第5話 エルフの森にて、現在

第5話・1章


【1】


 街道沿いのその街は意外なほど栄えていた。

 シズハが知っている首都やその周辺の町には遠く及ばないが、それでも、アルタットとヴィーが住んでいた村とは大きく違う。


「――さって、と」


 足元に荷物を置いたヴィーがぐーっと身を伸ばす。


「少し情報収集しないとねー」

「情報収集、ですか?」

「だって、面倒でずーっと田舎に引っ込んでいたからさー。今世の中どうなってるかまったく分からないんだもの」


 シズハ、言える? と問われ、緩く頭を左右に振った。

 そんな曖昧に聞かれて答えられる訳が無い。


「だからこの街の知り合いに会って軽く情報集めてくるの。悪いけどシズハ、留守番ねー」

「え?」

「そんな頼り無い声出さないのー」


 ヴィーは足元に黒猫――アルタットを従えて笑った。


「ちょっと裏の人だからねぇ。シズハは知り合わない方がいいよぉ」

「……はい、分かりました」

「そうそう。イイコイイコ。じゃあ、この辺りでうろうろしててねー」


 笑顔で手を振ると、ヴィーはアルタットを連れて歩き出した。

 すぐさまその後ろ姿は人ごみに紛れ見えなくなる。


「……」


 ぽつんと残されて、シズハは思わず空を見上げる。

 愛竜のイルノリアは空に居ない。街の近くに隠れているのだろう。

 呼べばすぐに此処に来てくれるだろうが、街の中に竜を呼べば大混乱になる。


 ちょっと寂しいの理由で呼んでいたら――大変な事だ。


 ヴィーに言われた通り、この辺りを見ていよう。

 

 周囲を見回す。

 街道沿いの街。

 意外なほど店が揃っている。

 冒険者や旅人、商人向けか。武器の専門店さえもある。


 興味を引かれて覗いた店先。

 白っぽい刃の短剣。値札には『竜のナイフ』と書かれ、その下にはかなり高額な値段が記されている。


 竜の爪や牙を武器に加工する事は知っていた。

 実際、それを持ち歩いている知人も居る。


「……?」


 何となく違和感を覚え、シズハはそれをまじまじと眺めた。

 何が違う?


 ……あぁ、そうか。

 納得して、ひとつ頷き、近付けていた顔を離す。

 

 光り方が違う。

 ただの骨のようにしか思えない光り方。

 竜の牙や爪から彫り出したのなら、もっと内側から輝くような光を宿す。

 竜が身に宿す魔力の輝きだと言われるその光が、無い。


「――お兄さん、それ買うの?」


 すぐ真横からの声に驚いた。

 

 横に立っていたのは若い女だった。シズハより少し上の年齢、と言う程度だと思った。

 肩より幾分伸ばされた灰色の髪に包まれた顔は端正と言って間違いの無いものだ。しかし、蒼い血液が流れているのかと思うほど白い肌は、少々、病的だ。


 こちらを横目で見る、つり上がった瞳の色は真紅。


 それが微笑んでいる。


「お勧めしませんよ」


 顎で示す。


「それ、ニセモノ」


 やっぱり、と思う。


 女はシズハに向き直ると笑った。


 旅人が好む厚手のマントの裾が揺れる。色は黒。少々、暑い気もする。

 女は平然とした顔で着ているが。


「爬虫類系の魔物の――脚の骨から切り出してますね。この程度のナイフなら半分以下の値段で買えます」

「そうですか」

「それより」


 彼女がにぃと笑い、両手でシズハの腰を示した。

 思わずたじろくこちらを気にせず、視線はまだシズハの腰に。

 視線の先。

 常に身に付けているショートソードだ。


「そっちの剣の方が良い剣っぽいなぁ。ね、ちょっと見せてくれません? ちょっとだけ!」

「は、はぁ」


 女の迫力に負けて剣を差し出す。


 女は剣をすぐさま鞘から抜くと光に翳した。


「ふぅん――上質の刃使ってますねー。悪くない」


 握りの部分も光に翳す。


「……ん?」


 奇妙な声が漏れた。

 握りの部分の皮を軽く叩き、ひっくり返して底も確認する。

 最後に軽く振ってみて、女はショートソードを鞘に戻した。


「うん! 凄い良い剣です」

「有難うございます」


 受け取りながら、思わず、礼。


「この剣――ご自分で注文されたか、買われたんですか?」

「いいえ、父から貰いました」

「お父さんから」


 納得、と女が呟く。


「若い子が手に入るレベルのものじゃないからなぁ」

「……?」


 シズハの疑問の視線に女は顔全体で笑う。


「いい剣ですよ。大切にしなきゃ!」

「はい」

「本当に、このニセモノを見習わせたいぐらいいい剣ですよ! さっき覗いてみたんですが、この店ってニセモノばかりで――」


「――おい」


 呼び掛け。


 見れば、武器屋の入り口が開き、中年の男が出てきた。

 額に青筋。


「人の店の前でニセモノ連呼している大馬鹿どもは貴様らかっ!!」

「きゃああっ!!」


 女が悲鳴を上げて全速力で逃げ出す。

 逃げ損ねたシズハは、店主に睨まれ、慌てて首を左右に振って一歩、下がった。


「――お兄さん!」


 遠く。人ごみから女の声。


「その剣、本当に大切にして下さいね!」


 その声に答えるよりも、武器屋の店主にもう一度睨まれ、シズハはすぐさま人ごみに逃げた。





 ――人ごみの中、女が歩く。

 マントの襟元から、小さなトカゲが一匹、するりと這い出してくる。

 それに向かって微笑み、女が口を開いた。


「イイモノ見ちゃったねぇ」


 先ほどのショートソードを思い出す。


「刃は上質だけと普通のもの。だけど握りの部分は超上質だった」


 僅かに上を見上げ、女は口元ににんまりと笑みを浮かべる。思い出しただけで嬉しくなってくる。


「あれ、竜の爪一本から彫り出してるよ。上から金属と皮でかなり気付かれないように加工してるけど、間違いない。底の部分から微かに覗いてたもの」


 白の底に、僅かに金の混じる光。


「恐らく、金竜の爪。しかも見た限りでは、結構な年齢を経た金竜。――100歳は軽く超えてるなぁ。もしかしたら200歳? うわぉ」


 柄の飾り部分まで全部恐らく竜の爪。

 爪の硬い部分のみから彫り出しているように見えた。

 そうなると、爪の元はかなりの大きさだ。


「しかも光の入り方から見ると、かなりの魔法防御力持ってる。下手な死竜のブレスくらい、あのショートソードで防げちゃうよ。守るための武器だね、あれ」


 女はそこで始めて笑みから表情を変えた。

 唇を尖らせる。


「うー……羨ましいなぁ。そんな金竜の爪、どうやって手に入れたんだろう? あの子のお父さん」


 トカゲがするりと逆側の肩に動く。


「うん? え? ――金竜? そんなに大きな金竜、普通には居ないわよ。……え?」


 女の足が止まる。

 人ごみの中、散々邪魔扱いされながらも、女はトカゲを見ていた。


 驚きの表情で。


「竜妃? コーネリア? ――ゴルティアの竜でしょう? それの爪? まさかぁ。だって竜妃はまだ生きてるよ」


 でも、と噂を思い出す。


 竜妃とも呼ばれる大陸最大の金竜、コーネリアは隻腕の竜である。

 先代の竜騎士が死んだ際、後を追わぬ代わりに、己の左腕を食い千切り、それを手向けにしたと伝えられる。

 コーネリアが生き残った理由は、死に行く竜騎士に国と残された家族を頼まれたとも、竜騎士を死に追いやった相手を倒すために生きたとも言われるが――。


 正しい事は分からないし、女にとってはどうでもいい。


 大切なのは、その巨大な金竜が、前足を一本、失っている事である。


「……まさかぁ」


 でも。


「……本当なら、凄い、欲しいかも」


 振り返る。

 人ごみ。

 剣の持ち主の姿は、勿論、見えない。


「うー」


 悔しそうに女は唇を尖らせた。


「うー……我慢して仕事するかぁ。……ええと、次のお得意様の場所は……」


 女はごそごそとメモの束を取り出す。

 

 するり、と。

 トカゲがマントの襟元に滑り込んだ。




 シズハは腰のショートソードを眺めた。

 先ほど会った女を思い出す。

 随分と見ていたが――そんなに良いものだったろうか。

 父であるテオドールが、シズハが家を出る際に合わせて用意してくれた武器だ。

 貰った直後は少々大きくて使いにくかったが、今は丁度良いサイズになっている。

 握りの部分を軽く叩いた。


「――シズハぁ」


 名を呼ばれる。

 正面から肩にアルタットを乗せたヴィーが歩いてくる。

 何だか不機嫌そうな顔をしていた。


 駆け寄るシズハに、ヴィーは不機嫌きわまり無い顔で言った。


「すぐに街を出るよー」

「え?」


 此処で一泊の予定だと聞いていた。


「追っ手来てるんだよねぇ。面倒だから逃げちゃおう?」


 子供のように唇を尖らせながら、ヴィーはあっさりとそう言った。






「やっぱりさー、あのお化けサソリ倒したので目立っちゃったみたい」


 街道を歩く。

 既に夜に近い。


 空からは微かな羽音。

 イルノリアがずっと追って来ているのだ。


「村ひとつ壊滅状況でしょう? 俺に事情聞きたいって言ってるらしいけど、ホントに事情聞くだけー? 嘘っぽい」

「嘘とは限らないのでは……」

「この辺り、アクエアの領地でしょ? あの国ってアルが嫌いだから、多分、厄介な事になるよぉ」

「例えば?」

「前はアルが魔物の仲間だとか、いちゃもん付けられたなぁ。下手すると処刑だよー。ヤになっちゃう」

「……酷い話です」

「俺、国とか騎士団って大嫌いー」


 ヴィーは本当に嫌そうに顔を歪める。

 そして、シズハを見た。

 少しの笑み。


「竜騎士団に居た事ある人の前で悪いけどさぁ」

「……いえ」


 シズハも少しだけ笑う。


「俺はもう竜騎士団の人間じゃありませんので」


 ふぅん、と曖昧に頷いたヴィーの顔を見る。

 続いて、足元、長い尾を揺らしながら歩く黒猫を見た。

 

 二人とも、シズハに問わない。

 竜騎士団を辞めた理由を。


 有り難い事だ。

 

 いつかは話すべき事なのかもしれない。

 だが、話さなくてもいい事なのかもしれない。

 まだ、シズハはよく分からない。


「シズハぁ」

「は、はい!」

「森を抜けちゃおう?」

「森、ですか?」


 ヴィーが指差す森を見る。

 深い森だ。

 シズハは頭の中で地図を広げる。


 竜騎士は、見習いの時点で空から見た地図を徹底的に叩き込まれる。

 この辺りならばシズハは十分地図を覚えていた。


「――この森は、危険ではありませんか?」

「どうしてぇ?」

「エルフが住んでいる筈です」


 エルフ。

 森に住む知的種族だ。

 外見は人間とよく似ているが、長く尖った耳を持つ。

 彼らは森で生まれ、森で育つ。

 基本的に森から出ず、人間と交流する事も少ない。


 ただ、近年。

 エルフの一部の集落が人間と交流を始めている。


 しかしこの森に住むエルフたちが、人間と交流を行っているかは、シズハの知識には無い。


「何度か通っているけど、危険は無いと思うよー」


 ヴィーは遠慮なく森へと足を向ける。


「枝を折られたら腕を折れ」


 歌うような口調で言う。

 軽く肩越しにシズハを見て、ヴィーは言った。


「エルフの言葉。――森の中では勝手な事しないでねー」

「はい」


 十分心得ている。


 シズハは一度足を止めて、空を見上げる。

 羽音。

 イルノリアは傍に居る。

 ならば大丈夫だろう。

 彼女ならば十分にシズハたちを追ってこれる。


「少し高い位置を飛ぶように伝えましょうか」

「イルノリア?」

「はい。――追っ手の目印になる恐れがあります」

「もう少しで夜だし、大丈夫じゃない? そこまで近付いてきている訳じゃないしー」

「そうなのですか?」

「情報屋の所に通達が聞こえてきていた、だけ。俺が居たら、引き止めろって言う通達」

「はい」


 ならばそのままの高さで。


 アルタットが一声鳴いて、ヴィーの肩に飛び乗った。

 器用に座る。


「森はちょっと地形が複雑だからねー。シズハは自分で歩いてね。おんぶしてあげないよー」

「勿論です」

「……いや、そんな真剣な顔で頷かなくてもいいよ、冗談だから」


 そして彼らは森へと踏み入った。



 夜に近い時間ともなれば、森の中はかなり暗い。


 シズハは何度となく転びかけ、ヴィーの助けを借りた。


 何度目かの助け。

 ヴィーが笑う。


「人間って不便だよねぇ。暗い所が見えないってさぁ」

「ヴィーは平気なのですか?」

「俺? 俺もアルも平気ー」

「……申し訳ありません」

「謝らなくていいよ。人間なんだもん。しょうがないよー」


 会話の途中、空を見上げる。


「イルノリアは平気?」

「はい、飛竜は暗闇でも見えますので――」


 木々の上。

 月が見える空に、イルノリアの姿が見える。

 だいぶ地上に近い。

 幾ら夜目が利くとは言え、シズハの姿が無いのが不安なのだろう。


「真っ暗になったら野営しちゃおう。――炎は使えないけどねー」


 エルフの居る森で炎を使うのは危険だ。

 それはシズハも十分心得ている。


「じゃあ、行こうかぁ。もう少し歩こう?」

「はい――」


 シズハが頷き、空のイルノリアから視線を逸らそうとした途端。


 高い悲鳴が響いた。

 

 金属の音にも似た悲鳴。

 イルノリアの声だ。


「イルノリア?!」


 片方の翼が動いていない。

 落ちる。


「――矢が飛んだよ」


 ヴィーが眼を細めて言う。

 

 その言葉を聞き終わるより先に、シズハは走り出していた。

 イルノリアの身体は既に落下を始めている。


 枝が折れる音。

 そして、落下音。


 イルノリアは地面に落下していた。


「イルノリア!」


 シズハの声にイルノリアは顔を上げる。

 金属の声。

 駆け寄り、その首を抱き上げる。

 右の翼の付け根に矢が深く刺さっていた。


「……酷い」


 飛竜の翼の付け根。此処を狙えば、飛んでいる飛竜を落とす事は簡単だ。

 しかし危険度の少ない銀竜を射落とすとは――シズハには信じられない。


 イルノリアは小さく鳴き続けている。

 何故射落とされたのか、彼女も分からない。

 混乱し、シズハに泣き付いているのだ。


「シズハぁ、イルノリアは?」

「矢が刺さっています」


 イルノリアの顔に顔を近付け、囁く。


「少し痛いけど我慢してくれ」


 矢に手を掛ける。

 力を込め、力任せに引っ張るが、イルノリアが悲鳴を上げるだけで抜けようとしない。


 横から覗き込んだヴィーが顔を顰める。


「これは……ちょっと切らなきゃ無理かもねぇ」

「はい」


 ショートソードを取り出し、矢の刺さった箇所を切り開く。

 今度こそ引き抜かれた矢を眺めたヴィーが、いまだ彼の肩に居るアルタットに鏃を見せた。


「これ――ちょっと、ヤな感じ」


 矢が抜けた事でイルノリアも少しは落ち着いたのだろう。

 傷口周辺に銀の光が宿る。

 自力で傷を癒しているのだ。


 それを確認し、矢を眺めているヴィーを見上げる。


「どんな矢ですか。何か、特徴は?」


 矢は十分な手がかりになる筈だ。


「竜の牙じゃないかな、これ」


 差し出された鏃。

 微かな光。


「誰が撃ったか分からないけど――此処は森の中だしなぁ」


 アルタットが鋭く鳴いた。

 ヴィーが視線を動かす。


 気付けば森は既に暗い。


 そして――周囲に気配。


 囲まれている。


 シズハはまだ傷を癒し続けているイルノリアの首を抱き締めた。

 一度抱き締めて、ゆっくりと立ち上がる。

 ショートソードはまだ手の中にあった。


「――動くな、人間ども」


 複数の気配。

 その声と共に進み出てきたのは、弓を構えた若い男だった。


 いや、若いとは限らない。

 男の耳は長く尖っている。


 100年以上も生きる、森の民、エルフだ。


 その他の気配はまだ闇の中。

 だが向けられる武器の気配を感じる。


 代表らしいエルフの男は、順繰りにこちらを眺め、イルノリアの所で視線を止める。

 端正な顔が歪められた。


「我らが森に竜を連れて踏み込むとはな」

「イルノリアが何をした」


 シズハの問いにエルフが鼻で笑う。


「人間どもが飛竜を用いて我らが森を焼き払ったのは僅か50年前の事だ」

「銀竜は炎のブレスなど噴かないっ!」


 怒りに任せた踏み出したシズハの足元に、闇から飛んだ矢が刺さる。

 足を止め、エルフの男の顔を睨み付けた。


「――まぁまぁ」


 ヴィーが声を出す。


 両腕を広げ、笑顔。


「エルフの長さん? ――勝手に森に入ったのは謝るよ。俺たちもちょっと込み入った事情があってね」

「……」

「大人しく森を出て行くから、そっちも武器を引いてくれないかなぁ。俺たち、この森をどうこうする気は無いんだ」


 エルフの男が僅かに口元を歪める。


「時期が悪かったな」

「? どういう意味?」

「お前らが森をうろつく事が許されぬ時期だ、今はな」

「……えーと?」


 それに、とエルフの男は顔を上げた。


 イルノリアが落下の際、折れた枝。


「貴様らは既に森を壊した。森を傷付ける者と取引など出来ぬ」

「え、それはちょっと酷くないー?」


 ヴィーがもう一歩、踏み出す。


「動くな!」


 エルフが弓を引いた。


「と」


 肉を裂く音がした。


「ヴィー?!」


 アルタットが肩から飛び降りる。

 

 ヴィーは左腕を押さえ、子供のようにふくれっ面をして見せた。


「今胴体狙ったでしょー? 酷いなぁ」

「この距離で逃げられただけ大したものだ。――おい」


 エルフは背後に声を掛ける。

 

「この者たちを土牢へ。飛竜は茨に閉じ込めておけ」

「な――」

「抵抗するな。この場で殺しても構わんぞ?」

「……」



「シズハぁ」


 ヴィーが言う。


「どうする? このエルフたち、全部、ヤっちゃう?」

「……」

「出来るけど――正直、止めておきたいんだよねー。此処はエルフの領域だしさぁ」


 アルタットが小さく鳴いた。

 

「………」


 シズハは無言で構えていたショートソードを下ろす。


 エルフをヤる――殺す。

 確かに、アルタットとヴィーなら可能だろう。


 しかし。


 幾らイルノリアを射落とした敵だとしても、死ぬ姿は――見たくない。


 エルフの男が満足そうに頷いた。


「次の満月には解放してやる。――大人しくしていれば、な」


 闇の中から他のエルフたちが進み出てきた。



 

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