幕間

商会通信:第665号

某国、人の居住区域から何百キロも離れたフリドルフなる山にて。神話生物の体液と思しき物が発見された。発見者については匿名で、との強い反発を受け、ここに載せることはしない。しかし、これを目にする商会員はそのような物好きが誰であるかなどすぐに明らかにするだろう。しかしながら我々記事担当は匿名希望の発見者の意思を執行したとここに高らかに宣言する。


研究所「S」に調査を依頼したところ、どうにも不可解な事実が判明した。科学的、物理的、あるいは超心理学的に合計六時間に及ぶくそ眠く、そしてありがたい説明を受けたのだが、そのまま載せるような非力な記事担当ではない。讃えてくれ。要するに、「この液体はキノコ、あるいはそれに類する菌類のそれである」とのこと。現在、地球に存在する種であるかどうかはまだ時間が掛かるそうだ。


研究員の数人から「これは神話生物であるのか?」という疑問が調査するに当たって何度も出たらしいが、我々には「そうだ。これが神話生物だ」と答える他ない。それは記事担当の我々が雑だからではなく、神話生物に明確な定義など存在せず、既存の生物学で説明出来ない生物を総称し「神話生物」としているからである。


生物学に明るい商会員が居たら研究などをぜひ進めてほしい。研究所への推薦書は任せろ。


それよりも、目下の問題としてはこの神話生物の実態よりも、なぜ体液だけが残っているかである。発見者はこの体液にたいそう驚愕し、付近を隈なく捜索したらしいが、何も発見できなかったとのこと。しかし、彼は「かなり神話案件シナリオの臭いはした」と我々に答えており、実にミステリーである。


この一連の事件に首を突っ込みたい奇特な商会員の方は、今週の金曜夜八時に黄金蜂蜜酒をジョッキで注文するべし。と、発見者が言ってました。記事担当の我々は続報をお待ちしております。

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