくここを離れましょう」

「アネット、道は!?」

「戻る目印はつけてあります。けどここから戻っても森の外にはいけません」

「入口まで戻っても闇雲に逃げても力尽きてあいつらの餌になるだけだな」

問答の間も獣は迫る。

ブロードとフギンが獣を牽制するがじりじりと近づく。

「こっちだ!ついてこい!」

森の奥、獣と対峙するブロードたちの背後から声がする。

男が誰か、敵か味方か、そんなことを考える余裕は無い。

人間だ、それだけで十分だった。

「走れ!」

ブロードは叫んで、男を追う。

それを聞くまでも無く三人は森の奥へ走り出す。

飢えた獣の雄叫びが頭に響く。

男の背中を追いながら雄叫びが遠のくのを祈った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る