第一章 加藤心愛 6

 ライトとココアは、結局二十時過ぎまでうちにいた。腹が減ってきた頃にライトの一番上の兄貴から電話が掛かってきて、なかなか帰る素振りを見せないココアも一緒に追い出す。貸したスウェットはそのまま着せて帰すことにした。元々ココアが着ていた服はまだ乾いていないし、所詮1980円の安物だ。ライトは元々自分の服なのでそのまま帰った。その頃には雨も止んでいて、見上げれば星がキラキラ光っていた。

 帰る直前玄関先で、ココアの細い後ろ姿に聞いてみる。

「加藤、お前学校に来ないの?」

 その問いかけに、ココアはなんとなく困ったような驚いたような表情を作った。それから口元だけでゆっくり笑って

「気が向いたら行くよ」

 そうね。

 ライトとココアが帰った後の俺の家は、まるで泥棒にでも入られたかのようだ。汚れたままの三つのマグカップ、お菓子の袋、出しっぱなしのプレステ4とゲームソフト。あり得ない位地に飛んでいるクッションをソファに戻し、洗うためマグカップを持ち上げる。と、

「お?」

 四つ折りのメモ帳が置かれていて、それを開く。

『LINE cocoachocolateXXX』

 登録しとけってか。

 ココアのLINEIDがかかれているメモ用紙をポケットの中に突っ込んで、俺はお菓子の空袋をゴミ箱の中に突っ込んだ。俺はこれから数時間後に帰ってくるであろう真美子の為に、風呂の掃除をしなければならない。



  

 

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