第6話 修行の日々

としょかんでのルール説明とペア組み分けが終わり、ツチノコとスナネコはさばくチホーに戻っていった。


地下遺跡とスナネコの家の間にあるバイパスにて二人の声が響く。


「修行といっても具体的になにやればいいんですかね」


「…確かにそれは悩むとこだな」


スナネコの疑問になにも答えを返せないツチノコ。


「うーん…とりあえずお前の体術の腕を見てみたい。だからオレと組み手をするぞ」


「組み手…ですか」


「ま、まあ組み手と言ってもお前の体術でオレに攻撃をしてみろってことだ。それでお前の実力を見極める」


「なるほど。それは面白いですね。じゃあ早速」


スナネコは予備動作無しでいきなりツチノコに拳を振るう。


「うあぶね!」


しかしツチノコ、それを体を逸らしてギリギリ避ける。


「待て待てスナネコ!オレが合図してから…」


ツチノコがスナネコを諭そうとするが、聞こえてないのかスナネコは、ツチノコに躱された拳の勢いをそのまま乗せて後ろ回し蹴りを繰り出す。


「うおっ!」


それをツチノコは両腕をクロスして受け止める。そして後方にひとっ飛びし、スナネコと距離を取る。


「準備もさせてくれねえのかお前は…」


ツチノコは言いながらもスナネコの次の攻撃に備える。


「逃げないでくださいよー」


スナネコはそう言いながら拳を構え、ダッシュで距離を詰める。


そしてそのダッシュの勢いを生かした渾身のパンチをツチノコの脇腹に叩き込もうとしているようだ。ツチノコはそれを避けようと構える。が、


「なにっ!?」


スナネコの放った拳はツチノコの目の前を通過する。そもそも当てる気がなかったように。そしてそこから空ぶった勢いを思いっきり載せ、体を捻り裏拳を繰り出す。


「うおっ!」


焦りつつもツチノコはその裏拳をしっかり両手で受け止める。


「ほほう、これにしっかり反応するとは流石ですねツチノコ…」


「流石じゃねえよ…。本気じゃねえかお前」


「そりゃ、本気じゃないと強くなれないですしね」


裏拳をガッチリと掴んだまま二人は会話をする。


「ツチノコも本気で受けてくださいねっ!」


スナネコはそこから更に捻った体を戻しながら拳を繰り出す。


ツチノコはそれを身を屈めて躱す。


だが、屈んだ体にスナネコの膝が容赦なく接近する。


ツチノコはこれをまたもバックジャンプで回避する。


「むー、ちょこまかと逃げないでくださいよ」


「躱さねえと一発食らっただけでだいぶ来そうだからな。オレも全力だ」


「でしたら、あなたの全力をもっと見せてください!」


スナネコは接近しつつ、反転してツチノコに背を向けながらジャンプする。


「せいっ!」


そして渾身の回転蹴りでツチノコを狙う。


ツチノコはこれを身を少し後ろに逸らして避ける。が、スナネコは回し蹴りで着地した足をバネにし、更に接近しツチノコの顎に向かってムーンサルトキックを狙う。


ツチノコはこれもバックステップで避ける。スナネコの体はムーンサルトの勢いで空中に投げ出される。スナネコはこの勢いで空中で体を一回転させ、またツチノコに膝蹴りを浴びせる。


ツチノコはこれを横っ跳びで回避する。そして、


「そこまでだスナネコ!お前の実力がよく分かった!」


どうやら組み手は終了のようだ。


「えー、もう終わりですか。せめて一回は攻撃を当てたかったです」


心底悔しそうにスナネコがつぶやく。


「それはどういう意味だよ」


「だって、ここで攻撃を当てれたらそれだけでツチノコの期待値アゲアゲになると思ったんです」


「そんな事か。気にしなくていいぞ」


「え?」


ポカンとするスナネコにツチノコが言う。


「お前は身体能力が高く、相手の心理を付いたフェイントがかなり得意のようだな。

だが、それを生かすにはまだスピードが足りない。そして威力もまだ不足気味だ。だからお前はもっとスピードをつけ、相手に防御の姿勢を取らせないようにするんだ。そして威力も強化し、相手に反応され、防御の姿勢を取られてもそれを丸ごと打ち砕いてやれ。お前なら出来るはずだ」


「は、はい。頑張ります」


お思いがけないガチな指導に少したじろぐスナネコ。


「よし、じゃあ今日の特訓はフリーとする。お前がやれそうな修行方法で力をつけてみろ。良さげになったらオレに言えよ」


「わ、わかりました」


スナネコはそういうと自分の家の方へ駆けて行った。


「あいつ、いつも半端に飽きるのに、これだけは飽きそうにない感じがするな…。あんな本気な目をしたスナネコを見たことがない」


スナネコが駆けていくのをなんとなく眺めていたツチノコが、一人バイパスに声を響かせる。


「だからこそ、アイツに追い抜かれないようにオレも特訓を重ねるとするか」


ツチノコの足にサンドスターの輝きが宿る。


「遺跡に巣食うセルリアン共よ。少しのオレの相手をしてくれよ」


そういうとツチノコは暗闇のバイパスを全速力で駆け抜けて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る