6・悪魔が天使に恋をした


悪魔が天使に恋をしました。


だけど、天使は知らんぷり。

天まで飛べない悪魔の翼を嘲笑うように、彼の頭上をひらりひらり。


悪魔は考えます。

どうにかして、天使の視線を自分に向けようと。


天使の金色の髪に、白い肌に似合うような宝石を用意しました。

普通の女なら、目の色を変えて欲しがる宝石たちです。

だけど、天使は知らんぷり。


天使が好きだと言われる歌を習い、捧げてみました。

天上の音楽では無いけれど、多くの船を惑わせた海上の魔物の歌です。

だけど、天使は知らんぷり。


天使が好むと言われる自然の生命、花を手に入れてみました。

本当に自然の花では無いけれど、一度捕らわれれば魂まで奪われる美しい妖花です。

だけど、天使は知らんぷり。


悪魔は万策尽きました。


疲れ果てた悪魔はその場に座り込み、大声で泣き出しました。

天使の名前を繰り返し、繰り返し叫びながら。


ひらり、と。

悪魔の上に影が差します。


見れば、あれほど焦がれた天使が、悪魔の前に立っていました。

とても優しく微笑み、天使は、悪魔に言ったのです。


 何故泣いているのか、と。

 悩みがあるのなら、私で良ければいくらでも相談に乗る、と。


そう言う天使の優しい蒼い瞳は、確かに悪魔に向いていました。


悪魔の望みは叶ったのです。

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